第2回
私の中の一人っ子成分 |
糸井 |
一人っ子というと、親の目がよく届いて、
過保護になりがちだと言われますよね。
僕は子どもを育てる時に、
手をかけすぎないよう、放っときどころを
理性でつくろうとしました。
そのコントロールが難しいんだけど。 |
山口 |
うちの親なんて、もうベタベタでした。
何でも買ってくれたし、
非常に親密な親子関係、
必要以上に一心同体になっちゃって。 |
糸井 |
僕と親は、全然そうじゃなかったなぁ。
僕はもう雑草のようで、
親はちょっと遠巻きに見ていた感じだった。 |
山口 |
うちは父が小説家で、僕のことも、
物心つく前の話から全部、文章にしたでしょ。
今でも愛読者の人に「最近、ぜんそく、
どうなの?」なんて、
うんと昔に治ってるのに聞かれたりして(笑)。
僕は一人っ子でわがまま放題に育ってたわりに、
親と対立して「このやろう!」と
家を出て行くことはなくて、むしろ、
父親を理解しちゃった。
ある時期には友達同士のつき合いみたいな形に
なってたし。 |
糸井 |
これは自分の一人っ子成分のゆえかな、
と思うことがあって、
それは何かと一対一になりたがる傾向が
あること。仕事でも、一見マルチに
やっているようで、一つやって次に一つ、
みたいに、そのつどは一つなんです。
だから変な話、恋愛でも二股はかけられない。 |
山口 |
仕事は僕もそうです。恋愛はちょっと……。
(笑) |
糸井 |
それに、ものすごく賑やかなことは
好きな一方で、一人でいる時間がないと辛い。
群れてることに対する
ちょっとした嫌悪感もあります。
「一人になった時の顔が想像できないやつとは
つき合いたくない」と思ってるし。
「じゃあな」と言って別れる別れ方とか、
僕、人によく素気ないと言われますよ。 |
山口 |
僕もね、だから相手のいるゲームが
できないんですよ。 |
糸井 |
「だから」って、いちいち極端ですねぇ。(笑) |
山口 |
麻雀でも半チャン一回くらい打つともう飽きる。
だけど相手は朝までやりたいわけでしょう。
自分は飽きてるのにつき合うのが不愉快で……。
それから何が苦手って、
喧嘩した後に仲直りして友達になるパターンが
ありますね。あれが僕にはできない。
ほら、いきなり喧嘩してくる人いるでしょ、
きょうだいのある人って。 |
糸井 |
突っかかってきた相手と一緒に酒飲んで、
最後は意気投合――みたいなのが好きな人は
多いんですよ。でも、僕もそういう意気投合は
かなわんですね。 |
山口 |
「普通だったら喧嘩してでも、
その先の和解を求めるものだ」と人は言います。
でも僕は衝突する前に、
「もういいです」となっちゃう。 |
詫摩 |
以前、と言っても三十年くらい前ですが、
一人っ子ときょうだいをもっている学生を
比較してみたんです。そうしますと、
よく一人っ子について言われる、
わがままとか協調性がないだとか、
そういう特徴もないことはないんですけども
(笑)、びっくりしたのは一人っ子は
非常に友達を大事にするという結果です。 |
糸井 |
ああ、それは当たってる。 |
詫摩 |
友達を大事にして、人によくおごる。
大学生ですから、コーヒーやケーキ、
たい焼きなんかですけど、
「今日は俺がおごるよ」ってね。 |
糸井 |
リアリティありますね〜。 |
詫摩 |
幼稚園や小学校の頃を振り返ると、
雨の日には家で猫と遊ぶより仕方なかったとか、
友達がきょうだいの話をするのを
たいへん羨ましく思ったとか、
実感のある言葉も出てきます。
しかし考えてみると、
きょうだいが二、三人いたならば、
小遣いも三分の一、二分の一になる。
一人だと、きょうだいがいる人より
たくさんもらっていることが多いから、
友達におごってやれるのが楽しみだ、
というようなことを言ってましてね。 |
山口 |
僕も友人におごり、すぐ物をあげて、
よく母に叱られました。
今はセーブして友を失ってます(笑)。
でも大人になってからもずいぶん友達が
できるので、人から不思議がられるくらいで。
同性に限らず、異性の親友もできちゃうんです。
恋人というんじゃなく、感覚的には、
ほとんどきょうだいみたいなものなのかなぁ。 |
|
(つづく) |