おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1063
自分を可哀想に思わないためのレッスン

「被害感情を減らす」

私は去年、その必要に迫られていた。

自分で自分を、“可哀想”とか、
“あわれ”とか、“みじめ”とか、
つい思ってしまいそうな状況で、

「自分を可哀想に思わない」

ための考え方を思考錯誤で編み出した。

結果、一年たって、心も体も健やかにのりきれた。

間違っていなかった。
万人には当てはまらない方法だろうけど、
私には合った方法だった。

そこで、迷ってる人の“たたき台”くらいになれば、
とシェアする。

整理するとこの3つ、

「きっと何か事情があるに違いない」
と相手を思いやる。

「自分にも何かしら悪い所があるのでは」
と自省の余地を残しておく。

それでもだめなら、「損したまま手放す」。

…………………………………………

そもそもなんで
被害感情を減らさなきゃならないの?
と思う人もいるだろう。
“私って可哀想”にどっぷりつかったって
いいじゃないかと。

はい、私もそう思う。

世の中には、とことん自分をあわれんで、
そこから立ち直る人がいていい。

だけど、その時の私には余裕がなかった。

このまま、眠れず、食べられず、が続けば、
心が折れるかもしれない。

心を骨にたとえてみると、

骨が橋のようにわたされていて、
骨(心)に、重り(ストレス)がのっかっていく。

10㎏の重りで心はポキンと折れてしまうとする。

すでに9.1kg重りがのっかっていて、
あと0.9kgグラムで折れてしまうという時、人は、

心の負担を1gでも取り除こうと必死になるだろう。

そんな状態で、すがる思いで手にした本が、
『心の疲れをとる技術』、そこで、
被害感情を減らすという発想に出逢った。

そこで、私は考えた。

人生には災難としかいいようがないことがある。

そういうとき、人は、
「なんで私がこんな目に、よりによってこの私が」、
「私は何にも悪いことをしていないのにどうして」、
と被害感情を持ってしまう。自然だ、むりも無いことだ。

だけど、この「なんで」「どうして」が、
自分で自分の心に重りを積んでしまう。

「自分で積んでいる重りなら、
自分で減らしたり取り去ったりできるのでは?」

他人を変えるのは困難だけど、
自分の考え方を変えるならできそう、と私は考えた。

そこで試行錯誤でやってみて、
結果的に、心身いちばんラクになったのが、

「相手にもきっと何か事情があるに違いない」

「自分にも何かしら悪い所があるのでは」

というスタンスだった。

あらかじめ言っておくが、
世の中には、被害を受けた人が
100%悪くない出来事もある。私もそう思う。
上記は、決してそこを否定するものではない。
ましてや、そういうケースで、
自分にも悪い所があると思え、なんて、
私は他者に対して言うつもりは全くない。
あくまで私個人の今回のケースに限ってのことだ。

今回、自分でも意外で驚いたのだけど、
手探りであれこれやってみて、

「完全な悪人も、完全な善人も、いない。」

というスタンスに立っていたとき、
ほんとうに、ふっ、と心身がラクになった。

例えば、
映画やドラマに性悪な人がいる場合、
見ているだけも嫌いで憎くて、
ストレスが溜まることがある。

ところが、その人が生きてきた背景が見えてきたとき、
知り得なかった事情があったと知って、
その気持ちに共感して見ると、

それまでの嫌悪感が、ふっ、とやわらぐ。

そんな経験をした人はいないだろうか。
それと同様に、現実に事情は把握できなくても、
「きっと何か事情があるんだろう」
と思うだけで、すっ、と心に風が通る。さらに、

「自分にも何かしら悪いところがあるのでは?」

と、自分にも、風が通る余地をつくっておく。

もちろん自分にも悪い所があると思うことで
負担になる人はマネしないでほしいし、
100%悪くない人もいるから人それぞれでいい。

ただ、私は、教育の仕事をしているので、
自分も何かしら悪いのではという余地をつくることは、

「自分には、まだ改善・工夫できる余地がある」
「自分は未完成で、まだ伸びる」
「自分はもっと成長する」

と感じて不思議に救われる。
そして実際、

「あの時は、自分の限界として気づけなかった。
でも時がたって、自分にも悪い所があった」

と気づいたことが、最近、あった。

今から2年半ほど前、

私は、ストレスで耳が聞こえづらくなった。

当時、「100%私は悪くない」と思っていた。

ストレス製造機のような人が突っ込んできた、
災難としか言いようがない、と。

耳鼻科の医師も「それが引き金だろう」と。

ところが、
あれから2年半たった今になって、
やっと私は、私の落ち度に気づくことができたのだ。

2年半の間に私の生活習慣は大きく変わった。

「運動習慣」を確立したことと、
「酒離れ」が急速に進んだことだ。

なかなか続かなかった運動も、
耳のためなら死活問題として続けられた。

ストレスが溜まると血流が悪くなる、
それで耳に影響が出る。

だからストレスが来ても、
有酸素などの運動を怠らなければ、
血流は悪くならず、耳も悪くならないのだ。

去年、父が旅立つ前後も、
それまでの私だったら運動など放り出していたはずだ。
だけど、「いま耳が聞こえなくなったら母が悲しむ」と、
そんな状況でも、地道な運動を、必死で続けた。

そうしていま、毎日運動してあたり前の生活になった。

また、気づいたらもう8カ月、お酒を飲んでいない。

やめたわけではないけれど、
家族の健康のためにお酒の勉強をしたら、
「こんなにカラダに悪いのか」と目からウロコで、
自然にお酒から離れていた。

いま、毎日運動してあたりまえ、
酒は飲まないのが日常、
という人生になって、
ふりかえってみると、
ほんの数年前まで、
運動もせず、
週4~5日、ビール1~2缶の晩酌をして、
あれでよく私は健康維持できていたな、とあきれる。

実際、
去年は、近年最もストレスフルな年だったのに、
2年半前のストレス製造機のことなど
まるで比較にならない不幸が2つもあったのに、

耳は悪くならなかった。

ということは、
あの2年半前ストレス製造機が突っ込んできたとき、

私に運動習慣があれば、
もっと早くお酒の勉強をして酒から離れていれば、

耳の健康は守れていたのではないか?

あの時の自分は、
自分の限界として気づくことは不可能だったけど、
生活習慣的には一段も二段も成長してみると、

私にも悪い所はあった。

100%ストレス製造機のせいにして、
そもそもストレス製造機とか呼んで、ごめんなさい。

「被害感情を軽減する」

私の場合、白と黒のコントラストが、
くっきりすればするほど、被害感情がつのる。

相手をどんどん悪人(=黒)にして、
私はなんにも悪いことしてないのに(=白)、
と思えば思うほど、

「どうして私が」「なんで」「理不尽だ」

という感情が湧きあがって、
それが自分の心の骨に、ミシミシ、メリメリっと
負担をかける。
だから、その手前でこう言って立ち止まる。

「いま、自分で自分を可哀想に思ってる?」

そこで、
「相手にもきっと何か事情があり」、
と黒をグレーに。

「自分にも何かしら悪い所があるかも」
と白をグレーに。

白と黒のコントラストをほんの少しずつゆるめていくと、
心の骨に乗っかっていた重りもすーっと軽くなる。

それでも、どうにもならない時は、
「損したまま手放す」=許す。

ポキンと折れてしまうより手放した方がよほどいい。

自分が成長すれば、視野が大きく動く。
ダイナミックな視野から見たら、
「自分にも悪いところはあった」
と気づける日がいつかくるかもしれない。

きっとその視野からの眺めは気持ちいい。

自分は純白ではなく、
かと言って黒ではなく、
まだまだまだ青い。

いつか伸びゆく自分に期待して、いまは、

「自分を可哀想に思うのは止めておこう」

と私は思う。

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キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

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編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
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ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
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★出演情報などお知らせのあるときは
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『半年で職場の星になる!
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自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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