エピグラフ。
初めてこのことばを知ったときには、
「エビピラフ」と似た語感が、
なんだかいいなあと思ったものです。
しかし、エビピラフの人気の高さと比べると、
エピグラフはずいぶん地味な存在です。
そもそも、「エピグラフ」と聞いて、
何のことを指すのかすぐにピンとくる人の方が
珍しいかもしれません。
『三省堂 大辞林』で「エピグラフ」を引いてみると、
「碑文」「碑銘」という意味に続いて、
「本の巻頭に記す題司」「題辞」
と書かれています。
細かな説明よりも、
一例を挙げてしまう方が話が早いかもしれません。
『ミライの授業』(講談社)
瀧本哲史著
この本は、ほぼ日の塾第1期にて、課題1の対談コンテンツに登場された
ライターの古賀史健さんがライティングを担当された本でもあります。
そんな本書、目次と本文の間に、こんなことばが添えられているのです。
未来を予測する
最善の方法は、
それを発明することだ
──アラン・ケイ
そう、これがエピグラフです。
パーソナルコンピュータの父と言われる氏のことばが、
この本の核心となるメッセージを見事に伝えています。
情報を素早く大量に処理することが求められ、
「速読」もひとつのスキルのように語られるいま、
エピグラフは読み飛ばされがちな部分なのかもしれません。
確かに、本にエピグラフがなくても何の問題もないでしょう。
エピグラフがない本を見つけるよりも、
付いている本を見つける方が大変です。
しかし、「わざわざ」付けられたものだからこそ、
そこには作者の考えや、思いが表れているような気がするのです。
派手さはないけど、じわじわくる。
そんなエピグラフの魅力について、
いくつかの例を見ながら迫っていきます。
(つづきます)