もくじ
第1回パワーリフターへの道はボートから。 2016-12-06-Tue
第2回1位のある世界、1位のない世界。 2016-12-06-Tue
第3回負けから見える自分は、クリア。 2016-12-06-Tue

名前を出して文章を書いたり、
名前を出さずに文章を書いたりして生きています。
特技はお箏を弾くこととタロット占い。
かなり陽気な人です。

挫折の先に見えるもの。

挫折の先に見えるもの。

担当・山口じゅり

今回私がインタビューしてきたのは、赤川智子選手。
2016年全日本パワーリフティング選手権、52kg級2位の選手であり、
私と長い付き合いの友達でもあります。

パワーリフティングってどんなスポーツなの?
という人のために簡単に解説すると、
とても重たいバーベルを、えいや!と持ちあげるスポーツなんですよ。

100kgを超えるバーベルを、
両手で持ち上げる赤川選手の姿は、すごくかっこいいんです!

そんな彼女は、先月11月、
世界パワーリフティング選手権の日本代表として、
アメリカのフロリダで開催された世界大会に出場してきました。

結果は15位。
本人いわく、
「負けたのが悔しくて、人生初の胃痛になった」
という世界へのチャレンジ。
今回はそのお話を聞かせていただきました。

彼女が挫折から感じたこと。
それは、パワーリフティングにとどまらず、
全てのスポーツをたしなむ人、
何かを一生懸命にやっている人に通じる話なのかもしれません。

プロフィール
赤川智子さんのプロフィール

第1回 パワーリフターへの道はボートから。

山口
赤川智子選手、今日は宜しくお願いします。
赤川
宜しくお願いします。
山口
何だか緊張しますね(笑)。
赤川
変な感じがしますね(笑)。
山口
なんだかんだで、私たち中学生の頃からの付き合いだから、
こんなかしこまったインタビューをするって、
何だか不思議な感じが・・・・。
赤川
そうですね(笑)。
山口
いつもはお互いあだ名で呼んでいるんですが、
本日は赤川さんと呼ばせて頂きます(笑)。
赤川
私も山口さんと呼びますね(笑)。
山口
では、よろしくお願いします(笑)。
えー、赤川さんはパワーリフティングの選手なんですよね。
赤川
ええ、パワーリフターと呼ばれますね。
山口
パワーリフターですか。
私、赤川さんが社会人になったくらいから、
やけに筋肉の厚みが増して、
むきむきになったなって思っていましたが・・・・。
確か、女性用のTシャツが、肩の筋肉がありすぎて、
入らなくなった、なんてこともありましたよね。
パワーリフティングをやっていたとは知らなかった。
赤川
まぁ、マイナースポーツですし。
山口
マイナースポーツなんですか?
私、オリンピックでやっているの、
見たことがありますよ!
バーベルを、えい!って挙げる競技ですよね。
赤川
いや、あれは近いけれど、
パワーリフティングとは別の競技です。
オリンピックにあるのは、
ウエイトリフティングという競技で、
有名なところでは三宅選手がいますね。
山口
同じバーベルを挙げているように見えますが、
やっぱり違うんでしょうか?
赤川
オリンピック種目のウエイトリフティングという種目は、
バーベルを頭の上に挙げる競技なんです。
山口
あ!確かに!
オリンピックのバーベルを上げていた選手は、
頭の上に、『はっ!』って挙げていました。
赤川
パワーリフティングは、
バーベルを肩に担いで、しゃがんで立ち上がる『スクワット』、
ベンチ台の上に横になり、
バーベルを胸につけて上げる『ベンチプレス』、
床に置いてあるバーベルを引き上げる『デッドリフト』、
この3種目で上げたバーベルの総重量を競います。
山口
ははぁ、わかりました、つまりあれですね、
水泳とかバイクとか組み合わせた、あのスポーツと一緒―――
赤川
トライアスロンですね。
そうです、
バーベルのトライアスロンみたいな感じだと思えば・・・・。
山口さんはうまいことを言いますね(笑)。
山口
ありがとうございます(笑)。
それにしても、今回のインタビューを正式に頼んだとき、
「今アメリカのフロリダにいるから、
11月中のインタビューは無理」
って1回断られましたよね(笑)。
赤川
ああ、そうでした。
山口
まさか連絡したその段階でフロリダにいたとは知らなかった。
もう本当にスケジュール合わなかったら、
私フロリダに飛ぼうと思っていました(笑)。
日本からフロリダまでの往復料金も調べたんですよ(笑)。
赤川
連絡をもらった、ちょうどその時に、
アメリカのフロリダで、
パワーリフティングの世界大会に参加していたんです。
結果は、自分の中では振るわなかったのですが・・・・。
山口
でも15位でしょう?
世界15位って、
私がその世界を知らないからかもしれませんが、
相当強いって思います。
赤川
世界の選手の中では、まだまだです。
山口
その辺りの話も伺いたいんですが、
その前に、まず質問したいことがあります!
赤川
なんですか?
山口
わたくし、赤川さんが筋肉を鍛えること、筋肉を見せることに、
ただならぬ情熱を注いでいると知っていたので、
今日のインタビューで撮る赤川さんの写真、
赤川さんも納得いくような、
素晴らしい筋肉の写真にしよう!と思って、
プロのカメラマンさんを手配していたんです。
赤川
待ってください、
筋肉を見せることには情熱を注いでいません(笑)。
鍛える方はあっていますけど。
山口
ところが、
『カメラマンは呼ばなくていいよ。君が撮るならいいけど』
って予想外に断られちゃって。
正直なところ、私、赤川さんの筋肉を、
最大限に美しく撮る自信がないですし、
そもそも写真が下手だから、
カメラマンさん呼びたかったんですけど・・・・。
赤川
それはですね。
山口
なんでですか?
赤川
私、今回負けたことによって、胃痛になりまして。
山口
胃痛。胃痛ですか。
赤川さんが胃痛って初めて聞きました。
胃、強い方ですよね。
赤川
そうなんですよ、人生初の胃痛ですよ(笑)。
山口
15位がこたえたんですか?
赤川
こたえましたね(笑)。
それで、世界大会が終わってから数週間ほど、
胃痛でおかゆ以外の食べ物が食べられず、
それで筋肉の張りが落ちてしまった・・・・。
こんな筋肉では、プロに撮影してもらうのが、
申し訳ないと思い断りました。
山口
ええ!?そういうものですか?
今日もあなたの筋肉は、
十分筋肉が筋肉していると思いますよ・・・・!
赤川
で、あともう一つは、
今回はフロリダから負けて帰ってきて、
自己ベストも更新できなかったので、
そんな体たらくでプロに撮ってもらうとか、
おこがましいと思いまして。
山口
おこがましい・・・・。
赤川
ええ。おこがましいかなぁと。
山口
赤川さんって、ストイックですよね。
私みたいに浮ついてないっていうか、
私だったら確実にそんなこと考えず、
「わぁプロが撮ってくれるなんてやったー!」
って撮影してもらっちゃいますもん(笑)。
赤川さんのそういうところ、好きです(笑)。
赤川
そうですか(笑)。
山口
昔からそんな感じでしたよね、
高校生の時、
赤川さんボートやってたじゃないですか。
赤川
やっていましたね(笑)。
山口
私その時に、ボートでオリンピックに出た人の、
テレビのキュメンタリーを見て、
高校生で感化されやすかったし、
ボートは頑張れば、
すぐオリンピックに出れるって勘違いして、
ボート部だった赤川さんを捕まえて(笑)。
赤川
ああ、なんか山口さん、
そんな感じでしたね(笑)。
山口
「ボートはすごいね、
頑張ればすぐオリンピックだよ、
赤川さんもオリンピックに出よう!」
みたいなことを言ったら、
「ボートを甘く考えてはいけないよ」
ってたいへんに叱られた記憶がある。
赤川
ボート、懐かしいですね(笑)。
良い結果は残せなかったんですが、
楽しかった。
山口
待って、結果は出していませんでしたか?
新聞に載ってたような記憶があります。
確か、県大会突破して、
インターハイで全国に出ていたような・・・・。
赤川
うーん、県大会は出ましたね。
インターハイも出ましたけど・・・・、
結果はそれほど出せませんでした。
そう、私がパワーリフティングを始めたのは、
そもそもボート部にいたからなんですよ。
山口
ボート部とパワーリフティングが繋がるんですね。
赤川
そうです。
基本的に私達の高校のボート部は、
信濃川で練習をするのですが、
新潟の冬は寒いので(※私たち2人は新潟出身です)、
冬場は室内練習が増えるんです。
山口
新潟はね、寒いですもんね・・・・。
信濃川でボート練習なんかしたら、
川の真ん中で凍死してしまうレベルで寒いです。
赤川
なので、室内で筋トレをしたりもします。
パワーリフティングの種目にある、
デッドリフト、スクワット、ベンチプレスも、
トレーニングメニューにありました。
それをやっているうちに、
私は、自分が瞬発力を使う筋肉の運動、
つまり筋トレや、
パワーリフティングのメニューが得意だ、
ということに、気が付きました。
山口
ボート部で自分の強みがわかったんですね。
赤川
そう、そこから筋トレに力を入れ始ました。
そのまま大人になり、
ジムで筋トレを続けていたところ、
あるパワーリフターに、
「君、良い筋肉しているね」と言われてスカウトされ、
パワーリフティングの世界に入りました。
山口
まさかのジムでスカウト!
そんなことあるんですね。
芸能スカウトみたいです(笑)。
赤川
実は結構あるらしいです。
山口
そうなんだ。面白い・・・・。
どうしてスカウトを受けたんですか?
赤川
元々、筋トレが好きだったことと、
長く続けられそうで、
面白そうだと思ったので。
山口
長く出来るんですか。
赤川
パワーリフティングで記録を出すには、
筋肉を鍛えることと、技術を磨くことが重要で、
その筋肉は、鍛えるという点では、
たとえ60、70代になっても、
鍛えれば成果が出るものですし、
技術は、年齢を重ねることで、
磨くことができる部分もありますから、
一般的なスポーツに比べて選手が長く活躍できるんです。
山口
筋肉って鍛えれば年齢が上がっても強くなるんですね。
知らなかった。
なんとなく年を取れば衰えていくというか、
鍛えても若い人ほど鍛えられないんじゃないか、
って思っていました。
赤川
年齢を重ねると、
筋肉の回復に時間がかかったり、関節が痛んだりするので、
その分休養を上手にとったり、ケアが必要な場合もありますが、
鍛えるという点では、年を取っていても、若くても、
関係なく筋肉は鍛えられます。
山口
そうなんですね。
赤川
だから、パワーリフティングは、
生涯スポーツとして、
人生の中で長く楽しむことができるんです。
山口
一生続けられるんですね。
しかも趣味レベルじゃなくて、
現役の選手としても。
赤川
そうなんです。
だから、この世界だと、
マスターズ(40代以上)の選手に、
20代、30代の若い選手が負ける、
なんてこともあるんですよ。

(第2回『1位のある世界、1位のない世界。』へ続きます。)

第2回 1位のある世界、1位のない世界。