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おけい |
ヨー・イッ。
♪(こんぴらふねふね‥‥) |
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ちょっとずつ弾けるようになってきました。
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おけい |
ふたりとも、いまは、
“平ら”(平板なリズムで)に弾きましょう。
平らに弾けるようになったら
ちょっと“うきま”(はねるように弾く)にする。
最初からうきまにすると下品になっちゃうし、
平らのほうがわかりいいからね。ヨー・イッ。
♪(こんぴらふねふね‥‥) |
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単調なリズムの『金毘羅舟々』であります。
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おけい |
津軽、津軽。
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津軽 |
‥‥ハイッ。
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おけい |
指使い、指使い。
パカパカやってると見栄えがよくないからね。
開放弦のときに離すことは、わかるね?
そして、移動のときは、
ある程度くっつけとくの。
ギリギリまでくっつけて、
「♪いちどまわれば」ではじめて離すの。
やってごらん。
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指をちょこまか動かしすぎるという指摘。
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おけい |
そうそう、いいね。
指をよぶんに動かすと、
それだけ労力も使うし、音も切れちゃう。
三味線は、ピアノみたいにペダルもないし、
ギターみたいにビョーンとやって、
音を延ばしたりなんかできない。
そのぶん、指使いでつなぐんですよ。
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津軽 |
♪(テテンツートン)こうですか?
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おけい |
そう。そこまでしっかりね。
♪(いちどまわれば)
ここまで来れるともっといいんだけど、
それはむずかしいから。
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津軽 |
はい、はい。 |
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かなり、
本格的に教えてもらってます。
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津軽 |
あ、調子が‥‥
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おけい |
ニが高い? |
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二(真ん中の弦)がちょっと高めです。
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おけい |
二がほんのちょっと高いと思ったときはね、
糸倉の中でキュッと糸を押さえれば、
伸びて、音が下がるから。
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津軽 |
えええ?
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本願寺 |
‥‥初耳。
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おけい |
こんなこと、先生は教えてくれないでしょう?
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本願寺 |
教えてくれないです。
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おけい |
先生はそういうこと、教えないの。
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津軽 |
(やってみる)
すごい! 使える技でした。
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おけい |
それやると、
「あ、きっとこの人誰かに習ったな」
ってわかっちゃうよ。
知らない人、けっこういますからね。
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津軽 |
知らなかったです。
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おけい |
ふつう、知らない。私も言わない。
あとはね、人差し指はしっかり押さえること。
これはミソです。
先生は絶対教えない。でしょう?
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ふたり |
うん、うん。
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おけい |
だけど、先生は絶対、
人差し指をしっかり押さえてるの。
三味線のプロの方というのは、
一国一城の主なもんですから、
お稽古で他の人から何か言われるのは嫌だ、
なんて思っちゃってる。
だけど、「言われる」ってことは
とても幸せなのよね。でしょう?
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本願寺 |
はい。
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おけい |
さっきの津軽、
指をパカパカパカパカやって、
音が切れちゃってるの、
言ってあげたらすぐ直そうとしたじゃない?
開放弦まで粘って指をおさえれば、
音が全部つながるというのを、
はじめてわかったでしょ?
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津軽 |
やってみたら、ぜんぜん違います。
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おけい |
ね? そうなの。 |
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ひとりで弾いてみます。
♪(こんぴらふねふね
おいてにほかけて しゅらしゅしゅしゅ)
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おけい |
できるでしょう。ね、できるでしょう。
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津軽 |
我ながら、このことひとつで、
すごく上達したと思います。
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おけい |
ひとつ言っただけで、こんなに早いのよ。
先生は、もったいぶらないで
言ってくれればいいし、
生徒のほうも
言われたほうがいいと思っていればいい。 |
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おけいさんの言葉に、
ちょっとじーんとする我々です。
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おけい |
本願寺さんは、譜面が読めるのね?
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本願寺 |
はい、いちおう、ですが。
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おけい |
譜があれば、
洋楽もそうだけど、
表間(おもてま)のほうを強めると
きれいに聞こえるからね。
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本願寺 |
へええ。
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おけい |
♪(ツントトツットツット ツッテテツテツテ
チーレチャンチャチャン)イー・ヤぁ。
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本願寺 |
ホントだ。
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おけい |
こうすると行進曲らしくなっていくでしょ?
じゃ、私たちも、
もうちょっと速く弾きましょうか。
テンポよく。
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速いと、なおたのしくなるのですが、
気をつけて、ていねいに弾きます。
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おけい |
はい! 津軽、そこ離さないね。
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津軽 |
しまった。
すいません。
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だんだん調子に乗ってきました。
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おけい |
そうそう、いいですよ。
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津軽 |
でも、なかなか
出囃子っぽくならない。
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おけい |
いや、そんなことないわよ。
いまは糸(弦)を1本で弾いてるから、
旋律だけでしょ?
2本をまぜて弾くと、
こういうふうになるんだよ。
(お手本演奏) |
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おけいさんのふだんの演奏。
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津軽 |
出囃子だ!
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おけい |
出囃子になると、こうやって
“かんどころ”もちょっと変えるわけ。
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津軽 |
これはおけいさんについて
ちゃんと覚えないと無理だなぁ。
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おけい |
チューニングや押さえる場所が違っちゃうと、
特に三の糸(いちばん細い弦)、
響かなくなるでしょう。
民謡の場合──まぁ、長唄でもやる人いますけど、
東ざわりという、音を響かせる器具を
三味線につけることがあります。
だけど、私はそれはしないで、
正しい音の高さで、正しいツボの位置を
自分の耳で確かめながら会得していくのが
いいと思ってるんです。
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津軽 |
耳から覚える。
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おけい |
そうです。
譜面をいくら読めたって、
理論がいくらわかったって、
それはそれ。
こうして「サシ」でやって、
「この音はどういう音になるのかな」
と、耳をたよりにやっていくことでしか
できないことがあるわけです。
そうしている人は、
(おけいさん、ミッキーマウスマーチの
一節を弾く)
こうやって、
いろんな曲のオーダーがあっても
応えていけます。
ジングルベルでも、ミッキーマウスの唄でも、
譜面にすると、きっと
いま弾いたような譜割りには
なってないでしょうね。
だけど、耳から聞くと、こうなんです。
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本願寺 |
なるほどなぁ‥‥。
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おけい |
この音楽を三味線で置き換えるには、
自分の3本の音でどのへんを使うんだろう?
お囃子さんがそこで
「その曲はどういう曲だったかな?」と
イメージを持てるかどうか、なんです。
三味線には、これだけの棹の長さがあるから
それができるんですよ。
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(つづきます)
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