Lesson1060
回路をつくる
2022-12-21
朝、
カーテンをあけると、いちばんに、
ベランダのはしっこ、コンクリートの割れ目から
人知れず伸びた雑草に、
小さな「花」が咲いているのが、
パッ、と目に入ってきた!
瞬時に、“hope” (希望)とつぶやいた。
朝からじーんと、気持ちが明るくなった。
そんな自分に、自分で驚いた!
以前はそんな自分ではなかった。
朝、カーテンをあけ、たいていは天気を見て、
“今日は洗濯できないな”、とがっかりしたり、
ベランダの汚れがワザワザ目につくこともあった。
そこに花があることも、草があるとも、知らなかった。
それがどうしてこうなったかというと、訓練だ。
1年ほど前、ツラいことがあって、
夜は眠れず、やがて食べ物も受け付けなくなり、
このまま弱ったら危ないと、
情報をかき集め、考え、必死で編み出したのが、
「テーマ “hope” (希望)で散歩すること」
だった。
散歩に出て、
目に映る風景の中から「希望を感じるもの」を探す。
見つけたら、“hope” とつぶやいて、
スマホで写真に撮る。
最初は、“hope”なんて見つかる気がしなかった。
「冬枯れ」という言葉がピッタリの都会の街中。
hopeと真逆の私の心。
それでも、hope、hope、hope、とつぶやきながら、
空から、地面、歩道や街路樹の根本まで、
きょろきょろ、くまなく、物色するうちに、
真冬の都会に、けっこう花があると知った。
しだいに見つけるのが早くなり、
経験からカンが働くようになり、
すると、意図して探そうとしなくても、
自然と希望を感じるものごとに、
パッと目が行くようになった。
まるであっちから飛び込んでくるかのように。
歩くとき→目に映る風景から→希望を探し
→見つけたら、hope、とつぶやき言語化し、
→スマホにとって記憶に焼きつける。
自分の中にそんな「回路」ができたのだ。
続けているうちに、やがて、私は、
じわじわと、ほっこり、コツコツ、
元気を取り戻していった。
元気になるにつれて、数カ月で、
hope散歩は自然にやめた。
驚いたのは、やめて半年もたつというのに、
自分の中にまだ、この、「回路」が残っていることだ。
「思考回路」はおそろしい。
人生でたった一度、それも数カ月、
自分でつくって、自分で訓練した、
「希望を見る思考回路」が、
いまだにふと、顔を出す。
いまだに、
急いで買い物や、郵便をポストに、
速足で歩いていても、
真冬の名も知らぬ雑草に咲く花や、
鳩が3羽丸まって仲良くほっこり日向ぼっこしてるのが、
意図せず目に飛び込んでくる。
思わず “hope” とつぶやいてしまう。
そろそろ私も、街を歩くとき、
希望ばかりを目で追ってはいられない、
交通などの危険を察知したり、
よい所もわるい所も、
多角的に見ながら歩かねばと思うのだが、
一度つくった思考回路から、
人はなかなか抜け出せない。
それでも、今回、救いがあるのは、
この思考回路は、
だれに植え付けられたものでもなく、
「自分でつくった」という点だ。
どんな必要があって、
何を目指して、どうやって、どのくらいの期間、
「回路」をつくったか、自分でわかる。
「これは回路だ」と自分で気づける。
だから、ループから抜け出す方法も編み出せる。
「自由」だ。
一方で、自分で意図せずして、
環境の中で、何者かに、
無自覚に刷り込まれた「回路」は、
それが当たり前になって、
自分の視野が欠けてることに、自分で気づけない。
毎日、一緒にいて、毎日、話す人どうしは、
おたがいの目に入るものを、言語化して認知し、
記憶に焼きつける訓練をしているようなものだ。
相手が、
人の嫌なところばかり真っ先に目に入る人だとして、
そこに受け答えて言語化していると、
やがて自分の中にも「回路」が焼き付いてくる。
人や、組織が、
「どうしてこんな思考回路をするんだろう、
イヤだ、イヤだ」
と思いながら、いつのまにか似てきて、
やがて自分の中にも同じ「回路」ができていく。
かと思えば、一方で、
「まだ足りない、まだ足りない」と。
私の仕事は、
生徒さんの表現力のかけがえのない良い所を
見つけて伸ばすことだから、
「かけがえのない良い所、良い所‥‥」
と思って、自分を鍛え、精進していくうちに、
やがて少しずつできるようになる。
経験からくるカンも働き、思いがけず、
早く、自然に、正確にできるようになっていく。
プロとしての職場で通用する「回路」ができる。
人のかけがえのない良い所を見る回路は、
自分がチームの中で働いていく時、
思いがけず役立ったりする。
人の話を最後までよく聞くチカラや、
人の顔をよく見て想いを汲み取るチカラも、
連動して鍛えられていく。
同じ時間に、同じ街を歩いても、
「hope」が目に飛び込んでくる人もいれば、
「けしからん」物事が目に飛び込んでくる人もいる。
どちらの人も必要だ。
「hope」を見る人がいれば街も明るくなるし、
「けしからん」を見る人がいるから危機や問題を
察知できる。
そして、どちらにも限界がある。
「hope」だけ見ていては、危機を嗅ぎつけるのに遅れるし、
「けしからん」ばかりでは、本人の心身がしんどい。
多角的に見なければ、とわかっていても、
人間には限界があり、全てを見るわけにはいかない。
ならば、自分に合った回路をつくりたい。
それは、日々、自分がどんな思考をするかであり、
どんな思考回路の人や、環境を、
選択して生きていくか、ということでもある。
来年は、目に映る風景の中から、
いちばん先に「何を」見ているだろうか?
その思考回路は、どこから来ているだろうか?
「自分の回路が見抜ける」
自分でありたい、
いつでもそこから自由になれるように!
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この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!
ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!
録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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