Lesson918
「生きがいを変える」
2019-04-10
定年退職した人が、
もし日がなゴロゴロしたとしても、
早く次にやることをと責めてはいけない。
「生きがいを変える」
という尊い作業の真っ最中なのだ。
アイデンティティの組み換えでもある。
古い習慣を解体して新しい習慣をつくる分岐点でもある。
何1つするにもいちいちとても、しんどい、のだ。
中高年のひきこもり61万人、
いちばんのきっかけは「退職」。
2019年3月、このニュースを聞いて、
とても他人事ではなかった。
38歳で会社を辞めた私も、選択が違えばそうなってた。
「退職したら、社会との縁が切れてしまった」
そんなかつての私のような人も多いんじゃないか。
私は、小学校→中学→高校→大学→会社と、
箱をのりかえることで、
社会的居場所を与えられてきた。
箱に依存するカタチで社会とつながってきた人は、
箱を退いたら、社会との縁も切れ、
次の居場所を得ねば社会から孤立してしまう。
「人には、行く場所と帰る場所が要る。」
家族や友だちは、帰る場所であって、
行く場所ではない。
「次の行く場所=社会的居場所をどう得るか?」
退職したら直面する課題だ。
さらに長年勤めてきた仕事を退いた人には、
大なり小なりアイデンティティの危機が訪れる。
「自分は自分だ、退職してもビクともしない」
と思っている人も、
昨日までいた仲間も、上司も、部下も、お客さんも、
今日からはいない。持ち場も、働きかける仕事もない。
それゆえ社会から「ありがとう」と言われることがない。
わかっていても視界がガラリと変わる。すると、
「昨日の私は、今日の私ではない。
ではいったい私は何者なのか?」
と自分の存在がグラグラする。
この状態は、誰かと会うにも傷つきやすく、
何かひとつするにも消耗しやすい。
内にこもりたくなってもムリもない。
まわりから見れば、退職後のそんな状態は、
ゴロゴロなまけて見えるかもしれない。
家族だったら、以前のイキイキテキパキしていた頃に
もどってほしいと、つい、上から目線で、
「ああしろ」「こうしろ」と言いたくなる。でも、
「そこに尊敬はあるのか?」
何十年とやり通してきた仕事は、
その人にとってかけがえない。
努力や工夫や人との出逢いや歴史がつまってる。
たとえば、何十年も共に生きてきた
ペットの亀が亡くなった人に、
その喪失感も癒えぬうち、すぐ、
「亀が死んだんなら、これを飼え」
「動物は他にもたくさんいる、何を悲しがってんだ」
と言う人がいたら、無神経きわまりない。
「他の存在とは、とっかえがきかないんだ!」
とその人は泣きたくなるだろう。
同様に長年プロフェッショナルにやってきて、
退職した人に、
安直な代わりをあてがおうとすることは、
「生きがいをとっかえろ」
と言ってるようなもの、無神経きわまりない。
しかもその代わりが、ちゃっちい、
その人に見合わないものだったら、
その人の尊厳はとても傷ついてしまうだろう。
まわりが第2の人生を一緒に考えてもいい、でも、
「あなたがこれまでされてきた尊い仕事には、
とうてい代わるものではないけれど、
あくまで移行措置として、こんな学校がある。
ここで学びながら、ゆるやかに社会と接点を持ちながら、
次の生きがいを探していかれるという選択肢もあります」
というような、その人の尊厳への尊重がいる。
「生きがいを組み換えている人には敬意を払え」
その人は、
アイデンティティ・社会とのつながり方・習慣、
新しい「創造」をしているのだ、
と私は思う。
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おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
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『話すチカラをつくる本』
三笠書房
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ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
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内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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