佐藤
ほぼ日のエンジニアは
「エンジニアである以前にほぼ日の乗組員である」
というあり方をしていますので、
他の乗組員といっしょに企画に参加しながら、
「技術が得意な乗組員」として
すべての業務に取り組んでいます。
そのため、ほぼ日のエンジニアの仕事には
技術を提供するだけでなく、
課題提起やディレクションの能力も求められます。
エンジニアが所属する部門は、
「情報システム部」と
「サイエンス・マジック部」の2部門です。
「情報システム部」は
ほぼ日の情報システムに関わる
アプリケーションシステムや
サーバー、ネットワークなどの
インフラにまつわる開発と運用に携わる部門です。
なかでもウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」と、
そこで展開しているオンラインストア
「ほぼ日ストア」の開発・運用を中心に行っています。
ほぼ日は「読みもの」も「お買いもの」も、
すべてを「コンテンツ」と考えている会社です。
コンテンツができていく過程から、
読者やお客さまを巻き込んで
たのしく展開することが多いので、
情報システム部は
その「場」を技術の面から作る仕事をします。
生まれてくるコンテンツが遊ぶ「場」を
より使いやすく、
居心地のよいものにしていこう、という部門です。
「サイエンス・マジック部」は、
ほぼ日の幅広いコンテンツに技術の力をかけ合わせ、
よりおもしろい場を作ったり、
新しい技術やメディアを使ったアイデアを
形にしていくことを目的に、
今年新設されたばかりの部門です。
「魔法に見えるようなことを科学がやってみせる」
という思いを込めて、
糸井さんが「サイエンス・マジック」と命名しました。
現在は主にスマートフォンアプリなどの
新しいメディアの開発や
それを利用したコンテンツ制作に携わっています。
また、「サイエンス・マジック部」は
当社事業のひとつである
「ほぼ日の學校」の動画コンテンツも作っています。
「情報システム部」の仕事と同じく、
お客さまと乗組員が
みんなでたのしめる「場」となるコンテンツを、
「技術が得意な乗組員」という立場で作っています。
「情報システム部」と「サイエンス・マジック部」、
部門は異なりますが、
それぞれに含まれる
コンテンツの種類で分かれているだけで
エンジニアとして求められる資質は同じです。
清木
「ほぼ日ならでは」と明らかに言えるのは、
請け負いの仕事がほとんど無いところです。
自分たちがおもしろいと思う動機を軸に、
自分たちが企画を立てる。
これはエンジニアであろうが、
経理であろうが、みんないっしょです。
社内は常に、
「同じ船にのる乗組員それぞれが、
自分の関わるプロジェクトを成しとげよう」
という空気に溢れています。
「自分の、もしくは自分のチームが、
誠実さと責任をしっかりと持てれば、
自由におもしろいことに挑んでいい」。
この社風も、
同じ船で進む空気を生んでいる要素だと思います。
外の声を聞くことは大事ですが、
最もたいせつにしているのはあくまでも
「自分たちがいいと感じる」こと。
それをそのままお客さまに届けることができるのは、
すごく大きな特徴だと思います。
また、これはわたしたちのチームに限らず
ほぼ日全体の「はたらきかたの構造」の話なのですが、
ほぼ日では、
企画がピラミッド型組織で作られることがありません。
一般的な会社では、
例えば、まず仕様を決める人がチームにいて、
その人の決定をデザイナーがビジュアル化し、
エンジニアがそれを作る、
というような体制で作られるケースが多いのですが、
ほぼ日では、これらがすべてフラットなんです。
上から下に流れてくる構造ではありません。
繰り返しますが、
「ほぼ日のエンジニア」は
あくまで「エンジニアリングに強い乗組員」です。
わたしたちも当事者として会議に参加し、
いっしょに横並びでプロジェクトを進めていきます。
これは、非常に特徴的だと思います。
そういった会社ですから、
エンジニアとしての技術力や粘り強さは基本ですが、
さらに「おもしろがる心」や「好奇心」が
とても大事です。
さらに、これもまた
ほぼ日全体の特徴なのですが、
「正直であること」がとても重要視されます。
表現も、連絡・共有も、感想も、
なにごとにおいても「正直に」が基本。
困ったときは正直に
「困った」と言えば助けてくれます。
エンジニア同士でも、
正直に色々と打ち明けられる人たちばかりですね。
ほんとうに、いい人が多い。
今風な表現で言えば、
「心理的安全性が高い」ということになるでしょうか。
ほぼ日に自然と根付いている常識のように思います。
佐藤
ピンチというよりも
「鍛えられた面」という感じになる
のですが、
社内でのコミュニケーションですね。
他チームもいっしょに働くスタイルなので、
エンジニアではない人たちに向けて
専門の話をするときに、
わかりやすく伝える工夫が必要になります。
以前、ほぼ日のエンジニア部門が
「宇宙部」と呼ばれていたことがあったのですが、
これはエンジニア同士でしゃべっている言葉が
宇宙語みたいだ、
と言われたことからつけられた名前なんです。
宇宙語のままでは他のチームに理解されませんから、
なるべくわかるように話すことを心がけています。
その意味でのコミュニケーション力が、
ずいぶん鍛えられたと思います。
ちなみに当然ですが、
エンジニアだらけの会社に入った場合は、
そうしたコミュニケーションに関する努力は
ほとんど必要がなくなります。
逆に、エンジニアだけがわかる言葉で遊ぶ、
みたいなよろこびがあるくらいです。
ほぼ日でも、そのたのしみはありますよ。
チーム内であれば、
わかる人同士の言葉でパッと物事を決めたり、
アイデアをぶつけ合うことができます。
そういう気持ちよさに加えて、
「わかりやすく話すこと」を
ほぼ日で鍛えていると、
新しいよろこびが生まれてくるのがわかりました。
技術にくわしくない人たちにわかってもらおうと
あれこれ言葉を紡いでいるうちに、
自分の理解が深まったりするんです。
また、素朴な疑問や質問を受けることで、
いままで気づかなかった
視点を得るような発見もありました。
専門の言葉でやりとりできる仲間もいるし、
新しい感覚を得られるたのしさもある。
ほぼ日では、
この両方を経験できるのがうれしいです。
というコミュニケーションをとりながら
ものづくりをする会社なので、
それが苦手で、
エンジニアの作業だけに集中したい人だと、
難しいのかもしれないですね。
もちろん、作るものが決まれば
集中して作業する時間もありますが、
そういった時間の合間にも
デザイナーや書き手の方などと話しながら
いっしょに仕事を進めるフェーズがあります。
いろいろな考え方をしている人たちと
協力しながらのもの作りをたのしめる人であれば、
ほぼ日のエンジニアに
向いているのではないかと思います。
最後に、ピンチといいますか、
ほぼ日では誰かの「いいこと考えた!」に
急に巻き込まれることがあります。
予定になかった仕事が
差し込みで生まれたりするんですね。
巻き込まれるといっても、
自分もおもしろくなって飛び込むので、
忙しくなるのは自分の責任なのですが(笑)。
ですから、
お客さまのよろこびにつながる本質的なところで
自分がいまなにをやるべきで、
なにを後回しにするのか。
そうした優先順位を見極める目は
かなり大事になってくると思います。
多くのアイデアと実行が同時に起きている、
なんというか、
文化祭のようなたのしみのなかで、
みんなで妥協のない品質のコンテンツを
作り上げていく。
その過程で、それぞれが鍛えられていく。
「ほぼ日」はそういう場なのかなと思います。