Lesson1048
すれ違いを憎んで人を憎まず
-誤解に、学ぶ。3
2022-07-20
「許すとは、自分が損をしたまま手放すこと。」
誤解されてツラかった折、この言葉を聞き、
“損したまま手放す”が、しーん、と心にしみた。
インターネット社会、
情報のやり取りが活発になった分、すれ違いも増え、
誰もが大なり小なり誤解にさらされる可能性がある。
そのときに、
「何は、損してでも手放すべきか。」
「何は、決して手放してはいけないのか。」
誤解は尊厳を削る行為だ。
やってないことをやったと言われ、
自分に覚えのない物語を貼り付けられ、
自分とまったく違う人間性を着せられた人間は、
死ぬほどつらい。
尊厳というものは命と等価に重い、と実感する。
そんな窮地にあって、損したままでも手放すべきは、
人を憎む気持ちだ。
きれいごとを言うな、という人もいるだろう。
でも被害感情の増大をくいとめ、心の疲弊を
最小限にとどめる、結局は自分のためだ。
そのために、考える!
問いを立てて、相手の立場になって、視野を広げて。
「相手は自分に意地悪をしているのだろうか?」
「そうではない。」
誤解というと、ある事実を、
間違えたり、捻じ曲げたり、悪く取るイメージが
あるけど、そうばかりではない。
「“ある重要な情報が欠けているせいで”、
その人からは、どう見てもそうとしか見えない」
ということがある。そういう誤解は、
賢い人がよってたかった組織でも、国家間でも起きる。
私は大学入試の小論文問題でそのことを学んだ。
「相手は私に意地悪をしているのではない。
ある情報が欠けているせいで、そうとしか見えない。
自分が相手だったとしても同じ解釈をするだろう」
そう考えると、憎しみは芽を出す手前で手放せる。
「自分も誰かを誤解する弱い人間だ。
もしかすると今、誰かを誤解しているかもしれない」
と自分を突き放して考えたのも、効いた。
事実、これはいつか丁寧に書こうと思うのだが、
私も、父を誤解していた。
父は私が思うよりずっと立派な人間だった。
父がながくはないことを知って、
叔母(父のいちばん末の妹)に、父の話を、
生まれて初めて食いついて聴いた。
葬儀では、父が定年後に勤めた先の奥さんに、
父の仕事ぶり、仕事への姿勢を聴いた。
父が外国航路の船乗りになるために行った
学校時代の話も、生まれて初めて親戚から聴いた。
そこには努力家で、その結果として優秀な、
いままで私が見たことのないお父さんがいた。
「私は誤解されて辛いというくせに、
私だって大切な人に無理解という切ないことをしていた。」
そう思うと人を責められない。ましてや、
憎んだり、悪く言ったり、する気も起きない。
誤解されたら、心の悪玉菌を増やす感情は手放す。
悪玉菌のみになったら腐敗、死だ。
だから損したままとか言ってないで、
さっさと手放して、それ以上心を損なわないようにする。
そこで決して手放してはならないのは、
「いままで生きてきた自分のかけがえのない良さ」
自分の生まれ持ったかけがえのないいいところ、
あるいは努力や鍛錬でコツコツ培ってきた良さ、
それは何としても守らねばならない。
「コミュニケーションのすれ違いを憎んで人を憎まず」
私は今までその流儀でやってきた。
「相手を理解したり相手の立場になったりは、
とても大変な、骨の折れる行為だけど、
そうして相手の想いを大切することが、
結局は自分の想いを大切にすることになる」
ということも、鍛錬して近頃やっとつかんだ。
こうした自分のかけがえのないいいところを、
ブレず、見失わず、これまでどおりまっとうする。
それが、自分にとっての、
“損したまま手放す”
ではないか、と私は思う。
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私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
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この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
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あなたの“へその緒”が社会とつながる!
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文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
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山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
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「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
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就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
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いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
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内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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