- ――
- 今日は、よろしくお願いします。
- 各務
- あれ、今日も来たの?
- ――
- はい、3回目です。
今日は、お話しを伺いにきました。
今日も人がたくさん来てますね! - 各務
- 土曜日だからな。
今日で、オープンして3回目の土曜日よ。 - ――
- お忙しい中、ありがとうございます。
有志の仲間とタイル集めを始めたところから、
今では、このミュージアムの館長さんになられたワケですが、
各務さんは、以前は何のお仕事されていたんですか? - 各務
- オレは元々、陶器の原料屋だよ。
- ――
- 粘土とか?土とか?
- 各務
- そうそう、それをブレンドしてね、粉砕してね、
またブレンドしてね。
タイルを作るのは乾式成形や。
プレス機って、上の展示にあったでしょ。 - ――
- はい、ありました。
- 各務
- あれは昔のやつだけど、
今のは自動でドーンドーンと圧量かけてやる。
原料の粉を入れておいて、それを押さえて固めるっていう。 - ――
- 粉ですか?
- 各務
- そう粉。
- ――
- 粘土じゃなくて?
- 各務
- それを粉にするんだ。
- ――
- へー。タイルの原料って、粉なんですね!
- 各務
- 展示にもあったでしょう?
また、じっくり見てちょう。 - ――
- また後でちゃんと見ます!
てっきり、粘土状のものを
プレスしているのかと思ってました。 - 各務
- 粘土でも、何種類の粘土があるんや。
陶石って焼き物の原料になる石なんやけども、
長石やケイ石っていう石もあって、
それは溶融店が低い、カリウムとかソーダが・・・
あ、専門的な話して、分かる? - ――
- 好きです好きです、そういういお話。
- 各務
- あ、そう?
それでね、基本は花崗岩。
花崗岩見るとさ、白い色とグレーの色と黒い斑点と
3つ眺められるわけ。
これが風化したら、
グレーってのがケイ石なんや。
ケイ石ってのは、SiO2
で、長石ってのが白い色をしてる、乳白色の白。
黒い斑点っていうやつは、雲母なんだよ。
雲母ってわかる?
ピラピラしてる・・・ - ――
- あ、触るとポロポロ落ちて、
層みたいになってるやつ? - 各務
- そうそう、ピラピラピラピラ
キラキラキラキラしてる扁平状のやつ。
そういう花崗岩が木曽川水系であるとか、
ここらあたりは、みんな花崗岩土質なんや。 - ――
- へー。
- 各務
- 日本には花崗岩土質のところは多いんやけどね、
この辺は奥が深いわけ。
ここら木曽川水系とか。 - ――
- この辺は、特別良い材料が手に入る場所なんですね。
(館長さん電話鳴る、中座、移動)
- ――
- ミュージアムの3階に上がる階段の踊り場にある、
角のような彫刻は、
名前や説明書きがなかったんですけど
何ですか? - 各務
- あれは足だよ。
- ――
- 足!?
- 各務
- 足。
- ――
- 何の足ですか?
- 各務
- 左足だよ。左足のオブジェ。
- ――
- あ、そうなんですね。
なんかエヴァの甲冑みたいな・・・
ほんと角みたいだったんで。
左・・・ - 各務
- 人間のスタートの足は左でしょ。
例えば、お茶の世界は、座って襖を開けて、
立って入るときには、左足から必ず入る。
それが作法なんだよ。
行進の時の作法でもある - ――
- はい。
- 各務
- 世界の80%は、
左足からのスタートなんだよ。 - ――
- へー。
- 各務
- とある本によるとだよ。
日本は少なくとも、作法においては左足から。
だから、左足はスタートの足なんだよ。 - ――
- だから、展示を。
- 各務
- でも選択したのはオレじゃないよ。
設計してくれた藤森先生だよ。 - ――
- あ、そうなんですか。
- 各務
- そう。
あれを建物の一部としてあそこに置くって、
言い出したのは藤森先生なんだよ。
それを一か月前かな、
突然言い出したわけよ(笑) - ――
- 現場ができてきて、閃かれたんですね、きっと。
最上階に向かって、真っすぐ上がっていくところだし。
このミュージアムの計画は、
いつごろから練っていたんですか? - 各務
- 10年前からだよ。
作ってくれって、声上げたのはもっと前だよ。 - ――
- はじめから藤森先生にお願いを?
- 各務
- 藤森先生と知り合ったのは、20年くらい前。
それくらいかな。
藤森先生は昔、建築史家だったんだよ。
建築の歴史の先生、東大の教授でね。 - ――
- はい。
- 各務
- たまたま見た、建築の本にコメントを出してみえて。
建物のコメント、構造のコメント、装飾のコメント。
古い明治以降の建築の場合、
特にヨーロッパからの影響を受けるでしょ?
そうするとそこにタイルが貼ってあるわけよ。
暖炉だとか、今でいうちょっとしたサンルームとかに。 - ――
- はいはい。
- 各務
- 熱海の有名な邸宅に・・・
えーっと、起雲閣だったかな。
そこのサンルームの床にもモザイクタイルが
貼ってあったんだよ。
みんなそこに入ると「おー!」って、
びっくりするくらい見事なんだよ。 - ――
- おおー!
見てみたい! - 各務
- そういった文化財的な建築を本に取り上げて、
書かれていた藤森先生のコメントが面白かったんだよ。 - ――
- 藤森先生はタイルについて
コメントを書かれていたんですか? - 各務
- いや、載ってたのは建物全体のコメントだけど、
得にタイルについてのコメントがすごく面白かったんだよ。 - ――
- どんなコメントか覚えています?
- 各務
- ・・・覚えてない(苦笑)
だって、20年も前の話だから。
でも、そういう面白いコメントを出されてて、
「あー、この人面白い!切り口が面白いね!」
と思って、それでオレ、手紙だしたわけ。 - ――
- 藤森先生に?
- 各務
- そう、先生に。
「オレは、タイル産地で原料屋やってる者だけども、
本に載っている先生のコメントを読んで、
非常に興味を持ってます。
それで、先生にぜひお会いしたい。」
と。 - ――
- うんうん。
- 各務
- で、
「できればご講演をお願いに行きたい!」
とね。
まだ何も決まってもないけど、書いちゃったわけ(笑) - ――
- えー(笑)
(つづきます)