Lesson919
読者の声―
「生きがいの組み換え」について
2019-04-17
考えたら「生きがいを組み換えている」人は多い。
子どもを産んだ人は、
瞬時に親になるというよりは、
子どものいなかった自分の古い習慣を手放し、
コツコツ新しい習慣をつくり、
人によっては何年もかけてアイデンティティを組み換え、
親としての自分を受け入れていく。
子どもが巣立った親御さんも、
子どもがいた日々の習慣を解体し、
新しい習慣をつくりながら、
少しずつ生きがいを組み換えていく。
同じ会社にいる人も、昇進や異動、役職定年。
この春、新人になった人たちも。
きょうは、「生きがいを変える」
にいただいた、このおたよりを紹介する。
<父の最後の生きがい>
私の父は昨年3月に亡くなりました。
癌が見つかって、9カ月あまりの闘病生活の末でした。
父は退職後、スポーツに熱中し、大会に出ていました、
病気が発覚してその日に入院になるまで。
大会に出ることを目標に、
大きな手術も乗り越えました。
ところが退院の日、
とりきれたと思っていた癌が、
切除部分を超えて広がっている可能性が高いことが
わかりました。
そのときの父の絶望は、想像も届きません。
その後、父は、だれにも心境を明かすことなく、
自分の内に閉じこもっていくように見えました。
私は、辛さを吐き出してほしいとやきもきし、
自分の無力さに焦り、
あるとき、がんの相談ダイヤルに電話をしました。
「父の悲しみを、家族や友人に話してほしい、
乗り越えてほしいが、なかなかそうはならない。
このままでは心配だ」
ということを話しました。
そのとき、相談員の方が言いました。
「それは、お父様ご自身が、
これまでの人生経験をふまえて、今、
ご自分のやり方でなさっていることです。
それを尊重しなければなりません。」
正直、当時はそれを聞いてもピンとはきませんでした。
ただ、
『尊重しなければならない』
その言葉は胸に残りました。
そして、あっという間に癌は再発し、
父は静かに人生を終えました。
突然の病にもかかわらず、
最後まで穏やかに過ごした父。
しかし、あれほど社交的で明るかった父が、
誰にも会おうとせず、
したいことはもう何もない、早く死にたい
と言いました。
それが、私にはとてもショックでした。
父が亡くなった後も、ひきずっていました。
病人に鞭打つように、これ以上何を望むのだ
と自分でも思うのですが、
私の幼いわがままな部分が、
「父に、良い人生だったと最後まで思ってほしかった、
生きていたいと願ってほしかった」
と思ってしまうのです。
つい最近になって、
スポーツを通じて親友になった方とのたくさんの手紙を、
父がひっそりと処分していたのがわかりました。
また、愛用のユニフォームや靴下も、
新しいもの以外は一切残っていませんでした。
今回の「生きがいを変える」を読んで、
「父が、元の体に戻れないことを悟ったときから、
生きがいを変える作業を一人黙々としていたのだ」
と、気づきました。
その切なさ、悲しみを、
だれにも見せないことが、
もしかしたら、
「父の最後の生きがい」
だったのかもしれません。
そして、見事に全うしました。
(Y.Y.)
「父は元の体に戻れないことを悟ったときから、
生きがいを変える作業を一人黙々としていた。
その切なさ、悲しみを、だれにも見せないことが、
父の最後の生きがい」
ここに強く揺さぶられた。
人生最後の旅に出るにあたり、
人はほとんど持ってはいけない。
手放さなければならない。
生きがいにしていたスポーツを手放す。
このこと1つをとっても、
どれほどの喪失感と痛みだったろうか。
わずか9ケ月の短い間に、
どれだけ多くを手放す選択をなさったか、
その一つ一つにどれほど覚悟と勇気が要ったか。
そして、「これだけは」と手放さなかったものの、
なんと尊いことか。
人生をかけてやる最後の選択。
最後の生きがいの組み換え。
Y.Y.さんのおたよりのつづきを紹介して
今日は終わろう。
<さなぎになる大切な時期>
父の姿を想い出したとき、
「さなぎ」が浮かびました。
青虫がさなぎになるときには、
何日か前から食事をあまりとらなくなり、
たくさんフンをしておなかをからっぽにして
それからさなぎへと変化をするそうです。
生きがいを変える時、
他人は、喪った(うしなった)ものを
「ないもの」とみなして、
そこを埋める何かを早く手に入れるよう求めます。
(失恋した時の次の相手、などもそうですよね)でも、
最初の大事なステップは、「喪ったものを手放すこと」。
朝起きて、
「あぁ、いままでの自分ではないのだ。」
と、大切にしてきたものは、もう手元にないことを、
自分が納得すること。
他人にはできない、見えないけれど、
もしかしたら、最も時間のかかること。
一見、ただ落ち込んでいるようなときも、
必死に進んでいるのですよね。
自分の中に、空洞をつくらなければ、
次のものは入ってこれない。
とてもつらいけれど、尊い仕事ですね。
生きがいを変えている時間を、
「さなぎになる大切な時期」ととらえて、
そっと見守れる人が増えていくといいなと思います。
今日は雨です。
父が亡くなってから、
保育園の送り迎えのタイミングだけ、
雨がやむのです。
私は勝手に、
「じいちゃんいるね」
と言って、子供と空を見上げています。
(Y.Y.)
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聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
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「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
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「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
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▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
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いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
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内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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