HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

「すごいお母さん」の挑戦、第2弾。瀬戸内海を元気にしたい。「すごいお母さん」の挑戦、第2弾。瀬戸内海を元気にしたい。

2年前のことになりますが、
ひとりで四国を海外にPRしている
おもしろい女性が香川県丸亀市にいると知り、
「すごいお母さん、EUの大統領に会う」
というコンテンツでご紹介したことがありました。
その「お母さん」こと、尾崎美恵さんは
今もエネルギッシュに活動を続けているそうで、
最近では瀬戸内海のちいさな島々、
塩飽諸島しわくしょとう」を舞台に、
ある夢を描いているそうです。
おもしろそうなので、お話をうかがってきましたよ。
前回同様、丸亀市出身の藤田が担当します。

尾崎さんのその後。

2014年6月、
「すごいお母さん、EUの大統領に会う」
というコンテンツを掲載しました。
詳しくは記事をご覧いただきたいのですが、
香川県に住む尾崎美恵さんという主婦が、
44歳で大学院に入学、
その後「四国夢中人」という団体を立ち上げ、
たったひとりで四国を世界にPRする活動をはじめ、
最終的にEUの大統領にまで会ってしまった、というお話です。

その記事を「ほぼ日」に掲載した直後のことです。
尾崎さんの長女、えり子さんが
こんなブログを書かれていました。

母の記事を読んで思ったこと。
私は20年間母の何を見ていたんだろう。

記事中で母が語っている母自身と
私の知っている母が全く違う。

「ん?あの頃母さんはそんなんだっけ?」
「そんなことしてたっけ??」
記憶が混乱する。
なんとも言えない不思議な気持ちだ。

母は弱い人だった。
おっちょこちょいで、頼りない人だった。
世間知らずで、守らなきゃいけない人だった。
可愛い人だった。

いつも「母さんはダメだな~」
そんなことを家族で言い合って笑いあっていたが、
心の中では、できる母さんが
遠くに飛んで行くのが怖かったのかもしれない。
母さんは何もできないと
思いこみたかったのかもしれない。

記憶が交錯する中で
幼い頃の出来事が断片的に出てくる。

ああ、思い出した。
母さんの翼をタンスに仕舞わせたのは私だ。

中学生の頃、母さんが家に外国人を呼んでくるのが
私はあまり好きではなかった。
机の下に入って拗ねたことがあった。
「家に入れないでよ!!!」と怒鳴ったこともあった。

母さんが大学の勉強をしている時、
全く協力をしなかった。
夕食を手伝ったことも、洗濯物を畳んだこともない。
むしろ「ちゃんと母親の仕事してよ」
みたいなことを言っていた気がする。

ジャパンエクスポに参加したいと相談された時、
頭ごなしに否定した。
「母さんじゃ無理だ。絶対できない」

私にとって母は「私の母」であって
「尾崎美恵」ではなかった。
母も1人の人間だと理解するのに時間がかかった。
いや、本当に理解したのは
私が母になってからなのかもしれない。

母は初めて原付を買ったとき、
私達が小学校にいっている間、
フェリーで島に行った。

島で原付を1人で走らせていると
「どこまでも行ける気がした」
「私は自由だ~」と思った、と。

それを聞いた時
「今でも十分自由じゃん」と
小学生の時だったか、言った気がする。

あの時、母は原付で海を超えそうな勢いだった。
だから、とても記憶に残っている。
(中略)

全文はこちらのブログをご覧ください。

この文章に、尾崎さんの持つ魅力が
詰まっているように感じて、
担当をした私、藤田は
このブログを何度も読み返しました。
そのたび、尾崎さんが瀬戸内海の小さな美しい島で
原付を走らせている姿が浮かびました。

そんなある日のことです。
いつものように
「外務省や大使館に独自の企画を持ち込む」ために
上京してきた尾崎さんと食事をしていたら、
尾崎さんから、こんな言葉を聞きました。

「私、瀬戸内海の島を、
 元気にしたいと思っているんです」

島を元気にする‥‥?
いったいどういうことだろう。
お話をうかがううちに、
瀬戸内海に過疎化が進む島々があり、
尾崎さんがこれまでに培ったネットワークで、
その島々を元気にする方法を考え中だと
いうことがわかりました。
話をする尾崎さんの目は輝き、勢いに満ちていて、
話をうかがっているうちに、
こちらまでわくわくしてきました。
そして、尾崎さんがいつもどうやって
不可能を可能にしていくのか、
その行動を追いかけてみたくなったのです。

そこでまずは東京オフィスで最近のお話をうかがい、
その後、尾崎さんの島訪問に
ついて行くことにしました。

活動自体は「はじまったばかり」という段階なので、
前回の「EUの大統領に会った!」のような
すごい結末が用意されているわけではありません。
でも、なんだか、いいなぁ、
と思える話がいろいろうかがえたので、
瀬戸内の風景とともに、
のんびり読んでいただけたらうれしいです。

(つづきます)

2017-01-20-FRI

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すごいお母さん、EUの大統領に会う。

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