もくじ
第1回自分たちの手で建物を。 2016-06-28-Tue
第2回モザイクタイルをどう見せる? 2016-06-28-Tue
第3回町のこれからのために。 2016-06-28-Tue
第4回はじまりのお話 2016-06-28-Tue
第5回素敵な夜の会 2016-06-28-Tue
第6回アイデンティティを持つ 2016-06-28-Tue

岐阜県生まれ。建築、料理と気ままな旅が好きです。暮らしを考え、提案する仕事をしてきました。今は、次どこへ行こうか模索中です。

ミュージアムができるまで。

担当・ecoromo

第4回 はじまりのお話

――
今日は、よろしくお願いします。
各務
あれ、今日も来たの?
――
はい、3回目です。
今日は、お話しを伺いにきました。
今日も人がたくさん来てますね!
各務
土曜日だからな。
今日で、オープンして3回目の土曜日よ。
――
お忙しい中、ありがとうございます。
有志の仲間とタイル集めを始めたところから、
今では、このミュージアムの館長さんになられたワケですが、
各務さんは、以前は何のお仕事されていたんですか?
各務
オレは元々、陶器の原料屋だよ。
――
粘土とか?土とか?
各務
そうそう、それをブレンドしてね、粉砕してね、
またブレンドしてね。
タイルを作るのは乾式成形や。
プレス機って、上の展示にあったでしょ。
――
はい、ありました。
各務
あれは昔のやつだけど、
今のは自動でドーンドーンと圧量かけてやる。
原料の粉を入れておいて、それを押さえて固めるっていう。
――
粉ですか?
各務
そう粉。
――
粘土じゃなくて?
各務
それを粉にするんだ。
――
へー。タイルの原料って、粉なんですね!
各務
展示にもあったでしょう?
また、じっくり見てちょう。
――
また後でちゃんと見ます!
てっきり、粘土状のものを
プレスしているのかと思ってました。
各務
粘土でも、何種類の粘土があるんや。
陶石って焼き物の原料になる石なんやけども、
長石やケイ石っていう石もあって、
それは溶融店が低い、カリウムとかソーダが・・・
あ、専門的な話して、分かる?
――
好きです好きです、そういういお話。
各務
あ、そう?
それでね、基本は花崗岩。
花崗岩見るとさ、白い色とグレーの色と黒い斑点と
3つ眺められるわけ。
これが風化したら、
グレーってのがケイ石なんや。
ケイ石ってのは、SiO2
で、長石ってのが白い色をしてる、乳白色の白。
黒い斑点っていうやつは、雲母なんだよ。
雲母ってわかる?
ピラピラしてる・・・
――
あ、触るとポロポロ落ちて、
層みたいになってるやつ?
各務
そうそう、ピラピラピラピラ
キラキラキラキラしてる扁平状のやつ。
そういう花崗岩が木曽川水系であるとか、
ここらあたりは、みんな花崗岩土質なんや。
――
へー。
各務
日本には花崗岩土質のところは多いんやけどね、
この辺は奥が深いわけ。
ここら木曽川水系とか。
――
この辺は、特別良い材料が手に入る場所なんですね。

(館長さん電話鳴る、中座、移動)

――
ミュージアムの3階に上がる階段の踊り場にある、
角のような彫刻は、
名前や説明書きがなかったんですけど
何ですか?
各務
あれは足だよ。
――
足!?
各務
足。
――
何の足ですか?
各務
左足だよ。左足のオブジェ。
――
あ、そうなんですね。
なんかエヴァの甲冑みたいな・・・
ほんと角みたいだったんで。
左・・・
各務
人間のスタートの足は左でしょ。
例えば、お茶の世界は、座って襖を開けて、
立って入るときには、左足から必ず入る。
それが作法なんだよ。
行進の時の作法でもある
――
はい。
各務
世界の80%は、
左足からのスタートなんだよ。
――
へー。
各務
とある本によるとだよ。
日本は少なくとも、作法においては左足から。
だから、左足はスタートの足なんだよ。
――
だから、展示を。
各務
でも選択したのはオレじゃないよ。
設計してくれた藤森先生だよ。
――
あ、そうなんですか。
各務
そう。
あれを建物の一部としてあそこに置くって、
言い出したのは藤森先生なんだよ。
それを一か月前かな、
突然言い出したわけよ(笑)
――
現場ができてきて、閃かれたんですね、きっと。
最上階に向かって、真っすぐ上がっていくところだし。
このミュージアムの計画は、
いつごろから練っていたんですか?
各務
10年前からだよ。
作ってくれって、声上げたのはもっと前だよ。
――
はじめから藤森先生にお願いを?
各務
藤森先生と知り合ったのは、20年くらい前。
それくらいかな。
藤森先生は昔、建築史家だったんだよ。
建築の歴史の先生、東大の教授でね。
――
はい。
各務
たまたま見た、建築の本にコメントを出してみえて。
建物のコメント、構造のコメント、装飾のコメント。
古い明治以降の建築の場合、
特にヨーロッパからの影響を受けるでしょ?
そうするとそこにタイルが貼ってあるわけよ。
暖炉だとか、今でいうちょっとしたサンルームとかに。
――
はいはい。
各務
熱海の有名な邸宅に・・・
えーっと、起雲閣だったかな。
そこのサンルームの床にもモザイクタイルが
貼ってあったんだよ。
みんなそこに入ると「おー!」って、
びっくりするくらい見事なんだよ。
――
おおー!
見てみたい!
各務
そういった文化財的な建築を本に取り上げて、
書かれていた藤森先生のコメントが面白かったんだよ。
――
藤森先生はタイルについて
コメントを書かれていたんですか?
各務
いや、載ってたのは建物全体のコメントだけど、
得にタイルについてのコメントがすごく面白かったんだよ。
――
どんなコメントか覚えています?
各務
・・・覚えてない(苦笑)
だって、20年も前の話だから。
でも、そういう面白いコメントを出されてて、
「あー、この人面白い!切り口が面白いね!」
と思って、それでオレ、手紙だしたわけ。
――
藤森先生に?
各務
そう、先生に。
「オレは、タイル産地で原料屋やってる者だけども、
本に載っている先生のコメントを読んで、
非常に興味を持ってます。
それで、先生にぜひお会いしたい。」
と。
――
うんうん。
各務
で、
「できればご講演をお願いに行きたい!」
とね。
まだ何も決まってもないけど、書いちゃったわけ(笑)
――
えー(笑)

(つづきます)

第5回 素敵な夜の会