BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。


婦人公論井戸端会議<
(全5回)

第1回 ノストラダムス・ケーキ

第2回  明るい預言者

第3回  終末に期待する気持ち

第4回  宇宙との感応関係

第5回
さて、恐怖の7月は?

糸井  問題の1999年7月ですが、
ホロスコープで見るとどうなんですか。
それがやっかいなことに、
8月にグランド・クロスといって、
地球を中心に太陽系の星が十字架状に並ぶんです。
藤本 日食になるんですね。
伝統的な占星術では不吉な形とされてて、
たまたまノストラダムスの予言の時期に起きるものだから、
多くの占星術家は大変なことが起きると言うんです。
糸井 滅多に起こらないことなんですか。
はじめてといって言っていいです。
だけど逆に言えば、
きょうの星の配置だって、
過去にはなかったわけですよ。
藤本 1999年7月の恐怖の大王というのは、
そのグランド・クロスの日食のことだと
言っている学者さんもいますね。
ノストラダムスの使っていた暦はユリウス暦ですから、
今、私たちの使っているグレゴリウス暦になおすと、
8月11日で、ノストラダムスはそれを予言したんだと。
僕はそれ、嘘だと思ってます。
ノストラダムスのホロスコープを
コンピューターで解析してみたんですが、
計算はズサンで、特に水星や月の位置もめちゃくちゃです。
でも、ノストラダムスが
いいかげんだったわけじゃないです。
糸井 当時のソフトの限界なんだ。
16世紀の技術ですから。
ともかく、400年も先の日食のことなんか
わかるはずないというのが僕の判断で。
糸井 そのデタラメなものが、
ものすごく長い時間とまわり道を経て……。
当たってる(笑)。
なかにはノストラダムスは超能力者だから、
計算なんかに頼らなくても、
いきなり400年後の世界をこの目で見たんだ
と言う人もいて、そう断言されちゃうと、
否定のしようもないんですけど。
糸井 やっぱりナルシスティックな世界ですね。
終末が来ると思い込みたい。
みんな、自分がスペシャルな存在でありたいんです。
終わりのときが来て、自分がそこに立ち会う−−
これ以上スペシャルな感覚ってないわけです。
糸井 僕の見るところ、
ノストラダムス現象のシンボルは長嶋一茂ですよ。
あの年代、あの恐れ方の素直さ、あの育ち方の純粋さ。
それを全部総合すると
今の日本のノストラダムス・ブームが
少しわかる気がする。
どうせなら、このブームを思いきり遊んでほしいね。
ちょっと前、僕らの間で冗談としてウケていたのは、
「恐怖の大王というやつ」がいて、
それが降ってくる(笑)。
やつはどんな顔してるんだろうって言い合う遊び。
もう飽きちゃいましたけど。
うーん、予言をどう考えれば面白いんでしょうね。
空から来るというのはもう決まりですか。
藤本 詩にはそうありますね。
糸井 じゃ、地震はないってことだな。
藤本 詠われているところにはないけれど、
一緒に来るかもしれない。
糸井 一緒に来るって考え、ズルイ(笑)。
じゃ、藤本説ではどんな?
藤本 国際状勢を考えると、何か飛んできても
おかしくはないですね。
でも、それをノストラダムスが予言したとは思いませんが。
糸井 予言に限らず、占いそのものについても
信じないほうですか。
藤本 はい。どうしようかなって悩んでいるとき、
どっちを取るかはそのときの自分の判断ですよね。
それが誰かによって予言できるとか、
あらかじめ決められているとは思いません。
富士山が爆発するとか、
地震が来るというようなことも、
予言で当たるとは思えないなぁ。
ただ、地震は関東では
いつ来てもおかしくないですから、
来るかもしれないと言われれば、
じゃ、枕元に地震グッズでも置いとくかと、
そういう感覚ですね。
糸井さんご自身は、
占いや予言についてはどうなんですか?
糸井 できるものなら信じたい。
「ヘェー」って言いたくてしょうがないんです。
面白けりゃ何でもいいというのが基本ですから。
自分でもいろいろ見に行きましたよ。
スプーン曲げからインドのサイババまで。
赤城山の埋蔵金探しのときは、
身を守るための水晶持ってたし。(笑)
それで−−?
糸井 あっ、違うなって感じ。
どれも面白がらせてもらえなかった。
今、僕にないのは「酔い」なんです。
フィクションに酩酊しないと物事は楽しめないし、
人間は生きていけないような気がしますから。 
それはともかく、今年の7月については
ご安心くださいってことですか。
藤本 いや、安心はしないほうがいいです。
日本は危ない状況だから、
危機感はもってたほうがいいかもしれない。
ノストラダムスと関係なく、ね。

(おわり)

2000-01-12-WED

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