Lesson929
読者の声―アウェイに棲む
2019-07-03
自分をよく思わない人々の中=「アウェイ」
で暮らすとき、心が折れそうになる。
そんなとき私は、
「いまの相手の限界として起こっている。」
と受け止める。
相手の環境、受けてきた教育、知識、思考、
集団の体質や慣習、視野の限界。
そして「アウェイ」とひとくくりに見るのも、私の限界。
もしかすると1人くらいは、中立な人、
自分を好意的に見ている人がいるかもしれない。
どっか、なにか、ほんのちょっとでも、
心が通じる人間とか、時間とか、空間に
でくわすかもしれない。
「まだら」に見る。
通じ合う一瞬一瞬が、
自分と相手の先入観に風穴をあけると信じたい。
そんな先週のコラム「アウェイに棲む」
に読者からお便りが届きました!
さっそく紹介します。
<出産後の職場復帰で>
「アウェイという言い方も先入観」という言葉が
ずしっと響きました。
1人目の子どもを出産後、職場に復帰するとき、
まさに「職場はアウェイだ」と、先入観にとらわれて
構えすぎていたように思います。
育児のために時短勤務にしたり欠勤することは、
職場の人は快く思っていないだろう、と。
アウェイだから誰も頼れないのだと卑屈になったり、
何かすごい成功をしないと認められないと思いこんで、
高すぎる目標を設定して結局成果を出せずに
終わってしまう等、空回りしていました。
今は2人目の子どもを出産して育休中ですが、
仕事と育児の折り合いを上手くつけられないまま
再度仕事を離れため、次に復職するのが怖いです。
また周囲を嫌ってしまったり
毎日暗い雰囲気で出社してしまいそう。
そんな時に、なにか自分を前向きにするスイッチがほしい。
私の好きなミュージシャンの方が
「ゆがんだ心の窓に光はなかなか差し込まないけれど
音楽は届く。」と語っていたのを思い出しました。
音楽はいいかもしれないなと思います。
先入観で心がゆがんでこわばってしまいそうなとき
好きな音楽を聞いて、笑顔に切り替えていきたいです。
(はる)
ズーニーです。
「アウェイだから誰も頼れない、
何かすごい成功をしないと認められないと思いこんで、
高すぎる目標を設定して空回りしていました」
というところ、まさに自分のことだ!と凄く共感。
緊張、しすぎているんですよね。
目標をつりあげてより緊張することより、
自分を緩める工夫がいる。
好きな音楽を連れていけば、そこがホームになる。
リラックスして、引いた目で見て見たら、
実際にキツイ言動をしている人は、
ほんの2〜3人かもしれない。
あとの黙っている多くの人は、
冷たく見えるかもしれないけれど、
育児しながらがんばっている家族がいる人も、
なかにはいるかもしれない。
そういう人の中には、はるさんを見て、
「うちのかみさんもこんなふうにがんばってるのか」
と切実に感じているかもしれない。
また職場には、将来、結婚や出産を
視野に入れている人もいるかもしれない。
そういう人のなかには、
「私も、はるさんのように出産後も働きたい」
と目指している人がいるのかもしれない。
黙って心のなかで応援している人もいるかもしれない。
<居場所を得るにはこれしかない>
治療の仕事をはじめて3ヶ月たった時、
人手不足で、突然異動になりました。
受け入れ先の院長が、私より年下の女性という以外、
お互いを知らず、ぎこちないスタート。
患者さんからも、「どんな人だろう」と、
好奇心と品定めが入り交じった視線を感じました。
困ったのは、ベテランの前任者と比較されること。
今ここにいない人と比較されても、がんばりようがない。
私を見る目のハードルが想像以上に高く、
いるだけでも相当のストレスです。
期待はずれだったのか、院長からも
「来てくれと頼んだ訳じゃない」と言われるなか、
どうするか考えた結果、
「とにかく腕をみがき、患者さんに認めてもらうこと。
そうしなければ、ここに居場所はない」
と腹をくくりました。そう思えたのは、
そんな中でも「いい人を雇った」と言ってくれる
患者さんがいたこと。
院長が、親しい患者さんに、
私とどう接したらよいか分からないと相談していたことを、
あとで知りました。そのとき患者さんが
「彼は任せておいて大丈夫」と言ってくれたことも。
院長にとっても、突然来た私は、
自分の職場をアウェイにしてしまう異物だったのでしょう。
患者さんも、何者か分からない私に
体をあずけるのは不安でしかたなくて、
前任者との比較で判断するしかなかったのでしょう。
この治療所に期待して通っているからこそ、
私に、厳しい視線になる。
でも、私を厳しい視線で見る患者さんは、
私の応対や努力、可能性も見ています。
そこを切っ掛けに少しずつ、
患者さんに受け入れてもらえるようになりました。
「患者さんに喜んでもらいたい」という思いは、
ぎこちないなりに院長と共有できるようになりました。
「患者さんに喜んでもらえれば、そこが居場所になる」
そう気づけたから、アウェイで働けてよかったと、
今になって思います。
(たまふろ)
ズーニーです。
「院長にとっても、突然来た私は、
自分の職場をアウェイにしてしまう異物だったのでしょう」
にグッときました。
そうか、相手も、ホームを荒らす新参者が恐いんだ。
「僕は、必死に敵のボールを奪い味方に送る。
でもアジア人の僕には、ボールは回ってくることはない。」
これは、ある学生の言葉だ。
その学生は、子どものころ海外にわたり、
サッカーチームで唯一の日本人として人種差別を受けた。
ユニホームを隠されたり、靴を捨てられたり。
だれ一人、自分にボールを送ってこない
アウェイに棲んで、それでも彼は必死に、
チームのメンバーにボールを送り続けた。
その努力が実を結び、ある日試合で、
彼の送ったボールが得点につながった!
彼はそこで初めて認められ、
やがてキャプテンになるまでに、そこをホームにした。
風あたりが強い時、私はいつもこの学生を想い、
「だれも私に、ボールを渡さない。
それでも私は、ボールを送り続ける。」
とイメージする。
一回一回、優しいボールを送り続けるような行為が、
いつか相手の恐怖心を打ち崩し、
通じ合えると信じたい。だから、
「ひらいていよう」、と私は思う。
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録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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