第34回 虫が気持ち悪いのは何でだろう?
対談 海野和男×糸井重里〜その5

何で虫が気持ち悪いのか?
「気持ち悪い!」と思った瞬間に、
それ以上見ないように、考えないように、
思考停止状態になったりしませんか??

本日、対談の第5回目は、
そんな「虫の気持ち悪さ」について、
お送りいたします。
でも、気持ち悪い写真はありませんので、
それはご心配なく、お読みくださいね。

今回の対談を読むと、
虫を見る目だけじゃなく、カニを見る目も
変わってくるかも?! しれません。
では、リラックスしてお楽しみください〜。



対談:海野和男さん×糸井重里 その5


海野さんのプロフィールは、こちら
TV番組 「地球は虫の惑星だ
 〜知られざる虫たちと海野和男の映像世界〜」で
 第47回科学技術映像祭(ポピュラーサイエンス部門)
 文部科学大臣賞を受賞されました。おめでとうございます!


●ガキの頃は、悪いことしてました。
糸井 自分も含め、
昔のガキは悪いことしてましたねー。
一番悪いことをしたと思うのはトンボ。
捕まえてお腹をちぎって、
小枝をちょっと刺すの。
そうすると、後ろが重いから、
飛べば飛ぶほど上空に行っちゃうの。
海野 そう、かわいそうなことをやったよね。
チョウを捕まえてお腹をちぎる。
そうすると、まっすぐに上がっていく。
まっすぐにしか上がれないんですよ、
バランスがとれなくて。
で、そのまま落ちてくるの。
糸井 ロケットみたいですよね。
ほんっと悪いことしてますよねー。
海野 うん、ほんとに悪いことした。
でも子どもの頃はね、
そういうことしたら死ぬっていうのがわかるから、
そのあとそういうことをやらなくなったね。
しかも、そんなに何度もやってないんだよ。
1回か2回だけなんだけど、
記憶にすごく残っちゃう、鮮明に残ってる。
糸井 釣りをする時に、ミミズを針に刺すっていうのも、
ミミズには残酷なことをしているわけですよね。
でも、トンボとかチョウとか、
人気もあって良いイメージのあるものには、
あんまり危害を加えないっていうか。
そういうのは子どもは分けないからね。
海野 そう、子どもはその感覚がない。
そんな時にね、子どもに無理矢理、
こういうことしちゃいけないと教育すると、
まずいんじゃないかなと僕は思うんです。
そういうことをしろって、
勧めているわけでは決してないけど、
気持ちとしては、自分で自然に
わかるようになればいいと思ってます。
糸井 だって、ゴキブリにはね、
何したっていいみたいなことにも、
なっていますよね。
海野 そうそう、ゴキブリだって同じ虫だよ。
糸井 ゴキブリだって人間だ!(笑)
ほぼ日 違います、違います(笑)
海野 ゴキブリだって殺されたくないと思うよ。
糸井 害虫、益虫っていう判断が妙なもんですよね。
海野 ただね、
なんていっても人間の社会なんだから、
やっぱり人間に害を与えたら、
殺してもやむを得ないことも
あると思うんです。
何で害虫が悪いのか?
自分も悪いんじゃないか?
ということを、認識していればいいんですよね。
反省なしに、害虫がいたら殺虫剤かけりゃいい、
というのがいかんので。

家庭菜園で虫が出ないように、
予防的に殺虫剤撒いたりするのは、
僕は反対なんです。
虫を見つけたら、手で潰す、足で踏みつける。
自分で殺すということで、殺す痛みがわかるし、
自分も踏まれたら死ぬんだな、って思うでしょ。
この感覚が大事だと思うんです。
虫の姿を見ないで殺すのは、
何が良いか悪いか、
殺したことも気付かないなら、
あとで何もわからないと僕は思うんだよね。

●人間が気持ち悪いと感じる虫
糸井 この「虫博士たち。」の連載をしていると、
虫の写真を見て、社内でも、
気持ち悪いって、
ワーキャー言ってる声が聞こえるんですが、
あれは、気持ち悪いっていうジャンルが
やっぱりあるんですかね?
ほぼ日 確かに、気持ち悪がられながら、騒がれています。
海野 だって、気持ち悪い虫っているもん。
虫自体が、気持ち悪く見せているのが、
いっぱいいるからね。
気持ち悪いですよ、そりゃ。
ほぼ日 まさか、海野さんからそんな言葉が(笑)。
糸井 ある意味で大人気ですよ、ホラーとして(笑)。
海野 つまり、人間が気持ち悪いと感じる虫はいますね。
糸井 あはははは、そっか。
海野 例えば、アオムシなんだけど、ヌルッとしてて、
ヌメッとしてたらなんか気持ち悪いでしょ?
なんだかよくわからないじゃない?
つまり、なんだかよくわからないものが、
人間は怖いんですよね。
それとあとは、大昔の記憶かなにか知らないけど、
そういう気持ちの悪いジャンルっていうのがある。

でも最近さ、
怖いジャンルってのは
変わってきているみたいだね。
ハチってさ、怖いでしょ?
でもこの頃、わりと若いお母さんで、
ハチを怖がらない人が多いんですよ。


糸井 それは、アニメの「みつばちマーヤの冒険」の
せいじゃないかな?
海野 そうなんです。
そういうテレビを見て育ったんですね。
だからハチはかわいいと思うようなんです。
だから、
「ハチをもっと出してください」なんて、
私のところにメールが来たりします。
糸井 ハチは戯画化されてますからね。
海野 それでいったん怖くないとなると、
平気でハチを触るんです。
知識として刺されるとは知っていても、
腫れて治ることも知っているから、
刺されても懲りない。
糸井 クマのぬいぐるみをかわいいと思っている人は、
クマに会ってもかわいいと思っちゃうのかな?
プーさんだ! なんて言って(笑)。
海野 そうそう(笑)、
子グマだったらかわいいからね、
その後ろに親グマがいるんですよ、怖いよね。
クマはやめたほうがいいね。
ハチもスズメバチはやめたほうがいいよ、死ぬから。
糸井 うん、それはやめたほうがいい(笑)。
海野 スズメバチに、
2回目に刺されて重症にならなければ、
あとは何回刺されても大丈夫なんですが、
刺されないように
気をつけるにこしたことはないからね。
糸井 ほかに社内で、1番ワーキャー言われた
気持ち悪い虫ってなんだったの?
ほぼ日 寄生虫‥‥ですが、寄生虫以外ですよね?
糸井 カマキリを水辺に誘導する、
ハリガネムシは大人気だったよね。
あ、これも寄生虫か‥‥。
海野 つまり、脚がないか脚が多いっていうのが、
気持ち悪いもののひとつになる。
これは人間の知識がそうしているのかどうか、
虫の6本脚ってバランスがとれているんですよね。
これが、10本脚になると多いと感じる。
でも短い脚が、2本だったりすると、
これもまた気持ち悪い。
人間の手足が4本だから、
4本だったら気持ち悪くないのかな?
糸井 でもカニだって、
脚いっぱいあるのにみんな好きですよね。
カニの写真見て、よだれ垂らしてるもんね。


海野 おいしそうに見えるよね、カニだったら。
でもあれだって虫と一緒だよ、よく見たら。
僕たちは、サソリとカニ出されたら、
間違いなくカニを食べるよね。
でもサソリしか食べたことない人に見せたら、
サソリを食べるよね、きっと。
そのくらいの違いかなあと思うんだけど。
ほぼ日 そうですね。
イモムシも玩具やぬいぐるみになっているものは、
かわいいという方が多いです。
キアゲハの幼虫も人気があるみたいです。
海野 うん、キアゲハは触り心地がいいよ。
冷たくてすべすべしてて手触りがいいんですね、
キアゲハとか、アゲハの幼虫は。
でも本当は気持ち悪いよなあ。
糸井 ハリガネムシ以外で、
ワーキャー言われたのはあるの?
ほぼ日 あ、そういえば、カマドウマ
怖がられていましたね。
糸井 俺、小さい頃、
カマドウマをコオロギだと思って、
かわいがってたよ。
でも、あんまりにも跳ねるんで、
かわいくなくなってきた。

虫が跳ねるっていう話で思い出したけど、
ロスで「ジャンピングビーンズ」っていうのを
買ったら、プラスチックの豆が跳ねるんだよ。
これはおもしろい!
と思ってたくさん買ってきたら、
実は中が、虫だったんだよね。
中にいるウジ虫みたいな虫が動くから、
ジャンプしているんじゃなくて、
実際は転がってるんだけど、
ガチャガチャガチャガチャ夜中いうんだよ。
ちょっとしたら音が止まったから、
死んじゃったんだと思うけどね。
ほぼ日 あと、騒がれたのは、
アオムシコマユバチアシダカグモ‥‥
などですかね。
やっぱり寄生系とか卵系ですね、
気持ち悪がられるのは。
海野 アシダカグモは、
部屋に放しとくとゴキブリを食べるからいいよ。
クモの巣も張らないし。
ゴキブリ以外も食べるけど、
ゴキブリが大好きなんだよ。
隙間のある家にはぜひ、アシダカグモを(笑)。

次週で、対談は終了です。
最終回をどうぞお楽しみに〜。



今回登場した虫たちをご覧になりたい場合は、
こちらをクリックしてどうぞ。

(検索エンジンgoogleの
 イメージ検索を利用しています。)


キアゲハ
ハリガネムシ
カマドウマ
アオムシコマユバチ
アシダカグモ



※掲載している写真、動画は
 全て海野さんに許可を得て、
 以下のサイトよりリンクしております。
 ありがとうございました。

東京電力「海野和男先生の昆虫教室」

海野和男のデジタル昆虫記

BROBA コミュニティ「Nature & Image」
*「Nature & Image コミュニティ」は、
 2004年3月末日で終了致しました。


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2006-03-26-SUN



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