- ――
- 笠原町の人ではない村山さんから見て、
この町はどんな印象だったんですか? - 村山
- うーん、そうですね。
かなりこの地域の人たちは、
外から見ても結束が固いというか。
笠原町って、すごい横の繋がりが強いって
聞いていたんですが、やっぱりそう感じましたね。 - ――
- みんなで町を盛り立てようっていう空気感、
仲間意識が既にあったんですね。 - 村山
- そうですね。
その理由の一つに、この産業文化があると思うんです。
この地域は、タイル産業とすごい密接していて、
タイル一個作る上でも、材料を採る作業、原料作る工場、
釉薬を作る工場、成形する作業、特殊な形だけを作る工場と
細かく別れてる分業で、みんながいっせいのーせで
やって、質のいいものができるっていう。
一人だけでも欠けてしまったら、できないんです。
そういう仲間意識っていうのはすごく根付いているのかなと。
その横の帯が、わーっと街の中を
たくさん走っている感じがすごくします。あ、ちょっとすみません。
(村山さん中座中) - ――
- あの、今いらっしゃった方は?
- 村山
- タイルのコンシェルジュですね。
- ――
- モザイクタイルミュージアムにコンシェルジュって
すごく面白い発想だともうのですが、
アイデアの発端は何だったんですか? - 村山
- えー、それは、
道の駅構想の後に、
商売の拠点となるショールームとして
この地域のあらゆるタイルを見てもらって、
どんどん商売できる場所がほしいっていう思いが出てきて
基本計画となりました。 - ――
- はい。
確かに国産のモザイクタイルがどこで作られているか、
知っている人は少ないと思います。
直接、消費者と関われる場所もなかったですよね。 - 村山
- まずは見てもらえれば、
質の良さをわかってもらえるって自信もあって。
商社の組合などでは、実際に運営資金を作って
本格的にやっていける計画を立てていたんですね。
で、その思いや計画を何とかミュージアムでも
やれないかというお話があって。 - ――
- それが2階のコンシェルジュがいる展示スペースで、
形になったんですね。 - 村山
- そうですね。
でも、その後も運営について本当に色々な協議を重ねて、
結果としてこのフロアだけは、
業界から直接会費を集めて運営することとなったのです。 - ――
- 公民一体の、地元の産業復興を担った場所と
なったわけですね。 - 村山
- そうですね。
でも、どう会費を集めるかとか、
どういうものを展示できるようにするかという
企画運営会議っを何度も何度も・・・
何十回も(笑) - ――
- (笑)ここに至るまで、大変だったんですね。
- 村山
- 本当に何回もして、あっちいったり、
こっちいったりだったんですけど(笑)
で、ようやくこういう形になって。
でもここは、まだまだこれからも、
いろんな不都合も出てくると思うので、
修正しながら進めていくと思います。 - ――
- 公共建物として、こういう風に発信していきたい思いが
民間とは別にあると思うんですけど、
そういったこととはどういう風に
折り合いをつけていったのですか?。 - 村山
- そこが実は・・・
非常にネックになっているところなんです(苦笑)
まだ、市としての思いというのと、
この業界の人たちの思いというのは、
必ずしも、今はまだ歩調があっているかは
微妙なところでして。 - ――
- はい。
- 村山
- 私は学芸員っていう職業柄、
どちらかというと公共的な利益のためにという
公益性の高い業務だと思うので、
どうしてもそっちの立場にちょっと行きがちですけど。
やっぱり業界の方から見ると、
ミュージアム機能っていうのは
あまり馴染みのないところなので・・・
そこをどう折り合いつけるのかっていうのが、
すごく悩ましいところではあります。 - ――
- 業界の人たちにも、
ミュージアムに対して戸惑いもあるかもしれませね。 - 村山
- そうですね。
わたし自身、昨年までの二年間、
愛知県の陶磁美術館さん、
常滑にあるINAXライブミュージアムさんと一緒になって、タイル・陶壁といわれるものをきちんと学術的に
調査をしていくというプロジェクトを立ち上げ、
いろいろ調べてきたんです。 - ――
- タイルや陶壁って、
主には、装飾として使われる建築資材ですよね。 - 村山
- はい。
それが今まであまり評価されてこなかったけど、
ちゃんとストーリーというか歴史があって。
使われている建物のことやその背景など、
少しでも伝えることで価値を底上げが
できるのではとの思いがありました。 - ――
- その活動は、今も続いているのですか?
- 村山
- はい。
その中でいつか、大きなアーカイブというか、
この施設の中にタイルのデータベースを作れるといいなと、
今は思っています。
タイルについての情報を調べられる機能を持たせたり、
あるいは建物の修復のためレプリカを作るための
参考資料を保管したりとか。
そういった体制がとれると、
タイル業界と一つの折り合いの成果に繋がるのではと。 - ――
- その思いは、タイルと収集してきた方たちに
繋がる気がしますね。 - 村山
- 実際に、国内のタイルの復元を
やっている業者さんがこの地域にいらっしゃるので、
そういった情報が貯まっていくことは重要なことかと。
この地域に対しても、タイル業界に対しても
マイナスではないはずです。 - ――
- それができると、
一つの文化として、
認知してもらえるようにも感じますね。 - 村山
- いずれは、学会に対して
何か提言できるような取り組みが必要かなとも思うんですね。
将来的には、国などから助成金をもらって、
データベース構築をしっかりやってみたいな、
そういうのができた方が本当はいいなと思いますけど。 - ――
- すごく夢があります。
そのデータベースの基準は、モザイクタイルですか? - 村山
- 本当は、そこから始めたかったんですけど、
その前の時代のタイルについても
あんまりデータがないってことがわかりまして。
建築の一部という扱いだったので、今までは。 - ――
- 工業製品ですもんね。
- 村山
- 一応去年までの2年で、
多少はその、名古屋周辺の近代建築の基盤が
ちょっと見えたので、そこを手掛かりに
手を広げていけたらなとは思っています。
資料としては、
見本台紙っていうタイルの貼ってあるサンプルのものが
数万点ほど中央公民館の地下に今あるんですけど、
十分な調査ができていないので、
その辺はいろいろ平行して・・・(苦笑) - ――
- (笑)やることが盛りだくさんですね。
- 村山
- そうなんですよね。
ほんとに業界の方々が
どのくらい一緒にやっていく意味を見つけてくれるか
っていうのが、今後の課題ですね。 - ――
- これからも、
いろいろと試行錯誤をして進んでいくんですね。 - 村山
- 最初から、正解かどうかわからないまま
進めたところもあるので。
やらないとわからなかった部分もたくさんありました。
ミュージアムっていうもの自体に対して、
専門家がずっとついてやってきたわけじゃないので・・・
いろんな試行錯誤でここまで来たっていう。 - ――
- 業界とミュージアムが、
今後どういうふうに流れていくのか、
楽しみです(笑) - 村山
- がんばります(笑)
- ――
- 今後の展示としては、
どんなことされたいとかありますか? - 村山
- 一つには、やっぱり藤森先生の建築ってことで
建築関係の人たちが来てくれるんじゃないかっていう
予測がありますので。 - ――
- はい。
- 村山
- そういう方に向けた企画も
やっていくべきかなと。
タイルって建築に使われないと、
建築家の人たちが使うって言ってくれないと
業界としては意味がないので(笑) - ――
- きっと使いたくなってくれると思います!
ここに来ると、創作意欲がすごく沸きますから。 - 村山
- あと、これは個人的な野望というか、
個人的な思いなんですけど・・・ - ――
- はい、全然いいですよ。
- 村山
- このミュージアムだけでなく、
笠原町全体が活気づくような取り組みをしたいですね。
例えば、町歩きの観察会とか、
あるいはどこか空き家を活用したような事業ですとか、
そういった外へ出ていくようなことっていうのも
計画できないかなぁと思っています。
将来的にはですけど。 - ――
- それは、そういう魅力が町に十分あるって
感じられるってことですよね。 - 村山
- そうですね、以前プレイベントの中で
行った観察会っていうのも
多治見市内と笠原町の両方でやらせていただいて、
非常に魅力的な物件というか、
面白いものがたくさんあったので(笑)
地元の人たちもそれは気づいてなかったという声もあって、自分たちの新しい発見にもなるんじゃないかという
期待もあります。
そうやって街を見直せるといいなと思っています。 - ――
- まだまだ広がりが持てそうな魅力が
町にもいっぱいあると。 - 村山
- そうですね(笑)
- ――
- では最後に、村山さんが考える
モザイクタイルミュージアムのこれからについて、
教えてください。 - 村山
- モザイクタイルって一個だけだと、
小さい焼き物とか、平板な陶磁器としか
見られないと思うんです。
どこかに貼ってもらって、活きるというか。
来館者の人たちが、自分たちでタイルを使って
自分なりの表現ができるっていう部分が
すごく大きなポイントになる。
普通の博物館・美術館は、
見る側の人たちが受け身なことが多いと思うんですけど、
ここが能動的に何かしたくなる施設に
なりうる可能性を秘めているんじゃないかと。
そこをうまく使いこなせるようになったら、
これまでにないミュージアムになれるかもしれませんね。 - ――
- 全国のタイル好きが集まってきて、
新しいアイデアがここでどんどん生まれるかもしれませんね。 - 村山
- そうですね。
そういう場になって欲しいです。 - ――
- はい、今後がとても楽しみです。
今日は、本当にありがとうございました。 - 村山
- ありがとうございました。
≪次は館長さんのお話でです。≫
(つづきます)