Lesson1041
子親2 ― 読者の声
2022-05-18
「親の老い」、
みんな、どうのりこえているんだろう?
家まで、あともうちょっと、が歩けず、
道の側溝の小さな段差に、ちょこん、
と座りこんでしまった母。その母に、
私は生まれて初めて母性を覚えた。
そして、私が幼いころ、
母もそうではなかったか、と。
家まであともうちょっと、が辛抱できず、
しゃがみこんだり、ダダこねて泣いたり、
幼い私に、母は優しく寄り添ってくれた。
「子どものころ、
親にしてもらったことを、
いま私が、親にしている。」
というタイトルには、
子は、最初は親に依存し、やがて自立し、
いつしか子が親を守る、という「関係の逆転」と、
いまはまだその関係に慣れない「戸惑い」を込めた。
時の流れに変わりゆく親との関係、
読者はどう受けとめているのだろう?
………………………………
<母との思い出の景色>
幼い頃、雪が降り積もった日のことです。
山育ちの母は、
長靴を履いてスタスタと
雪の積もった道を歩いていきます。
「お母さんの靴の跡を踏みながらおいで。」
4歳くらいの私は、
長靴を履いて一生懸命に
母の後ろを着いて歩きます。
でも、せっかちで早歩きの母に
私はついていけない。
とにかく一生懸命歩いた記憶だけが残っています。
そんな母は、75歳の今も
健脚でウォーキングを欠かすこと無く、
歩く速さもこの歳にしては早いのです。
ただ、やはり年々
そのスピードが落ちていくのを感じます。
それを感じる時、
わたしの胸の奥はギュッとなります。
あの雪の積もった日のように、
私はまだまだ
「母の後ろを追いかけていたい。」
思春期の頃、
あの雪の日のことは、
すごく嫌な思い出だったのに。
なんで今はこんなにも、
「幸せだった」
と感じるのでしょう。
(なうこ)
………………………………
ズーニーです。
「嫌だった思い出が、
宝物のように幸せな思い出に変わる。」
私もあります。
長く生きてこそ、やっと、
何十年も前、
「あの時自分は幸せだった」、
と気づける瞬間。
その瞬間、心が温かくなります。
そんな人生のサプライズのような瞬間が、
この先、自分が長く生きるにつれ、
増えていくでしょう。
そう思うと、長生きすることに、
宝探しのような希望が湧きます。
………………………………
<実家に仕事のような気分で行く私>
私の母も87歳です。
このところどんどん小さくなって、
身体も目に見えて弱っています。
実家には、
家事の手伝いと様子を見る程度に、
週に何度か通っているけれど、
私自身は、
「なんだか仕事のような気分でいる」
ことに、このごろ気づいています。
少しでも親のために、という愛情が薄い。
つくづく自分は薄情者と感じています。
普通の親でしたし、
大学まで出してもらって、
自由に過ごさせてもらってきて、
もっと感謝するべき、と思いつつ。
妹は、
学生のとき尊敬する人に「母」を挙げ、
今までも、親のためにしょっちゅう家のことを気にかけ、
自分を差し置いても世話をしてきています。
それを立派だなあと思いつつ、
そういう気持ちになれない自分を
空っぽに感じています。
「家族」というと世間的には、
思い合ったり、愛情ある交流をしたり、が当たり前。
そこにハマっていない自分。
「こんな自分が
これから親とどういう関係になっていくのか」
ズーニーさんの書かれた
「親との新しい関係」を
私はつくっていけるのかな、
と毎日揺れています。
(ぴょん)
………………………………
ズーニーです。
ぴょんさんに共感する人、
とても多いと思います。
私もそうです。
そんなとき私は、決まって想い出す
学生がいます。
まだ、ヤングケアラーという言葉も
浸透していなかった時代、
おばあさんの介護をしながら
大学に通ってくる学生がいました。
その学生は、
おばあさんが好きでありながら、
そのお世話を苦痛に思う自分が許せず、
悩んで、苦しんで、考え抜いたあげく、
「束縛されている、
と思うことを自分に許そう。」
と思ったそうです。
まるで社会人が
「その時間は、仕事に拘束されてます」
と言うような感覚で、
「いま、この時間、僕は
介護に束縛されている。」
そう思うことを自分に許した。
すると、
つねに愛情で、好きで、
介護しなければならない、
という呪縛から解き放たれ、
気がラクになり、
これまでより苦じゃなく、
介護に取り組めるようになったそうです。
………………………………
<時空を超えて心がつながる瞬間>
子育てしていると、
過剰に子どもの心配をしてしまったり、
甘やかしていないか叱りすぎていないかと悩んだり、
子育てあるある、の心の動きを、
自分もしていることに気づくことがあります。
自分だけの小さな発見もあります。
そんな時、
「この日本でたくさんの母親が、」
「歴史をさかのぼって連綿と多くの母親が、」
同じようなことを考えたのだろうなぁ、
見つけたんだろうなぁ、
と想像します。
そう思うと、
日本中の、世界中の、
時空を超えた母親の心と繋がるような
豊かさを噛みしめ、幸せを感じます。
私の母も80歳を過ぎ、
そう遠くないうちに、
虚弱と呼ばれる状態を通過することでしょう。
その後認知症になったり、大変なこともあるでしょう。
でも、その時、
この世の中で何億人もの人が、
時代をさかのぼって、連綿と、
もっともっと多くの人たちが、
同じように親をいたわって、
悩んで、
色んなことを考えてきた。
「その色んなことに自分も気付ける。」
その豊かさを、
思わずにはいられないのです。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、
私はそうなるかもしれないその時を、
一方で楽しみにしているようなところがあります。
(まさこ)
………………………………
「いま、この悩みは、
私一人で悩んでいるけれど、
でも、私は独り(ひとり)ではない。
この悩みはたくさんの人と
つながっている。」
そう確信することあります。
私も、かつて「おかんの昼ごはん」を書いたとき、
信じられない数のおたよりが届き、
国内にいる人も、海外にいる人も、
私が悩んだように、
親の老いに苦しんでいることを、
初めて、広く、深く、知りました。
親の老いを止めることはできない、
その意味で問題解決がされたわけではないのに、
多くの人との「つながり」を実感できた。
それだけで、心が救われました。
「人類普遍の苦しみにぶち当たる時、人は、
時空を超えた他者とのつながりを発見できる。」
そんな瞬間は豊かだと私も思います。
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ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!
録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日〜)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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