- 山口
- 赤川智子選手、今日は宜しくお願いします。
- 赤川
- 宜しくお願いします。
- 山口
- 何だか緊張しますね(笑)。
- 赤川
- 変な感じがしますね(笑)。
- 山口
- なんだかんだで、私たち中学生の頃からの付き合いだから、
こんなかしこまったインタビューをするって、
何だか不思議な感じが・・・・。
- 赤川
- そうですね(笑)。
- 山口
- いつもはお互いあだ名で呼んでいるんですが、
本日は赤川さんと呼ばせて頂きます(笑)。
- 赤川
- 私も山口さんと呼びますね(笑)。
- 山口
- では、よろしくお願いします(笑)。
えー、赤川さんはパワーリフティングの選手なんですよね。
- 赤川
- ええ、パワーリフターと呼ばれますね。
- 山口
- パワーリフターですか。
私、赤川さんが社会人になったくらいから、
やけに筋肉の厚みが増して、
むきむきになったなって思っていましたが・・・・。
確か、女性用のTシャツが、肩の筋肉がありすぎて、
入らなくなった、なんてこともありましたよね。
パワーリフティングをやっていたとは知らなかった。
- 赤川
- まぁ、マイナースポーツですし。
- 山口
- マイナースポーツなんですか?
私、オリンピックでやっているの、
見たことがありますよ!
バーベルを、えい!って挙げる競技ですよね。
- 赤川
- いや、あれは近いけれど、
パワーリフティングとは別の競技です。
オリンピックにあるのは、
ウエイトリフティングという競技で、
有名なところでは三宅選手がいますね。
- 山口
- 同じバーベルを挙げているように見えますが、
やっぱり違うんでしょうか?
- 赤川
- オリンピック種目のウエイトリフティングという種目は、
バーベルを頭の上に挙げる競技なんです。
- 山口
- あ!確かに!
オリンピックのバーベルを上げていた選手は、
頭の上に、『はっ!』って挙げていました。
- 赤川
- パワーリフティングは、
バーベルを肩に担いで、しゃがんで立ち上がる『スクワット』、
ベンチ台の上に横になり、
バーベルを胸につけて上げる『ベンチプレス』、
床に置いてあるバーベルを引き上げる『デッドリフト』、
この3種目で上げたバーベルの総重量を競います。
- 山口
- ははぁ、わかりました、つまりあれですね、
水泳とかバイクとか組み合わせた、あのスポーツと一緒―――
- 赤川
- トライアスロンですね。
そうです、
バーベルのトライアスロンみたいな感じだと思えば・・・・。
山口さんはうまいことを言いますね(笑)。
- 山口
- ありがとうございます(笑)。
それにしても、今回のインタビューを正式に頼んだとき、
「今アメリカのフロリダにいるから、
11月中のインタビューは無理」
って1回断られましたよね(笑)。
- 赤川
- ああ、そうでした。
- 山口
- まさか連絡したその段階でフロリダにいたとは知らなかった。
もう本当にスケジュール合わなかったら、
私フロリダに飛ぼうと思っていました(笑)。
日本からフロリダまでの往復料金も調べたんですよ(笑)。
- 赤川
- 連絡をもらった、ちょうどその時に、
アメリカのフロリダで、
パワーリフティングの世界大会に参加していたんです。
結果は、自分の中では振るわなかったのですが・・・・。
- 山口
- でも15位でしょう?
世界15位って、
私がその世界を知らないからかもしれませんが、
相当強いって思います。
- 赤川
- 世界の選手の中では、まだまだです。
- 山口
- その辺りの話も伺いたいんですが、
その前に、まず質問したいことがあります!
- 赤川
- なんですか?
- 山口
- わたくし、赤川さんが筋肉を鍛えること、筋肉を見せることに、
ただならぬ情熱を注いでいると知っていたので、
今日のインタビューで撮る赤川さんの写真、
赤川さんも納得いくような、
素晴らしい筋肉の写真にしよう!と思って、
プロのカメラマンさんを手配していたんです。
- 赤川
- 待ってください、
筋肉を見せることには情熱を注いでいません(笑)。
鍛える方はあっていますけど。
- 山口
- ところが、
『カメラマンは呼ばなくていいよ。君が撮るならいいけど』
って予想外に断られちゃって。
正直なところ、私、赤川さんの筋肉を、
最大限に美しく撮る自信がないですし、
そもそも写真が下手だから、
カメラマンさん呼びたかったんですけど・・・・。
- 赤川
- それはですね。
- 山口
- なんでですか?
- 赤川
- 私、今回負けたことによって、胃痛になりまして。
- 山口
- 胃痛。胃痛ですか。
赤川さんが胃痛って初めて聞きました。
胃、強い方ですよね。
- 赤川
- そうなんですよ、人生初の胃痛ですよ(笑)。
- 山口
- 15位がこたえたんですか?
- 赤川
- こたえましたね(笑)。
それで、世界大会が終わってから数週間ほど、
胃痛でおかゆ以外の食べ物が食べられず、
それで筋肉の張りが落ちてしまった・・・・。
こんな筋肉では、プロに撮影してもらうのが、
申し訳ないと思い断りました。
- 山口
- ええ!?そういうものですか?
今日もあなたの筋肉は、
十分筋肉が筋肉していると思いますよ・・・・!
- 赤川
- で、あともう一つは、
今回はフロリダから負けて帰ってきて、
自己ベストも更新できなかったので、
そんな体たらくでプロに撮ってもらうとか、
おこがましいと思いまして。
- 山口
- おこがましい・・・・。
- 赤川
- ええ。おこがましいかなぁと。
- 山口
- 赤川さんって、ストイックですよね。
私みたいに浮ついてないっていうか、
私だったら確実にそんなこと考えず、
「わぁプロが撮ってくれるなんてやったー!」
って撮影してもらっちゃいますもん(笑)。
赤川さんのそういうところ、好きです(笑)。
- 赤川
- そうですか(笑)。
- 山口
- 昔からそんな感じでしたよね、
高校生の時、
赤川さんボートやってたじゃないですか。
- 赤川
- やっていましたね(笑)。
- 山口
- 私その時に、ボートでオリンピックに出た人の、
テレビのキュメンタリーを見て、
高校生で感化されやすかったし、
ボートは頑張れば、
すぐオリンピックに出れるって勘違いして、
ボート部だった赤川さんを捕まえて(笑)。
- 赤川
- ああ、なんか山口さん、
そんな感じでしたね(笑)。
- 山口
- 「ボートはすごいね、
頑張ればすぐオリンピックだよ、
赤川さんもオリンピックに出よう!」
みたいなことを言ったら、
「ボートを甘く考えてはいけないよ」
ってたいへんに叱られた記憶がある。
- 赤川
- ボート、懐かしいですね(笑)。
良い結果は残せなかったんですが、
楽しかった。
- 山口
- 待って、結果は出していませんでしたか?
新聞に載ってたような記憶があります。
確か、県大会突破して、
インターハイで全国に出ていたような・・・・。
- 赤川
- うーん、県大会は出ましたね。
インターハイも出ましたけど・・・・、
結果はそれほど出せませんでした。
そう、私がパワーリフティングを始めたのは、
そもそもボート部にいたからなんですよ。
- 山口
- ボート部とパワーリフティングが繋がるんですね。
- 赤川
- そうです。
基本的に私達の高校のボート部は、
信濃川で練習をするのですが、
新潟の冬は寒いので(※私たち2人は新潟出身です)、
冬場は室内練習が増えるんです。
- 山口
- 新潟はね、寒いですもんね・・・・。
信濃川でボート練習なんかしたら、
川の真ん中で凍死してしまうレベルで寒いです。
- 赤川
- なので、室内で筋トレをしたりもします。
パワーリフティングの種目にある、
デッドリフト、スクワット、ベンチプレスも、
トレーニングメニューにありました。
それをやっているうちに、
私は、自分が瞬発力を使う筋肉の運動、
つまり筋トレや、
パワーリフティングのメニューが得意だ、
ということに、気が付きました。
- 山口
- ボート部で自分の強みがわかったんですね。
- 赤川
- そう、そこから筋トレに力を入れ始ました。
そのまま大人になり、
ジムで筋トレを続けていたところ、
あるパワーリフターに、
「君、良い筋肉しているね」と言われてスカウトされ、
パワーリフティングの世界に入りました。
- 山口
- まさかのジムでスカウト!
そんなことあるんですね。
芸能スカウトみたいです(笑)。
- 赤川
- 実は結構あるらしいです。
- 山口
- そうなんだ。面白い・・・・。
どうしてスカウトを受けたんですか?
- 赤川
- 元々、筋トレが好きだったことと、
長く続けられそうで、
面白そうだと思ったので。
- 山口
- 長く出来るんですか。
- 赤川
- パワーリフティングで記録を出すには、
筋肉を鍛えることと、技術を磨くことが重要で、
その筋肉は、鍛えるという点では、
たとえ60、70代になっても、
鍛えれば成果が出るものですし、
技術は、年齢を重ねることで、
磨くことができる部分もありますから、
一般的なスポーツに比べて選手が長く活躍できるんです。
- 山口
- 筋肉って鍛えれば年齢が上がっても強くなるんですね。
知らなかった。
なんとなく年を取れば衰えていくというか、
鍛えても若い人ほど鍛えられないんじゃないか、
って思っていました。
- 赤川
- 年齢を重ねると、
筋肉の回復に時間がかかったり、関節が痛んだりするので、
その分休養を上手にとったり、ケアが必要な場合もありますが、
鍛えるという点では、年を取っていても、若くても、
関係なく筋肉は鍛えられます。
- 山口
- そうなんですね。
- 赤川
- だから、パワーリフティングは、
生涯スポーツとして、
人生の中で長く楽しむことができるんです。
- 山口
- 一生続けられるんですね。
しかも趣味レベルじゃなくて、
現役の選手としても。
- 赤川
- そうなんです。
だから、この世界だと、
マスターズ(40代以上)の選手に、
20代、30代の若い選手が負ける、
なんてこともあるんですよ。
(第2回『1位のある世界、1位のない世界。』へ続きます。)