エピグラフの中には、
思わず「ん?」と立ち止まってしまうようなものもあります。
『読んでいない本について堂々と語る方法』(筑摩書房)
ピエール・バイヤール著・大浦康介訳
3、4ページめくると出てくるのがこちら。
私は批評しないといけない本は読まないことにしている。
読んだら影響を受けてしまうからだ。
─オスカー・ワイルド
読まずに語れ。語るなら読むな(?)。
わからなさゆえに、中身が気になってしまいます。
複数の人物のことばを並べて、
エピグラフが構成されることもあります。
『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)
高野秀行著
目次の次に飛び込んでくるのがこちら。
見てきた物や聞いた事 今まで覚えた全部
でたらめだったら面白い そんな気持ちわかるでしょう
──THE BLUE HERATS「情熱の薔薇」より
およそ真実の探求者は、塵芥より控えめではなくてはならない。
──マハトマ・ガンジー『ガンジー自伝』(蝋山芳郎訳/中公文庫)より
ガンジーとブルーハーツ、夢の共演。
ことばそれ自体の魅力だけでなく、
組み合わせ次第で印象が変わってくるところも、
エピグラフの醍醐味なのかもしれません。
いかがでしたか?
ほんの一部を見てみるだけで、
エピグラフには思ったよりも
いろいろな使い方があり、個性に富んでいて、
なかなかに面白いことばたちが揃っていることを
感じてもらえたのではないでしょうか。
本に、エピグラフが欠かせないとは正直思いません。
私の限られた読書経験を棚に上げたとしても、
エピグラフが入ってない本の方が多いのは明らかですし、
エピグラフが優れているからといって、
中身が面白いかはまた別の話でしょう。
(今回例に挙げた本は、どれも本当におすすめです。)
でも、オマケのような部分だからこそ、伝わってくることがあります。
そこに表れているのは、作り手のセンスや、作品に込められた思いです。
そう考えると、エピグラフを読み飛ばしたり、
チラッと見るだけで済ませたりするのは、
少しもったいないことのような気がします。
このコンテンツを読んで、
エピグラフに目が留まる方が少しでも増えたなら、
とても嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
(終わります)