糸井 | どこのところがジタバタした場所ですか。 |
荻上 | 撮っててですか。 |
糸井 | お話つくるにあたってでも。 エンドは決まってたんですか。 |
荻上 | エンドが、決まってたんです。 |
糸井 | やっぱりそうか! |
荻上 | エンドが決まってて、 あそこがやりたくて あそこに行き着くように、こう。 |
糸井 | たぶんそうだと思ったんで。 逆算ですよね。 すると、あたまもけっこう 早く決まりますよね。 |
荻上 | あたまも決まりました。 おしりが決まって、 あたまも決まったらコンピュータに向かって 書き始めてしまって。 行きどまって、また考えて、みたいな感じを くり返すんですけど。 |
糸井 | お客として、そのとおりに観ましたね(笑)。 すっごい素直に観たな〜。 ケツがいちばんで、 あたま2番目に決まって、 あとはお人形遊びとして、 あっち動かしたら こっちにぶつかったり、 全部おもしろかったなあ。 場所はどう決まったんですか。 |
荻上 | 場所はですね、 最初は、アメリカ東海岸の どこかで撮りたいと思っていて。 わたしは映画学校が西海岸だったんですが、 あのカラッとした空気の感じよりは 絶対しめった空気のほうがいいと思って、 どこか東海岸で、って探しだしたら、 カナダのトロントが候補にあがったんです。 けっこう気候がよくて、 ボストン的な古い家とかがあって、 緑もあってっていうところで、 けっこうアメリカの映画でも 撮影地になることが多くて。 そういうのがあり、 最終的にあそこになりました。 すごく撮りやすかったです。 |
糸井 | 「こうしたいなー」って思ってからは、 監督の仕事としては、 プロデューサー的な苦労はないんですか。 |
荻上 | わたしはだいじょうぶですね。 プロデューサーさえ、やるって 言ってくだされば。 |
糸井 | いいチームですねえ。 それは全然へっちゃらなんですか。 |
映画 スタッフ |
へっちゃら‥‥じゃあ、 ないんですけど。 |
糸井 | 監督がこうしたいんだ、ってことは だいたい聞いてあげられるような 範囲内なんですか。 |
映画 スタッフ |
やっぱり監督の作品なんで、 プロデューサーは全面的に受け入れて いかに実現するかっていうことが 仕事になります。 |
荻上 | 私はそういうところでは あんまり心配していなくて。 |
糸井 | ケースとしては恵まれているというか めずらしいというか。 |
荻上 | 恵まれていると思います、たぶん。 |
糸井 | これはあきらめてね、みたいなことを いっこ入れるたびに なにか、変わるじゃないですか。 そういうことは、 あんまりなかったっていうことですよね。 |
映画 スタッフ |
そうですね、はい。 |
糸井 | すばらしいことですね。 キャストも現地のスタッフも そうですもんね。 連れて行くより、 やっぱり現地のスタッフのほうが いいんですか。 |
荻上 | 『かもめ食堂』のとき、フィンランドで 現地のカメラマンとかスタッフでやって すごくよかったんですね。 あのゆったりさって、 彼らがつくってくれたと思っていて。 わたしは日本でやってきて どんどんせっかちに、 次、次、次! ってあせりながら 映画撮るのに慣れていたんですが、 彼らは絶対に走らないし、 すごく、ドンとかまえていて。 最初はもう、 どうしてもうこんな時間がないのに のんびりしてるんだろう、って あせってたんですけど、 もう3日めくらいから あせってもしょうがないので、 彼らに合わせようと思いましたから、 そういう雰囲気になれた気もしますし。 あとカメラマンの目とかが 日本人が見る目とは違う感じで、 空気感みたいなものも ちゃんと画のなかにとらえてくれて、 すごい美しい映像になったと思って。 そんな経験があったので、 やっぱりあちらのひとの あちらの目で 映像をつくってもらいたいと思って。 |
糸井 | 画の品質感っていうのは カメラマンと話し合ってつくるわけですよね。 |
荻上 | はい。 |
糸井 | で、これでいいんだ、っていうのは ためし撮りで決めていくんですか。 |
荻上 | いや、カメラマンの候補がいっぱいいて、 そのいろんなひとの映像を観て、 このひととやりたいって 最初に決めた段階で、 わたしが、もう全面信頼しているので。 |
糸井 | 「ひと」なんだ。 |
荻上 | はい。 打ち合わせはもちろん こまかくしますけど、 こんな色あいで、こんなふうに、って伝えたら あとはもう彼らの力量でやってくれ、って、 おまかせしたりします。 |
糸井 | はあ。 やっぱりひとで決めちゃったら そのひとと微調整すればいいだけですもんね。 仕事の仕方としては これから先は どんどんそうなっていくんだろうなあ。 アメリカで映画の学校に いらっしゃっていたっていうことでいうと、 むこうの言い分とかも理解しやすいでしょ。 |
荻上 | そうですね。 |
糸井 | 「ちがうよー!」って水掛け論になったり しないでしょ。 |
荻上 | しないですね、ええ。 |
糸井 | よかったですね。 芝居は外国語でやってるわけですが、 いいかわるいかっていうジャッジは どういうふうにするんですか。 |
荻上 | ううんと、でも‥‥。 |
糸井 | わかる? |
荻上 | はい。なので、たぶん、 ことばがほんとにわかんなくても だいじょうぶなんじゃないかって 思ったんです。 次、アフリカだか メキシコだかわかんないですけど(笑)。 |
糸井 | そこ、ものすごい大事なところですよね。 お客もじつはわかんないですよね。 ことばの使い方とか。 だけど、いい芝居しているかどうかは、 わかるんですよね。 いまの話は すごく重要なことのような気がするなあ。 アフリカでもだいじょうぶですよね、きっとね。 |
荻上 | はい、だいじょうぶだと思います。 |
糸井 | で、その逆の例ってわかるんですけど、 ハリウッド映画に日本人が出るじゃないですか。 そのときに、 素人同然の役者とかを使ったりもして ヘタなやつがヘタな演技してて、 オッケー出てるじゃないですか、 ハリウッドの映画は。 あれはなんなんだろうと。 |
── | (笑) |
糸井 | からかいがてらに言われるのは 『ブレードランナー』の うどん屋のオヤジですけど、 「ヒトツデジュウブンデスヨー」。 だいたいあんなもんですよね。 ということは、 ハリウッドの映画への考え方っていうのは いまぼくらがしゃべってるのとは ちがうことをしてるんじゃないかな。 |
荻上 | そうですね。 |
糸井 | 三船敏郎が出てるのとかだって、 ヘンなんですよね。 でもオッケー出しちゃってるんですよ。 おかしいですよね。 |
飯島 | おまたせしました、餃子です! |
糸井 | きちゃったー! |
荻上 | おおーー! |
(つづきます) |