- 糸井
- 売れてますね(笑)
- 古賀
- ありがとうございます(笑)
- 糸井
- そもそもライターって一種裏方商売だから
本が売れたとしても、なにか不思議な感覚じゃないですか。 - 古賀
- そうですね。
普通の作家さんとか著者さんだと、
「自分の書いた本がこれだけ売れたんだぞ。」って
実感があると思うんですが、ライターはあくまでも
裏方ですからね。
作家さんとかのような実感はないかもしれません。 - 糸井
- はい、はい。
- 古賀
- ライターって、「こんな素晴らしい人がいる、
こんな面白い人がいる、みんな聞いてください!」
っていうのが基本的にあるわけじゃないですか。 - 糸井
- うん、うん。
「その人が考えていること、僕はとても好きなんです」
とか・・・・ - 古賀
- それを僕らライターが多くの人に知ってもらえるように
いろいろな技術を駆使して表現するみたいな・・・ - 糸井
- その中に自分のメッセージも入り込みますもんね。
- 古賀
- はい、そうなんです。
ただ、昔から100万部いけば、
さすがに僕も天狗になるだろうと思っていたんですよ。 - 糸井
- そうなってもおかしくないですよね(笑)
- 古賀
- そうですね(笑)そのタイミングがきたら、
ちょっと偉そうに世の中のことを語りだしたりということを
躊躇なくできるようになるのかなと思ってたんですけど、
全然できないですね。 - 糸井
- 躊躇していたんですか(笑)
- 古賀
- いえ(笑)
「俺の話を聞け」って、
言いたくなるんじゃないかなと思ってたんですけど・・・
でも、「この人の話を聞いてください」って
言いたくなっちゃうんです、相変わらず。 - 糸井
- ええ。
- 古賀
- 今もライターとして面白い人や、素晴らしい人を
探し回っています。 - 糸井
- 古賀さんのその姿は、ストレートに伝わってきますよ。
- 古賀
- そうですか(笑)
- 古賀
- 糸井さんは天狗になった時はあったんですか。
- 糸井
- それが、ぼくの場合はなったんですよ。
- 古賀
- へえええええ~
いつ頃ですか? - 糸井
- 30才そこそこで。
そうならないつもりでいたのに、なっていたんですよ。
天狗になっていないと思ってるのに、
攻撃されたり、無視されたりすると、
それに対して矛と盾で言うと、
盾のつもりで肩をはるんですね。
そんなところに俺はいないよって
チンケな人間じゃないみたいなことを言いたくなって、
言い返したくなっちゃうときはありましたね。 - 古賀
- そうだったんですか。
- 糸井
- それに若い時はほめられたいっていう気持ちが
ありますよね。 - 古賀
- ええ、ありますね。
- 糸井
- だんだんほめられることに慣れてくると、
そんなことないって言えなくなってしまってたんです。
でもそのうち、これまで何をしてきたかとか、
何を考えてきたのかってことが
自覚できるようになってきたんですね。
そうすると、原寸大がいいよなあって
思うようになりましたね。 - 古賀
- でも当時の糸井さんは、コピーライターっていう
仕事を世間に認知させるみたいな
意識もあったんじゃないかと思うんですよ。
そういった意味では、僕も本のライターというのが
どういう仕事なのかを声高に言ったほうがいいのか、
裏方の人間として、これまでと同じような役に徹するのが
いいのか、正直ちょっとわからないんです。
(つづく)