- 糸井
- それにしても震災というものを経験すると
それまでの事についていろいろ考えさせられましたよね。 - 古賀
- そういえば、糸井さんは以前の「今日のダーリン」で
3年後の話というものを書かれていましたよね。 - 糸井
- はい、はい。
- 古賀
- ぼくも見えもしない10年後、20年後を語るより
今日、明日をどう生きるか、っていう立場だったんです。
ただ最近では3年先にこっちに向かっているとか、
あっちに向かっているとかって思えてきたんです。
- 糸井
- ぼくはそれを今の年でわかったわけです(笑)。
- 古賀
- そうなんですね。
- 糸井
- はい。たとえばの話、大きな災害があった後、
こういう事もあるんだから、今日っていうのを
充実させていこうという考えはとても立派な
考え方だと思うんですよ。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 今日を充実させるということに、
しっかり重心を置いたら3年後はわからないから、
1日中精一杯生きようというのは説得力があるんです。
- 古賀
- 3年後はわからないから・・・というのは
大きな災害の後は特にそう考えますようね。
私も東日本大震災の時、4月に現地に行ったんですよ。
ちょうど5月に出版予定の本があって、震災のことを
全くふれないというのには違和感があって・・・
まずは現地を取材しようと。 - 糸井
- 4月というと瓦礫も沢山あったでしょ。
- 古賀
- はい、何もできないって思いました。
- 糸井
- 無量感ですよね。
- 古賀
- はい。本当にそう感じました。
- 糸井
- ぼくも周囲から「どうしましょう?」って
聞かれても、「ぼくもわかんないけど・・・」って
いうのをずっと言ってきたんです。
でもそう答えていく間に、3年前からしたら、
今日くらいのところはわかってたなっていうことを
思うようになったんですよ。 - 古賀
- それって、震災とか気仙沼に
関わるようになったというのは関係していますか? - 糸井
- はい。震災はでかいですね。震災、でかいです。
- 糸井
- 震災のことでいうと、ぼくが人から
「大変だったね」って言われた時に、
ずっと変わらない1つの思いがあるんですよ。 - 古賀
- 1つですか?
- 糸井
- はい。みんなが優しくしてくれる時に、
素直にその行為を受け取れるかどうかなんですよ。
だから震災にあった人達と友達になりたいっていうのを
早く言った理由は、友達のいうことって
聞くからなんですよね。 - 古賀
- そうですね。うんうん。
- 糸井
- 友達になれてないと、「ありがとうね、ありがとうね」って
言うけど、やっぱり「ございます」が付くんだよね。 - 古賀
- ああ、なるほど。
- 糸井
- 普通に「ありがとう」って言ってくれるみたいな
距離感でいたいと。 - 古賀
- 距離感ってとても大事ですよね。
- 糸井
- 大事です。
ぼくが「普通のありがとう」以上のことを
恩着せがましくしたら、またこの距離感って
保てないと思うんですよ。
あげればあげるほどいいと思っている人も
いるじゃないですか。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- でも、それは絶対違いますよね。
向こう側からぼくを見て、余計なことをって
思われるようなことをしてないかなっていうのを、
いつも考えるようになったんですよね。 - 古賀
- そうですね。でも、震災に関わるって決めたとき
世間的にいいことに見えたり、あるいは慈善活動とか
そういうものに見えるって、
いい面と悪い面とあるじゃないですか。
僕たちはいいことをやっているんだっていうふうに
自分を規定しちゃうと結構間違ったことをしがちで・・・
- 糸井
- やっぱり吉本隆明さんの影響は大きいですね。
吉本さんが、前々から、いいことをやっている時は
悪いことをやっていると思え、悪いことをやっている時は
いいことやっていると思え、ぐらいに、全く逆に考えると
いうのを教えていただいたんです。 - 古賀
- なるほど。
いいことをやっている時は悪いことをやっている、
悪いことをやっているときはいいことをやっている・・・ - 糸井
- つまり震災や気仙沼に関わって、「ありがとう」って
言い合える距離感が大事だと思ったんです。 - 古賀
- なるほど。そして震災や気仙沼を通して
3年先くらいの方向性はわかるんじゃないかと・・・ - 糸井
-
はい、今の年でわかったんです 笑。
(つづく)