- 山口
- 私は思うのですが、
赤川さんは、
いつも1位に大きな意味のある世界というか、
順位が明確にある世界に生きていますよね。
- 赤川
- 言われてみれば・・・・。
そうかもしれませんね。
- 山口
- ボート部もそうだし、パワーリフティングもそう。
赤川さんは学生の頃から今まで、
明確な基準で、1位とそれ以外がある世界、
1位にすごく意味のある世界に生きているのが、
私にとってはすごいなっていうのがあって。
- 赤川
- どうしてですか?
- 山口
- 1位に大きな意味のある世界って、
高校野球とか、柔道とか、スポーツ一般の世界、
そういうのが思い浮かぶのですけれど。
- 赤川
- ええ。
- 山口
- そういう絶対的なランク付けされる世界は、
順位があるからこそ、とても鮮やかで、
そこにしかない美しさがあって、
私が見る側に立った時には、すごく好きなんです。
- 赤川
- そうですね。
- 山口
- でも見る側じゃなくて、
やる側に立ったら・・・・。
私はそういうところで耐えきれるだろうかって思うし、
そこにいたいと思えるか、わからないところがある。
- 赤川
- ええ。
- 山口
- だから私は、ある一定のラインを超えれば、
誰でも意味付けされる世界、
そういう世界を選んできたのかもしれません。
- 赤川
- どういうことですか?
- 山口
- 私が学生の頃から今まで選んできた世界は、
多分、赤川さんが選んできた世界とは逆なんです。
- 赤川
- 逆、ですか。
- 山口
- そう、逆です。
音楽とか、文章を書くとか、
勉強とか朗読とかそういうもの。
一応順位らしきものが付くときもあるけれど、
1位じゃないから意味がない、わけではない。
- 赤川
- ああ、確かにそうですね。
山口さんはそういう方向だった気がします。
- 山口
- 私がいた世界は、
ざっくり言い過ぎかもしれませんけれど、
そもそも1位が何、
という基準もそれほど厳密ではないんですよね。
ある一定ラインから上であれば、
ある意味成り立つところです。
お金がもらえたり、評価されたり。
「2位じゃだめなんですか?」って言われた時に――
- 赤川
- 2位でもいい(笑)。
- 山口
- そうそう(笑)。
- 山口
- 赤川さんは、
「2位じゃだめなんですか」って言われたら、
- 赤川
- 2位じゃだめなんです(笑)。
それ、あれですよね、テレビに出てた人の(笑)。
- 山口
- 蓮舫さんですね(笑)。
「2位じゃだめなんですか?」っていう(笑)。
1番であることに、
すごく意味がある世界にいるっていうのは、
どんな風に感じられるものなのだろう、
と私は思うんです。
それが、いいとか悪いとか、
そういうことが言いたいんじゃなくて。
- 赤川
- 確かに私がいるところは、
1位じゃなければ意味がない、
という部分はあるかもしれません。
ただ、そういうところにいて、
私自身が、1位でなければ意味がない、
とは考えたことはないですね。
- 山口
- なんだか不思議です。
私だったら絶対そこは考えてしまうし、
突き詰めたら、
1位じゃなかったら、それをやる意味があるのか、
というところまで考えてしまいそうで。
- 赤川
- 私は、自分に何位という順位がついたとき、
それは現時点での結果としてまず受け入れます。
そして、次は自分の目の前にいる、
一つ上の順位の人を、
どうやったら自分が覆せるのか考えます。
- 山口
- 目の前の順位ですか。
例えば赤川さんが5位だったら、
4位の人をどうやって追い抜くか、
みたいなことであっていますか?
- 赤川
- そうです。
だから、山口さんのいうような、
1位じゃないのに、それをやる意味があるのか、
というようなことは、考えないんです。
- 山口
- リアリストだなぁ。
遠くの1位のことを考えるんじゃなくて、
まず近くの相手を追い抜くことを考えていくっていう。
- 赤川
- 1位のことを全く考えていないわけではないですけれど、
まず、自分の目の前の相手ですね。
- 山口
- うーむ、すごい。
そういう心構えがあって、記録を出してきたんですね。
- 赤川
- でも全日本2位でしたから、まだ上がいますし、
3位も肉薄しています。
それに世界だと15位、下から数えたほうが早いです。
- 山口
- この間のフロリダの世界大会には、
全日本で何位の人までが出場できるんですか?
- 赤川
- 出場できるのは、
全部の階級で1位の人だけですよ。
- 山口
- あれ、赤川さん2位ですよね?
- 赤川
- そうなんです。
実はまれに、
2位や3位でも世界大会へ行けることがあります。
- 山口
- ほほう、今回はそれですか。
- 赤川
- そうです。
1位だけで、世界大会の出場人数が規定に足りない場合、
2位以下からフォーミュラ値の合計が高い人から――
- 山口
- フォーミュラ値?
- 赤川
- えー、つまり全ての階級の点数をならして、
平均点が高い人から順番に、
1階級につき2人までですが、
空いた枠分、出場できるんです。
- 山口
- すごい、じゃあ赤川さん、
各階級の2位の中で、
成績良かったってことですよね。
- 赤川
- はい。
家の事情があったり、仕事の都合があったりで、
辞退する人もいますから、
一概に成績上位から順に出場できる、
ともいえない所もありますが・・・・。
ただ、私も辞退するかどうかは考えました。
- 山口
- すぐ行くって決めたわけじゃないんですね。
- 赤川
- はい。
私の全日本での成績は、2位でした。
でも記録で1位と大きな差があり、
世界大会に出ても、
覆すのは難しいだろうと思ったんですよね。
- 山口
- ああ、わかります。
- 赤川
- もうちょっと成績が肉薄していれば、
逆転できる場合もありますが・・・・。
- 山口
- ふむ。
- 赤川
- つまりは、
1位の人よりも上位に入れる可能性がほぼないのに、
行く意味があるのかということですよね。
時間も費用もかかるのに。
それに、
「全日本2位で世界大会に行っても、
上位には入れないのに、行く意味ないじゃないか」
というようなことを言う人もいる。
- 山口
- やっぱりそういうことを言う人、
どこにでもいるんですね。
- 赤川
- 私は、そのような声には、
耳を傾ける必要はないと思っています。
それを聞いていたら、
自分がやりたいことを何もできなくなりますし。
- 山口
- そうですね、
それは本当に同感です。
- 赤川
- ただ、私も、
「今は2位だし、世界にチャレンジするのは、
もっと実力をつけてからのほうがいいのでは」
と少しだけ迷いました。
- 山口
- そうだったんですね。
- 赤川
- でも、通っているジムの人が、
「順位は関係ない、いい経験になるから、
絶対に行ってきたほうがいい」
と背中を押してくれました。
私も行きたい気持ちでいるのだから、
これはやはり行こうと。
- 山口
- ジムの人いい人ですね(笑)。
好きだなぁ。
- 赤川
- で、結果、
本当に行って良かったと思いました。
ジムの人の後押しも本当にありがたかった。
- 山口
- それきいたら、
きっとジムの人嬉しいですね(笑)。
- 赤川
- そうですね(笑)。
- 山口
- アメリカの世界大会に行って、
赤川さんは、何が良かったって思いますか?
- 赤川
- そうですね、良かったと思うのは、
大きく負けたな、と感じられたこと。
全体で15位、下から数えて3番目だったんですけれど、
自分は世界からみると、
まだこのレベルなんだなということが分かりました。
あとは、世界レベルの筋肉はすごい、
ということを実感したことですね(笑)。
(第3回『負けから見える自分は、クリア。』へ続きます。)