- 山口
- パワーリフティングの世界大会に行って、
赤川さんにとって良かったことは、
大きく負けたことと、
世界レベルの筋肉を実感したことなんですね。
- 赤川
- そうです(笑)。
- 山口
- 世界レベルの筋肉(笑)。
- 赤川
- 山口さん、世界の筋肉は本当にすごかったんですよ!
もちろん日本のパワーリフターの筋肉もすごいんですが、
お尻と太ももの筋肉の厚み、
デッドリフトのときの、背筋の強さがすごい。
- 山口
- すごそう(笑)。
さすが筋肉命の赤川さんですな。
- 赤川
- 圧倒されたんですよ。
すごい筋肉に。
- 山口
- で、もう一つ良かったことが、
大きく負けたこと、なんですね。
- 赤川
- そうなんです。
私は本番で、自分が思っていたより、
上手くいかなかったんです。
得意のベンチプレスでも、
成功すると思っていた重量を失敗してしまったし。
- 山口
- それはきつい。
得意なことを失敗すると、
ほかの種目もがくっと成績が落ちませんか?
- 赤川
- それは大丈夫でした(笑)。
- 山口
- そのメンタルの強さ、尊敬します(笑)。
- 赤川
- でも、やはり自己ベストを更新できなかったし、
思ったような成績は出せませんでした。
大会後に、振り返って思いましたが、
このできない本番の成績が、
本当の自分の実力なんだと思いました。
- 山口
- それは良くわかります・・・・。
本番って、いつもの自分ができる力を100としたら、
良くて80くらいしか出ないことが多いですよね。
- 赤川
- ええ。
なので、本番でそのくらい下がると思って、
100の力を出したいなら、
普段の練習では120くらいまでやらなければいけない、
ということもわかりました。
今回の大会で特に思ったのは、
体重のコントロールが良くなかったなと。
- 山口
- 体重ですか?
- 赤川
- 私は、なかなか体重が落とせず、
直前に落とさざるを得なかったので、出力が減りました。
たった2kgくらいの体重の違いでも、
その2kgがかなり影響するから、
もっとペースを考えて減量しないといけないと思いましたね。
- 山口
- こんなことが!
っていうことが影響したりしますよね。
- 赤川
- 今まで私は、パワーリフティングで、
そんなに大きな失敗をしたことがなかったんです。
- 山口
- そうなんですね。
- 赤川
- 今までは日本で安定した結果を出していて、
でも、フロリダの世界大会では15位で、
自己ベストも出せなかったし、
自分にとっては、
初めての大きい挫折をしたなと感じました。
- 山口
- 挫折・・・・。
本当に好きなこと、一生懸命やったことでの、
大きい挫折は、苦しいですよね。
- 赤川
- 自分が、好きで一生懸命やったことが、
思ったように上手くいかないのは、
やっぱりつらいですね。
- 山口
- わかります。
そんなに好きじゃないことや、
一生懸命なことじゃなければ、
失敗しても、それほどつらくないのに、
好きなこと、一生懸命やったことで成果が出ないって、
すごく悔しいしつらいですよね。
- 赤川
- でも、私はこの結果で良かったと思います。
今回、フロリダの大会に行かなければ、
自分が世界の中でまだまだ、
ということは感じずにいたと思います。
- 山口
- 参加するのって、見ているのとは全然違いますよね。
中に入ってやってみて、
その中で「自分ってまだまだなんだ」
って思い知らされると、
切迫感がうまれるように思います。
- 赤川
- そうなんです。
負けたことで、
自分のトレーニング内容の何が悪かったのか、
今自分が何をやり尽くしていないのか、
次にどう行動しなきゃいけないのかが、
すごくクリアに見えました。
- 山口
- ああ、何かわかります。
挫折して、悔しくて苦しくて、
どうしてこうなったんだろうって考える時、
あやふやにしていた、自分の本当のステータスが、
良い所も悪い所もはっきり自分に示されるように思います。
そして、それを受け入れていかないと、次にいけない。
負けると、自分の真実が見えますよね。
- 赤川
- 日本で1位をとってから世界選手権にいこうと考えて、
フロリダに行かずにいたら、これは考えなかったことです。
とにかく今のままではだめだってことが分かったから、
これからの練習は、もっと違ったものになると思います。
色々振り返って、具体的に何をしていこう、
というのを考えようと思っています。
- 山口
- もう考えていましたよね。
インタビューの前に、
赤川さんの練習ノートを見せてもらいましたが、
毎日やった練習やその見直し、
週間と月間の目標とかも書いてありましたっけ。
- 赤川
- そうですね。
あとは大会の成績とか。
- 山口
- 本当に細かくつけていますよね。
こういうのを見ると、
物事って、いつも劇的にはよくならなくて、
こういう積み重ねで結果がついてくるんだろうなって思います。
いいな、練習ノート、私も作ろう・・・・。
- 赤川
- ぜひやってみて下さい(笑)。
- 山口
- うん、やってみます。
- 赤川
- あ、そうです、世界大会にいってよかったこと、
もう一つありました。
- 山口
- え、何ですか?
- 赤川
- 一緒に行った日本選手団の皆が、
すごく団結していて、
お互いに応援しあったりしていて。
自分のためだけじゃなくて、
皆のためにも勝ちたいっていう、
新しいモチベーションが増えましたね。
- 山口
- 皆のために?
- 赤川
- はい。
勝てば喜び合って、負ければ励まし合って、
フロリダでそういうことがあって、
日本のチームの中の自分、
というものを意識するようになりました。
- 山口
- それは素敵ですねぇ。
- 赤川
- パワーリフティングは個人競技なので、
日本でやっているときは、
チームの中の自分ということは感じませんでした。
フロリダの大会では、
日本の選手が勝って表彰台に上がると、
皆で喜びあったりして、そこで思ったのは、
自分は、一人で競技をやっているけれど、
でも大きな日本のチームの中の一人でもあるということ。
だから、もっと頑張って、
日本の記録を底上げしていこうと思えました。
- 山口
- 自分だけじゃなくて、
皆と共にあるっていう気持ちって、
すごくモチベーション上がりますよね。
- 赤川
- はい。だから、フロリダの世界大会に出て、
結果は出なかったけれど、
得たものはとても大きかったと思います。
あ、そうだ、それで山口さん、
お土産があるんです。
- 山口
- あ、すみません、お気遣いいただいて、
ありがとうございます。
- 赤川
- 普通のチョコとホワイトチョコどっちがいいですか?
- 山口
- ホワイトチョコがいいですね(笑)。
- 赤川
- じゃあこっちですね。
- 山口
- わー、ありがとうございます!
家で食べますね。
赤川さん、自分のお土産は買いましたか?
- 赤川
- 買いました(笑)。
戒めTシャツ。
- 山口
- い、戒めTシャツとは?
- 赤川
- 今回負けた悔しさを忘れないため、
自分を戒める思い出として買った、
お土産のTシャツです。
- 山口
- へー。
- 赤川
- 私の尊敬する選手が、成績が出せなくて悔しかった時、
その成績の出せなかった大会の場所でTシャツを買って、
悔しさを忘れないようにすると言っていてですね、
私もそれにならって、
今回の悔しさを忘れないために、
現地でTシャツを買ったんです。
- 山口
- 何だか面白いことしていますね(笑)。
いいなぁ、戒めTシャツ(笑)。
- 赤川
- 私が戒めTシャツを買ったのは、
これが初めてです(笑)。
- 山口
- じゃあ本当に初めての挫折だったんですね。
このTシャツがあったら、
悔しさをばねに頑張れそう(笑)。
- 赤川
- そうなんですよ(笑)。
- 山口
- いいですね(笑)。
私、また来年も、世界大会に出る赤川さんに、
インタビューしに行きます(笑)。
次の開催地は、チェコでしたよね?
- 赤川
- はい。
そうなるように頑張らないと。
- 山口
- きっとそうなりますよ。
その時は今度こそプロのカメラマンに来てもらって、
赤川さんの筋肉を撮影してもらいましょう(笑)。
- 赤川
- (笑)。
そのためにはまず、今日も練習です。
- 山口
- さっそく練習なんですね(笑)。
それじゃあ、インタビューはこれで終わりです。
今日はありがとうございました。
- 赤川
- こちらこそありがとうございました。
じゃあ、ジムに行きましょうか。
(これで赤川選手へのインタビューはおしまいです。
赤川選手へ、応援やメッセージを伝えたいという方、
ぜひ『感想を送る』から聞かせてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。)