おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1072
助けてくれる人がいる

「助けてくれる人がいる。」

これは信じていい。

と言うと、
「助けてくれる人などいる気がしない」
という人もとても多いだろう。
家族がいないから、友達がいないから、
子どもがいないから、という人もいるだろう。

私も「別の理由」でそう思っていた。

私の母は、助けてくれる人がたくさんいる。

父が旅立った時も、
残された母を力づけようと、
どれだけたくさんの人が、母に会いにきてくれたか。
手に手に、おはぎ、うどん、おすしなど、
心づくしのおいしいものを持って。

母は、戦後の、モノが無く、
助け合わねば生きられない時代を、
地域や親戚の人々と助け合って生き抜いてきた。

とりわけ母は、

自分が食べなくても、自分は着なくても、
困った人のために尽くす人だ。
それが母のアイデンティティ、見返りも求めない。

母が助けられるのは、より多くを助けてきたからだ。

母を見ていて、あそこまでしないと人は、
困ったとき助けてもらえないのか、
とても母のようにできるものではない、と、
私はあきらめた。

「だから私は、困っても助けてもらえなくて当然だ。」

そんな私が、おとなになってハブられた。

あの、内臓をわしづかみにされて、
ギューっと絞られているような恐怖の日々を、
思い出しても冷や汗が出る。

24時間なにをしていても、わしづかみが取れない。
風呂に入ってても恐怖、
ごはんを食べてても上の空、
体重は急速に落ち、夜は眠れない。

どうしてあんなに恐怖だったのか?

いまから思えば、
窓に石を投げられたわけでも、
殴られたわけでもない。

恐がりすぎだ、と、いまは自分でも思う。

その時調べたことによると、
「恐怖」は、原始人から連綿と続くヒトの歴史の中で、
刻まれた習慣や記憶からくると。

なにしろヒトは、原始生活のほうが圧倒的に長く、
現代の暮らしなどほんのちょっとだ。

で、日本に暮らす私たちの先祖は、
集団で協力して農耕をして食べてきた、だから、

共同体から排除されることは「死」を意味する。

それで現代になっても必要以上に、まるで死ぬかというほど、
恐いのだと、と当時の私は解釈した。

(もちろん私は専門家ではないので、
この説は鵜吞みにしないで、各自で調べてほしい。)

そんな折、声をかけてくれた1人の友人がいた。

遠く離れて住んでいて、
めったに連絡をとらないのに、

その時は、「何かを察した」ようで、いつになく、

ビデオ通話で話そう、と。

恐怖におびえた私は、ほとんど何も話すことができず、
ただ、「誤解が生じハブられている」とだけ、
言うのがやっとだった。

にもかかわらず、次の日から、
まるで1日1回の「声かけ」のように、

LINEでメッセージを送ってくれるようになった。

「よい1週間であるように」とか、
「きょうも良い1日を」といった、
心温かな挨拶の言葉のときもあれば、

見ているドラマの感想のときもある。

私の返信にも、丁寧に向き合って、返信をくれ、
おしゃべりに花が咲くこともあった。

「1週間も言葉をかけてもらえた、それだけで充分だ、
さすがにこれ以上望んではいけない、
むこうも忙しい身だ、ありがとう」
と自分に言い聞かせていた。でも、

翌週も、そのまた翌週も、さらにその翌週も‥‥

声かけはずーっと続いた。

遠く離れた自然の美しい所に住むその人から、
大自然の写真や、降る雪の動画も送ってもらった。

旬をとりいれたおかず、
春待つ菜の花のレシピを教えてくれたこともあった。

何も聞かず、ただ春の陽を降りそそぐように、
そよ風をおくるように、声かけは、何か月も、
私の恐怖心がやわらぐまで、続いた。

私はまるで、世界中からハブられたかのような
恐怖におびえまくっていたが、

それでも、たった1人の声かけに、
世界とつながっている感覚を持ち続けられた。

1人いればいいんだな。

世界とつながってると実感するには、
たった1人いれば充分すぎた。

「どうしてこんな素敵な人が、
こんな自分に優しくしてくれるんだろう?」

考えたらそこに確かな理由があった。

その人も、かつて、私と同じ経験をしていた。

経験者だったのだ。

だから、何も聞かなくても、
どういうふうにつらいか、
なにを必要としているか、察してくれた。

そもそも私からの見えないサインを見逃さなかった。

時はたって、去年の暮れ、

私は小さな小さな、人助けというには
あまりにもちっぽけなことをした。

とるに足りないことだったが、
自分で自分に驚いたのが、

考えるよりも前に、サッと行動していたことだ。

頭でっかちで臆病、それゆえ行動が遅い私は、
決してそういうふうに動ける人間ではなかった。
けど、その時は、無意識に体が動いていた。

見過ごせなかった。
「だれか、どうか、助けてくれ」と、
心の底から天に助けを仰ぐようなサインを
嗅ぎとって、辛かった日の自分が重なった。

人助けのうちにも入らないことをして、
信号を渡りはじめたら、
ふいに、この言葉がつきあげて、泣けてきた。

「助けてくれる人がいる。」

信じていい。

どうしてかというと、

「この世界が哀しみに満ちているからだ」

先に似たような苦しみを経験した人が、
世界のどこかにいる。

そしてその人は、
のりこえる過程で、誰かに助けられている。
感謝してもしきれないと思っている。

そんな人が、
同じ苦しみに苦しむ人を見て、
放っておけるはずはない。

先に苦しみ助けられた人からの「恩送り」、

世界はそのリレーでできている。

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
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TEL:0120-33-1791 Mail:nyushi@kinjo-u.ac.jp


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【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

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「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
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多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
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心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

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●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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