糸井 |
さっきのセコンドの話にしても、
自分とよほど実力の近い人が
「今だ!」と言うなら、ありだろうけど。
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高阪 |
ただ、
相手のことも把握したいんですけど、
自分の状態がどうあるかということも
行動に還元しているんです。
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栗山 |
あぁ、それは本人しかわからないね。
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高阪 |
膠着状態にある時に、
実は顔や姿には出していないけど
かなり効いているとか、
それをダマしながら、さもふつうだったよ、
というように持っていって、
攻撃にいくんです。
そうすると、相手に弱さが伝わらないから、
「アイツはいつまでたっても強い」
というように思われるんですよね。
知らん顔して効いてるなんてことは
ぜんぜんありますから。
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糸井 |
さんざん、あるんだろうね。
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高阪 |
ものすごくありますよ。
「アイツはいつまでも強い」
っていう結論になるんですけど、
実は握れないとかダルいとか、
それは出さないだけなんです。
・・・まぁ、出すやつもいないですけど。
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糸井 |
野球の選手って、
不調な時には硬球が飛んでくることへの
恐怖心って、ないですか?
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栗山 |
ありますねー。
こわくなるんですよ。
調子のいい時にはこわくないのに。
あれは、不思議ですよね。
ただ、ぼくは現役時代は
そんなに怖くなかったんですよ。
「当たるのも、仕事」だったので。
バッターの分類には、
「こわがり」っていうのもあるんです。
ぼくらみたいにそんなに打てない人間は
こわがらないんです。
でも、いいバッターは怪我したくないから、
そのバッターに対しては
「こわがり」というタイプの攻め方もあって。
かなり有効な場合と、
そうじゃない場合とがあるんですけど。
この分類を聞いたのは、野村さんからでした。
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糸井 |
分類としては、
格闘技の世界にも
「もといじめられっこ」
っていうのがありますよね。
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高阪 |
ええ。
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栗山 |
それは、強いんですか?
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高阪 |
途中までは強いんですよね。
だけど、最後にやっぱりガクッて。
こわがりの選手もいるんですよ。
「打たれるのがイヤ」とか。
外人に多いですね。アメリカ人に。
痛いのがイヤ、って。
でも、ものすごく曲者が多いんですよ。
斜めから攻めてくるんです。
正面から攻めてこないで
斜めからちくちくくるタイプというか。
映像で見てもわからないし、
本人しかわからないんですけど、
組んでないのに足がここにきた、とか。
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糸井 |
自分の弱味をはっきりわかった上での
発明をしてくる人たち、なんだ。
それって、ほかの分野でもそうだよね。
自分の弱味をはっきりわかったあとの
アイデアって、あるもんね。
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高阪 |
俺はなんでよわいんだ、とか、
なんでこわいんだ、だけでは、
ただの気の弱い人で終わると思うんです。
「だったら、どうしたらいいんだろう?」
と考え出すひとが、そうなると思うんですね。
アメリカ人のファイターで、
マンソン・ギブソンっていう
キックボクシング系の人がいるんですけど、
すごい変型なんですよ。
いきなり相手にお尻を見せて試合をする。
こっちは顔面に打てないし、
蹴ろうにもケツしか当たらない。
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栗山 |
(笑)
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高阪 |
バックハンドブローっていう
裏拳がすごくじょうずな選手なんですよ。
たぶん、あいつはこわがりなんだ、
と思うんですよ、自分としては。
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栗山 |
へぇー。いろんなかたちがあるんですね。
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高阪 |
ふつうバックハンドって
やってもあんまり当たらないんですよ。
でもそいつがやると、けっこう当たるという。
当て勘っていって、それは
そいつがもともと持っている才能なんですよ。
ボクサーとかによくいるんですけど。
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糸井 |
このジャンルがすごいのは、
何かに気づいた時に、やるのはぜんぶ自分、
ということですよね。
あいつがあれをやって、俺がこれをやればいい、
という仕事のしかたができないから、
おそろしいよねぇ・・・。
野球選手、ボールが飛んでこない時は
分担できているもんね。
この人たちは、全時間自分でやっているから。
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栗山 |
うわぁ、ほんとうにそうですね。
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糸井 |
だから、こんなのが
プロ化するなんて、ありえないと思うんです。
こんなに全力で、何試合も、できるはずがない。
WWFみたいなファンタジーはあるけど、
ほんとに勝ちたいなんていう人たちが
真剣にやったら、年間何試合もできない。
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栗山 |
ほんと、そうですよ。
みんな本気で勝ちたいんですよね。
これ、すごいっすよ。
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高阪 |
自分のやってきたことが
どれだけ正しいかを確かめたいとか、
いろいろなことを投影していくんですけど。
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栗山 |
あぁ、やっぱりそうでしょうね。
最後は、「自分の確認」ですもんね。
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森川 |
すごいよね。
人を殴ったり蹴ったりすることで
「確認」する世界なんだから。
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栗山 |
(笑)
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高阪 |
(笑)殴るほうが「正しい!」って思って、
やられたほうは、「俺、まちがえた」って。
もちろん、痛いし。
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糸井 |
いやぁ、おもしろいわ。
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栗山 |
いま高阪さんに伺ったような
戦いとか組織とかって、
すごい興味があるんですよ。
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糸井 |
そうだよねー。俺も俺も。
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