- 私
-
今回、どんな気持ちでお店をやられているとか、
店長さんにお話をお聞きしたいと思いました。
どの野菜も信じられないくらい、安くておいしくて。
- 牛島さん
-
でしょ!
でも安く売ってるつもりはなくて。
ただお客さんにとって本当に
「買いやすい値段」で売っているだけで。
売れないものに、売れない値段をつけないだけ。
それよりもうちは、「もの」で勝負しています。
- 私
- 値段じゃなくて、「もの」。
- 牛島さん
-
はい、そうです。
果物はそのなかでも、かなりこだわっています。
- 私
-
たしかに、シマノさんで買うくだものは、
はずれがないです。
どれも甘くておいしい。
- 牛島さん
-
八百屋のなかには「野菜は在庫を残して当たり前」って
考え方をする店もすごく多いんです。
青果市場で安く買えるときに買って、
ずーっと売っていこうと考えると、
そうなっちゃうんです。
- 私
- そういうお店もあるんですね。
- 牛島さん
-
うん。
でも「残して当たり前」っていうのは、
俺の考えとはちがうんですね。
俺は店の野菜が古いな、悪いなって思うと、
すぐ返品したり、見切り品にしちゃいます。
お客さんには絶対に、
「おいしくて新鮮な野菜」でこたえたい。
もう本当に、鮮度だけ考えているんです。
だましだまし売って、お客さんを裏切りたくない。
普通に良いものを、おいしいものを、
買いたいってひとだけに売りたい。
ただそれだけです。
- 私
-
それがお客さんにも、
すごく伝わっている気がするんです。
- 牛島さん
-
最初は全然わからなかったけど、
最近は「お客さんにも伝わっているな」とは、
思いますね。
というのも、俺も、
お客さんがほしいものが
だんだんわかってきたんです。
お客さんから「これ、おいしかったよ」って
言われたものを仕入れるようにしていて。
どんなマイナーな野菜でも、
「あの野菜があってよかった」ってお客さんから言われると、
「じゃまた明日持ってくるよ」って、
その野菜を翌日ちゃんと仕入れたり。
- 私
-
それはお客さんの立場からすると、
すごくうれしいですよね。
- 牛島さん
-
仕入れた結局、そのお客さんが
やっぱり買わないってこともあるんですけどね(笑)
でも、それは仕方ないかなって。
たとえそこで原価以下になったとしても。
毎日お客さんとそういうやりとりをするのって、
こっちも楽しいじゃないですか。
お客さんがほしいものが見つかれば、うれしいし。
- 私
- 売れ残ったら、どうしているんですか?
- 牛島さん
- 売れ残らないです。(きっぱり)
- 私
- おお、売れ残らない!
- 牛島さん
-
もう本当にきれいになくなります。
ジャガイモとかたまねぎとかは、
休みをはさんで月曜日まで、
保存しておくこともありますけど。
葉物とかはその日のうちにきれいに売り切れます。
- 私
-
先週の土曜、新鮮な小松菜が
10円だったのは大ニュースでした。
- 牛島さん
-
やっちゃいますね。
日曜が休みなので、土曜の夕方はとくに。
月曜まで野菜を残しておくと鮮度が心配なので。
結局、野菜を残しておいても、
月曜にまた見切り品として売らなきゃいけなくなるんです。
そのとき古くなった野菜を売るよりは、
まだ新鮮でお客さんが喜んでくれるうちに
安く売っちゃうほうがいいでしょ?
まあ、いくらだっていいんですよ。
1円だって、5円だって。
- 私
-
値下げの判断は、
いつもその瞬間にしているんですか?
- 牛島さん
-
安くしたとして、全体で採算が合うか、
いくら安くすればいいかっていうのは、
瞬間的に決めます。
在庫の状況と、1日の流れを判断しながら。
- 私
-
すごい。
頭のなかですでに、
計算ができあがっているんですね。
- 牛島さん
-
はい。
たとえば土曜の午前中に雨が降ると、
「やばいな」と思ったりするんですけど。
でも雨降っても来てくれたお客さんにも、
楽しんでもらわなくちゃいけないんで。
- 私
-
楽しませるといえば、
以前並んでいるとき700円もするオレンジを
試食させていただいたことがありました。
- 牛島さん
-
ああ。
あれは甘平(かんぺい)という愛媛のみかんですね。
- 私
-
あのおいしさが、忘れられません。
値段を知ってさらに驚きました。
- 牛島さん
-
あまりにもたくさんお客さんが並んでいると、
ぜったい自分を見るじゃないですか。
視線がこわいんですよ(笑)
「何をしたら面白いかな」と思ってあげました。
シャインマスカットとかも、食べさせたりするんです。
- 私
-
お客さんを、楽しませてくれていたんですね(笑)
卵99円とか、牛乳99円の日があるのも驚きで。
毎日うれしいニュースがあるので、
つい寄ってみたくなります。
- 牛島さん
-
あれは常連さんへのおまけですね。
たくさん買ってくれるお客さんにサービスしたいので、
700円以上買った人は、
牛乳や卵が安く買えるっていう設定をしています。
- 私
-
ただ安くして関心を引くのが目的ではなく、
「常連さんをだいじにしたい」という
思いがあるからなんですね。
- 牛島さん
-
そうなんですよ。
本当は無駄なんです、ただ単品を安くしたって。
うちで何度も買ってくれるお客さんに
得してほしいじゃないですか。
(つづきます)