もくじ
第1回ピアスの店員さんに声をかけてみた 2017-04-18-Tue
第2回「鮮度は、お客さんとの約束です」 2017-04-18-Tue
第3回「明け方まで、チラシ2000枚配りました」 2017-04-18-Tue
第4回「八百屋は仕事場じゃなくて、家です」 2017-04-18-Tue
第5回一生懸命なひとが好きなのだ 2017-04-18-Tue

コピーライターです。

行列のできる八百屋さん

行列のできる八百屋さん

担当・小森谷 友美

第2回 「鮮度は、お客さんとの約束です」

今回、どんな気持ちでお店をやられているとか、
店長さんにお話をお聞きしたいと思いました。
どの野菜も信じられないくらい、安くておいしくて。
牛島さん
でしょ!
でも安く売ってるつもりはなくて。
ただお客さんにとって本当に
「買いやすい値段」で売っているだけで。
売れないものに、売れない値段をつけないだけ。
それよりもうちは、「もの」で勝負しています。

値段じゃなくて、「もの」。
牛島さん
はい、そうです。
果物はそのなかでも、かなりこだわっています。
たしかに、シマノさんで買うくだものは、
はずれがないです。
どれも甘くておいしい。
牛島さん
八百屋のなかには「野菜は在庫を残して当たり前」って
考え方をする店もすごく多いんです。
青果市場で安く買えるときに買って、
ずーっと売っていこうと考えると、
そうなっちゃうんです。
そういうお店もあるんですね。
牛島さん
うん。
でも「残して当たり前」っていうのは、
俺の考えとはちがうんですね。
俺は店の野菜が古いな、悪いなって思うと、
すぐ返品したり、見切り品にしちゃいます。
 
お客さんには絶対に、
「おいしくて新鮮な野菜」でこたえたい。
もう本当に、鮮度だけ考えているんです。
だましだまし売って、お客さんを裏切りたくない。
普通に良いものを、おいしいものを、
買いたいってひとだけに売りたい。
ただそれだけです。

それがお客さんにも、
すごく伝わっている気がするんです。
牛島さん
最初は全然わからなかったけど、
最近は「お客さんにも伝わっているな」とは、
思いますね。
 
というのも、俺も、
お客さんがほしいものが
だんだんわかってきたんです。
 
お客さんから「これ、おいしかったよ」って
言われたものを仕入れるようにしていて。
どんなマイナーな野菜でも、
「あの野菜があってよかった」ってお客さんから言われると、
「じゃまた明日持ってくるよ」って、
その野菜を翌日ちゃんと仕入れたり。

それはお客さんの立場からすると、
すごくうれしいですよね。
牛島さん
仕入れた結局、そのお客さんが
やっぱり買わないってこともあるんですけどね(笑)
でも、それは仕方ないかなって。
たとえそこで原価以下になったとしても。
毎日お客さんとそういうやりとりをするのって、
こっちも楽しいじゃないですか。
お客さんがほしいものが見つかれば、うれしいし。
売れ残ったら、どうしているんですか?
牛島さん
売れ残らないです。(きっぱり)
おお、売れ残らない!
牛島さん
もう本当にきれいになくなります。
ジャガイモとかたまねぎとかは、
休みをはさんで月曜日まで、
保存しておくこともありますけど。
葉物とかはその日のうちにきれいに売り切れます。

先週の土曜、新鮮な小松菜が
10円だったのは大ニュースでした。
牛島さん
やっちゃいますね。
日曜が休みなので、土曜の夕方はとくに。
月曜まで野菜を残しておくと鮮度が心配なので。
結局、野菜を残しておいても、
月曜にまた見切り品として売らなきゃいけなくなるんです。
そのとき古くなった野菜を売るよりは、
まだ新鮮でお客さんが喜んでくれるうちに
安く売っちゃうほうがいいでしょ?
まあ、いくらだっていいんですよ。
1円だって、5円だって。

値下げの判断は、
いつもその瞬間にしているんですか?
牛島さん
安くしたとして、全体で採算が合うか、
いくら安くすればいいかっていうのは、
瞬間的に決めます。
在庫の状況と、1日の流れを判断しながら。
すごい。
頭のなかですでに、
計算ができあがっているんですね。
牛島さん
はい。
たとえば土曜の午前中に雨が降ると、
「やばいな」と思ったりするんですけど。
でも雨降っても来てくれたお客さんにも、
楽しんでもらわなくちゃいけないんで。
楽しませるといえば、
以前並んでいるとき700円もするオレンジを
試食させていただいたことがありました。
牛島さん
ああ。
あれは甘平(かんぺい)という愛媛のみかんですね。
あのおいしさが、忘れられません。
値段を知ってさらに驚きました。
牛島さん
あまりにもたくさんお客さんが並んでいると、
ぜったい自分を見るじゃないですか。
視線がこわいんですよ(笑)
 
「何をしたら面白いかな」と思ってあげました。
シャインマスカットとかも、食べさせたりするんです。
お客さんを、楽しませてくれていたんですね(笑)
卵99円とか、牛乳99円の日があるのも驚きで。
毎日うれしいニュースがあるので、
つい寄ってみたくなります。
牛島さん
あれは常連さんへのおまけですね。
たくさん買ってくれるお客さんにサービスしたいので、
700円以上買った人は、
牛乳や卵が安く買えるっていう設定をしています。
ただ安くして関心を引くのが目的ではなく、
「常連さんをだいじにしたい」という
思いがあるからなんですね。
牛島さん
そうなんですよ。
本当は無駄なんです、ただ単品を安くしたって。
うちで何度も買ってくれるお客さんに
得してほしいじゃないですか。

(つづきます)

第3回 「明け方まで、チラシ2000枚配りました」