「なんだか気になる」という気持ちの正体は、
「好き」という気持ちだった。
そこで、自分の気持ちに素直になって、
出会ったお気に入りのハンカチに
いろいろな想いを添えてみたい。
頭の中が見たい
青いハンカチが2枚。
オシャレな帽子をかぶったおじさんと、アザラシ。
おじさんの方は、アザラシのハンカチよりも
濃い青をしていて、黒で縁取りがされている。
注目したいのは、その表情である。
おじさんは眉もない、口もない。
円な瞳でこちらをじっと見つめ返してくれる。
たっぷりと蓄えた口ひげが、
ご機嫌そうにぴょん、と跳ねている。
おじさんは毎日何を思いながら見つめているのだろう。
買ってほしそうでも、
買ってほしくなさそうでもない表情に、
私はついこの1枚をレジに運んだ。
今でもおじさんは少しも変わらない表情で
私の生活についてくる。
でも、何となく、
怒っている日には心に笑う余裕を作り、
楽しい日にはこう見えて一緒にワクワクし、
緊張している日には糸をほぐしてくれている、
そんな気がするのである。
一方、アザラシのほうは表情が豊かだ。
目と、眉と、鼻くらいしかないが、
あっちこっちを向いて寝転んでいる。
こっちを向いていないアザラシまでいる。
シルエットは、雲かエビフライか、
やっぱり後ろ姿か、もはやわからない。
20センチ四方の布の上で、
みんな思い思いに過ごしている。
思わず「どうしたのだ」、
と声をかけたくなってしまうような1枚。
表情は気になるし、
シルエットを見ているとお腹は減るし、
この1枚にはずいぶんと心を振り回されている。
しかし今日も今日とて、
取り出すたびに一頭一頭の物語を空想しては頬が緩む。
ハンカチの絵柄の好みというのは、
もしかしたら本来の機能から
ずれているかもしれない。
でも、手に取ったハンカチが
おじさんだったとき、アザラシだったとき、
私の心の波はふっと揺れる。
カバンから取り出すたびに、ふっと揺れる。
顔がほころんで、
ぽっと体温が上がったような気分になる。
まるで、相棒を連れて出かけているみたいに
心強いのだ。
さっと、こなしてくれる
ハンカチをしっかり持ち歩き始めると、
便利だなあと改めて実感した。
手を洗ったあと手を拭くだけではない。
汗も拭えるし、
そのままパタパタ扇げばなんとなく涼しい。
メガネのちょっとした汚れも拭けるし、
汚れだけでなく、夏はペットボトルの汗も拭い、
冬はボトルに巻いて保温することもできる。
愛らしい絵柄に、頭の中を空想するのも楽しい。
しかし、ハンカチには
本業があることを忘れてはならない。
そう、余分な水分を吸い取ることだ。
吸水性に優れていて、
速乾性も高ければ申し分ない。
ほぼ日のコンテンツでは、
素敵なタオルがすでに紹介されている。
そこで、
何かを追求したものって、やっぱりすごかった!
ということを伝えることを目的として、
吸水性に驚いた1枚を、
私のお気に入りとして紹介できると嬉しい。
私が出会ったのは、この1枚。
一点の曇りもない真っ白なハンカチ。
触り心地はずば抜けて柔らか。
押されるままに沈むでもなく、
跳ね返すでもなく、やんわりとした弾力で、
生地の中心と指の間に隙間を残して止まる。
目を瞑って選んでも、
このタオルだけは感触でわかりそうだ。
そして何と言っても吸水性である。
通常手のひらを拭き、手の甲を拭き、
指の間を通ってこれを3往復して
やっと手から余分な水分がなくなるとする。
この純白のタオルは、ほぼ一往復でそれをやってのける。
さっとなでるだけで、8割方乾いてしまうのだ。
このハンカチ、実は「今治タオル」という
地域ブランドのタオルハンカチである。
120年続く伝統的な技術を用いて作られているそうだ。
吸水性はよいか、毛は抜けにくいかなど、
厳しい品質基準を超えて、市場に出されている。
品質にこだわったハンカチは、
こんなにも使い心地が違うのか。
お手並み拝見、と手を拭いた私は
乾いた手をまじまじと見つめて思った。
知らなかっただけで、
実は奥深いことは日用品のなかにもあるのだ。
この1枚を通して、
何の関心ももたずに使っていたら
出会わなかったかもしれない、
「ものへのこだわり」とその実力を知ったのであった。