おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1046
読者の声‐送る想い

先月、父を見送った私は、
葬儀で最も大切にしたことを、先週、

「送る想い」に書きました。

すると、読者が、
「私も大切な人を見送ったときに‥‥」
と想いを届けてくれました。

きょうは二人の読者の、
「送る想い」をお伝えします。

………………………………………………

<最後の個展>

タイトルの「送る想い」にドキッとしました。
読み進めて、涙がこぼれそうになりました。

私も先月父を亡くしました。

突然のことで
悲しみと後悔と残された母の心配で
混乱している中、
私もス―ニーさんと同じように
葬儀を行いました。

葬儀は母の希望で
質素に家族葬で行うことになりました。

私も「父をどう送ってあげたいか」
「父はどう送ってもらいたいか」と考えた時、
父が定年後に作り続けていた
趣味の作品を祭壇に飾りたいと思いました。

実際、祭壇に並べてみると、
実家の部屋の片隅に所狭しと置いてあるのと違って、
見違えるほど立派で、
母も驚いていました。
参列した方々にも褒めてもらい、
私も父の最初で最後の個展を行うことができ、
父を見送ることができました。

まだ私の心の整理はついていませんが、
ひとつひとつ行事を行い、
父のことを想いながら、
父の死を受け入れていくのだろうと思います。

(いちごパクリコ)

………………………………………………

ズーニーです。

最初で最後の個展、素晴らしいです。

お父さまの作品が見違えるほど立派で、
お母さまも驚き、みなさん褒めておられた
というところに深く共鳴しました。
私も葬儀で似た想いを抱きました。

「父は、私が思うよりずっと
立派な人間だったのではないか。」

という想いです。
参列者の言動に照らされて悟りました。
家族だからとみくびっていた。
よく知ろうとしなかった。

もっと尊敬をもって接したかった。

ただ、生きている間に父に
してあげられなかったことへは後悔だらけでも、
父の見送りについては、この読者のように、
送る想いを表現できたので、悔いはありません。

………………………………………………

<それぞれの喪の時間>

「送る想い」を読んで
昨年義母を見送った時のことを思い出しました。
当時思ったことを書いた文章です。

義母が亡くなった。
長い間透析を受けながら、
家事に勤しみ家族を支えてきたが、
ここ最近何度か体調を崩すたびに弱っていった。
だがコロナ禍では見舞いもままならず、
義父や義姉の話でしか様子が分からない。
早く会えたらいいのにと妻と話していた矢先だった。

長い間お世話になった病院を出る時、
透析室で一緒の患者さんが
たまたまバイクで前を通り
「ああ、先導してくれてはるわ」と義父が呟いた。

通夜も葬儀も身内だけの小さな、
ささやかな見送りになった。

少し戸惑ったのは、どういう宗旨で葬儀をするか。

義母は出来れば自分が育った宗旨を望んでいたのだが、
義父は家の宗旨で送るつもりで、
そこに口を挟める様子ではなかった。
色々思う所はあったけれど、
一番長く連れ添った義父が納得いくように、
そこは収めることになった。

通夜では何度も棺に眠る義母に
「今までありがとうね」と義父も義姉も叔母も
呼びかけていた。
それが常に家族のことを思っていた、義母の
家庭内での立ち位置だったのだろう。
だが妻は「また会おうね」と呼び掛けていた。
なぜなのか聞くと
「会えない時でも何度もありがとうって
心の中で言って来たから、
今はまた会おうねって言ったの」と教えてくれた。
悲しいはずなのに、暖かさと義母への労りが感じられた。

通夜の際、
先導してくれた透析仲間の患者さんが来てくれた。
「今まで長いこと頑張ったなあ、ようやったなあ。
ゆっくり休みや」
と呼び掛けていた。
治ることのない病を抱えて生き切った義母への、
戦友からの手向けだった。
辛い透析室でも、
そうやって支えあう仲間がいたのだ。
それもまた義母の生きた証だった。

納棺で身ぎれいにしてもらった時に梳いた髪を、
妻がもらっていた。
妻はその後四十九日あたりまでその遺髪を、
義母が行きたかったお寺や職場などに持って行った。
「行きたくても行けなかったところに連れて行くの」
それが義母にも妻にも必要な喪の時間だし、
妻なりの弔いだったのだろう。

遺品の整理や初盆などまだやるべきことは残っている。
だが義姉は「まだようせんわ」と手を付けない。
それでいいと思う。
事務的にことを済ませても気持ちが追い付かない。
みんなが完全に納得する形での見送りは難しいけれど、
義母への思いもかかわりもそれぞれ違う。
それぞれの義母との時間を、
日常と共にゆっくり過ごしていければと思う。
ぼくも義理の息子として受け入れてもらい、
長くはないけれど
かけがえのない時間を過ごさせてもらった。
喪の時を過ごす妻の横で、
ぼくも自分なりの喪の時を過ごしている。

(たまふろ)

………………………………………………

「弔いの時間の過ごし方はそれぞれ違う」、
その違いを尊ぶ読者のまなざしに、
心がやすらぎます。

そうなんです。

たとえ血をわけた親子やきょうだい親戚であっても、
一つ屋根の下に住む家族であっても、
死に際しての考えは、ひとりひとり違う。

宗教のあるなし、同じ仏教でも宗派は何か、
ということもありますが、
死に際して、人が孤独になりがちなのは、

「死生観」がひとりひとり違うからです。

たとえば、母と私とでは、
生きてきた時代、得ている情報、
人の死に接した経験、習慣、
いい意味で違っている。

それぞれ環境の違いや、
そこでの選択の違いが積み重なって、

かけがえなくその人の死生観をつくっています。

だから、弔意の表し方は、
人ぞれぞれちがっていても、
その人がこれまで形作ってきた死生観をかけて
弔っているという点では、皆同じ。

だから、ひとりひとりの違いが尊く、
愛おしいと私は思います。

ここには紹介しきれませんでしたが、

父の見送りに際して、
言葉をかけてくださった方、
想いを寄せてくださった方、

とても言葉がしみました。
そして、温かかったです。

「おとうさん、たくさんの読者の方が、
送る想いに寄り添ってくれましたよ。」

ほんとうにありがとうございました。

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たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
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山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
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申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

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お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

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注:講演など仕事の依頼メールは、
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自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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