おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson913
人の花

誰かが苦労して時間をかけて根をはって、
咲かせた花に、みんなが注目して楽しんでると、
そこに吸い寄せられるように来て、
いちゃもんをつけ、
小手先の見栄えの良いことを言って
マウントをとろうとする人がいる。
それは人の花だ。人の花を摘むな。
ちいさくても自分の花を咲かせた方が面白い。

 
高級住宅街にある安いお寿司屋さん、

そこに行くたび、なぜか「威張るお金持ち」に出くわす。

その日も、

IT系の社長さんらしき人が、
店員を呼びつけ、大声で文句を言っていた。

社長さんらしき人(以下シャチョウサンと呼ぶ)は、
それでも気がおさまらないのか、

奥さんと、小学生くらいの男の子に、
この店の店員の対応がいかになってないか、
1つ1つあげつらっては同意を求めている。

奥さんと子どもは、決して同意せず、
でも反論も、無視もできず、
目を伏せて暗い顔をしている。

シャチョウサンはしかたなく、独り言のように、
でもそこそこ大きな声で、

「信じられないよ、俺の会社の社員だったら‥‥」

と、とうとうと文句を言い続けた。

私は不思議だった。

「お金持ちならなぜ、高級寿司店に行かないのか?」

お椀が出てないの、注文を忘れたの、
文句を言うなら、もっと高い、自分が気に入るような
サービスをしてくれる店に行けばいいだけだ。

「なぜわざわざ安い店に来て文句を言うのか?」

少し前、私は、

私の書いたものに寄せられた「あるコメント」に、
ウッ、となった。

ディスったり、批判したりしてない。
でもイラッ、ざわっ、とし、不快がつのっていった。

「なんだろうこの不快な読後感‥‥」

瞬間、シャチョウサンがよぎった。
あれと同じだ!

しばらくして、

たまたま読んでた文章に、
「レストランで店員さんにマウントをかける
お父さんの話」が出てきた。

「マウントをかける」

という言葉に吸い寄せられた!
これだ!

あのシャチョウサンが何を言いたかったのか。
あのコメントだけなぜ私には不快だったのか。

ピーン!とわかった。
両者が言ってることは同じ。

オレノホウガウエダ、
オレノホウガウエダ、
オレノホウガウエダ、

つまり、

「俺を、ありがたがれ。」

ああ、ああ、私はわかる気がした。
なぜシャチョウサンがわざわざ安い店に来て
いばるのか。

高級店では思うように
マウントをとらしてもらえないのだろう。

その安い店の外には、
好きに威張らせてもらえない現実があるのだろう。

なぜわざわざ奥さんとお子さんの前で
マウントをかけて見せるのか、

奥さんとお子さんにこそ自分を尊大に見てほしいのだろう。

でも、
シャチョウサンのクレームをとうとうと
聞かされている店員も、
私や店にいた多くの人も、
おそらく奥さんもお子さんも、
こう感じたはずだ、

「この人間、ちっちゃいな。」

尊大にあつかえと強要する人は小さく見える。

落ち度があれば、それみたことかと叩く。
なにもツッコミどころがなければ、それでも、
小手先の見栄えの良いことを言って、

どうしても上に立とうとする。

自分も無自覚にそうなってないか?

マウントをとるためだけに、人にマウントをかけて、
勝っても、負けても、虚しい。
なぜならそれは、

「人の花」。

人が苦労して時間をかけて根を張って咲かせた花だ。

人の花を摘んではいけない。

自分にとって根のあるところから
自分の花を咲かせたほうがよっぽど面白い。

 
ことし2月、

出張帰りで、久々に、例の高級住宅街にある
安いお寿司屋さんに行った。

カウンターで食べてたら、店員さんがざわついた。

隣の男性の、とっくに頼んでいたはずのお寿司が
まだ来てないらしい。

私は隣の男性を見た。
いかにもお金持ちの身なりの男性が、
奥さんと小さい女の子と座っていた。

「またかよ‥‥」

と私は思った。この店で、いばるお金持ちの
醜い姿を何度見たことか。

しかし、男性はなんにも言わなかった。

「これからすぐつくります!」

という店員さんに、ただ静かにうなずいただけだ。

そして、奥さんと女の子を先に返した。

自分のお寿司がくるのを待っていたら、
もう食事が済んでる奥さんとお嬢さんは遅くなる。
お嬢さんはあす学校があるし、
家は近くだし、先に帰っていなさいと、
そういうことらしかった。
店員さんたちに聞こえない小声でそっとうながした。

奥さんとお嬢さんがいなくなったら、
はたして男性は、店に文句を言うだろうか?

奥さんとお嬢さんが帰ってからも、
男性は、文句をいっさい言わなかった。
イラついた態度も、いやな表情ひとつ見せない。

かなり時間がたって、
ようやくきたお寿司を、
男性は黙って、ゆっくり、味わって食べた。

すべて食べ終わると、
ごちそうさまを言って、男性は、

高級ブランドの、
見たこともない最新の
かっこいいメッセンジャーバックから、
おそろいの財布とキーケースを出し、
もの静かに席を立った。

相手にあきらかな落ち度があっても、叩かない。
相手が弱い立場になっても、そこで何か
見栄えのいいことを言って自分が上に立とうとしない。

それどころかまわりに優しい配慮ができる。

人が心からその存在を
「おおきい」、「ありがたい」と、「自分より上だ」と、
感じるのは、きっとこういう人のことではないか、

と私は思う。

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表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。


●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=491

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



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 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

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一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
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やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
 無料で聴けます

 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。



『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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