Lesson1056
自分の作品を広報できなかった
あの頃の自分へ
2022-10-26
若い作家の卵さんが、
「自分の作品をリツイートなんて、
恥ずかしくてできない」
と言うのを聞いて、私は、
「わっかるなー!!!」
とめっちゃ!共感した。
うんうん、そうそう、私も、かなり長い間、
自分の作品を広報できなかった。
それがいま、できるようになっている。
「なぜ、変わったのか?」
いま、TwitterやInstagramなどSNSで、
国内・海外に広く自分の作品を伝え、
デビューするマンガ家さん、アーティストも多い。
また、プロでなくとも
多くの人が、書いたり、作ったりして、
SNSで発信している。
もし、かつての私のように、
「広報したほうがいいんだろうけど、
自分の作品を自分で宣伝するようなまねは、
なんだかわからないけど気恥ずかしくてできない」
という人がいたら、
今日のコラムが何か糸口になればと願う。
いちばんのきっかけは、
文章表現教育の現場で、初期のころ、
自分の書いた文章を誰にも読まれたくない
という生徒さんが、極々まれにいた。
(時代が変わり今は、ほぼいない。)
そういう生徒さんをなんとか励まそうと、
ふと私の口をついて出たのが、
「書いた作品は子、あなたは作品の親。」
という言葉だった。
人に言いながら、自分自身に響いた。
続けて私の口から出たのが、
「子には子の生命があり、ひとり歩きしていく。」
以前ここで、
私の書いた本が、めぐりめぐって
東京大学大学院の哲学の教授に、
大きく影響していたことをとりあげたが、
「こんな自分が学者に影響を受けることはあっても、
自分が学者に影響するなんてゼッタイない」
と固定観念にとらわれていた私には、
予想がよぎることさえない、
自分の枠組みの圏外の出来事だった。
もしも書き手(親)が、
子(自分の書いたもの)を、人に見せる見せないを、
勝手に決めていいなら、
「博識の先生方にお見せするほどのものでも…」
と、私は引っ込めただろう。
出版というカタチで、いい意味で、
自分の書いたものがひとり歩きしていたからこその、
出逢いだった。
そんなふうに、子は、
親がそれまでの人生で出逢えなかった人々と、
どんどん出逢って、友達になって、たくましく旅していく。
タイ、中国、韓国、台湾…、
親が行ったことのない国々へも、子は、
平気で海を渡って翻訳されて羽ばたいていく。
たとえ親でも、子の行く末を
勝手に決めていいなんてことはない。
ましてや死蔵(誰にも見せず役立てず
しまいこむ)などしていいわけもなく。
「自分は親で、子には子の命がある。
世に出してひとり歩かせてみなければ!」
そう考えを切り換えてから、
以前より抵抗なく、自分の書いたものを
人に紹介できるようになった。
でもまだ、その当時の自分は、
自分でいいと思った作品は広報はする、
でも、イマイチの作品は引っ込めたがった。
でも、これも、親にたとえると違うよな、
と自分で気づいた。
こんな親がいたらどうだろう?
自分の基準で、
「この子は出来がいいから私の子」と、
世の中を連れ歩き、人に自慢し、光をあてまくる。
一方で、
「この子は出来が悪い、こんなの私の子じゃない」と、
家から一歩も出さず、誰にも見られないよう
閉じ込めておく。
これはよくないと、マイルールにしたのが、
「どんな作品も、分けへだてなく。」
自分から見てできがよかろうと、悪かろうと、
どの作品も、同じ扱いで、人に伝えてみる。
実際、地方に講演に行った時、
大学生の女の子が、このコラムの、
あるバックナンバーを、
とても響いたと、感想をくれた。
昔の私なら、こう言っただろう。
「あー、それは、
正直あんまり出来がよくなかったんですよね。
よりによってそれですかー。
むしろこっちを読んでみてください。
それよりずっと面白いと思いますから」
実際、昔は私、そんなこと言ってな。
よい親ではなかった。
不慣れとはそういうことだ。
けど今は、
どの子の感想でも分けへだてなく真摯に聴く。
すると、親が知り得なかった、かけがえのない良さを、
読者が見つけてくれたりする。
親が「いまいちだった」と思う文章も、
誰かしらに、何かしら、響いていることが実際ある。
自分では出来が悪いと思ったものを、
人前に出してみてやっぱり反応が悪く、
ションボリしていたら、
とんでもなく自分が尊敬している人から、
丁寧な感想が届いたりする。
「地球で2人しかいいと言ってくれなかった。
でもこの2人が、私はめっちゃ好きだ。」
と思える時、出来の悪い子ほど
親は可愛いという気持ちがわかる。
それでも、自分の作品をリツイートするのは、
まだまだ長いこと抵抗があった。
リツイートとは、通常は、
Twitterにあげられた文章を、
「読んだ人が」、より多くの人に読ませたいと、
拡散ボタンを押して拡散することだ。
自分が、
「コラム書いたので、リンク先つけておくので、
読んでくださいね」などと、1度あげた文章を、
再度、「自分で拡散する」のは、
「読んでね」、「読んでね」
と宣伝がましくて、気が引けた。
そこを変えたものは、「環境」。
350人のマンガ家さんたちとの出逢いだ。
コルクラボマンガ専科というマンガの学校で。
同じマンガをTwitterにあげたというのに、
紹介の1~2行の文章を変えただけで、
Twitterにあげる時間帯を変えただけで、
読んだ人の「いいね」という反応が、
まるで違って、大バズりしてくマンガ家さんを
目の当たりにした。
ログラインを変えただけで2桁反響が違ってくる。
そうして、取材が来たり、オファーが来たり、
Twitterきっかけでデビューし、
プロとして成長して行くマンガ家さんを、
いったい何人目の当たりにしたことか。
刺激を受けたのは、
そうして大人気になっていったマンガ家さんたちが、
マンガを描くだけでも大変なのに、
Twitterで読んでもらう努力を決して怠らないことだ。
私の敬愛するマンガ家さんたちが、
読んでもらえる時間帯を工夫したり、
時間帯によって紹介文を書き分けたり、
日々、Twitterで、どんどん、ばんばん、
作品を世に羽ばたかせていく。
そんな姿を見て、私も変わろうと思った。
そうして私は、いまは、前より苦じゃなく、
自分の書いたものを、人に読んでもらう
働きかけができる。
子は、親の思惑を超えて、ひとり歩きしていく。
謙虚であることと、
子の人生を勝手に決めることは、別だ。
作品は世に問うてみないと本当にわからない。
自分の書いたものを、
人に伝える工夫の余地はまだまだある!
と私は思う。
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この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!
ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!
録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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