9年前、僕は写真業界で箸にも棒にもかからない存在で、
写真家を名乗る自信も覚悟も実績もない人間だった。
日本で撮影することがつまらないと感じていて、
海外で撮影することでやった気になっていた。
評価されない自分を認めることができずに、
評価されている人間を羨んだ。
当時の自分と作品を振り返ると、
日本で撮影することがつまらないのではなくて、
僕自身がつまらない人間だっただけだ。
それを誤魔化すために、
できるだけ遠くで普段見慣れない景色で撮影をしていた、
だから作品を見返すとやはりつまらない。
──幡野広志 ブログ『ベトナム旅行記』より