- 私
- いつから八百屋の仕事をはじめたんですか?
- 牛島さん
-
もう10年前。
高校生でバイトからはじめました。
- 私
- 10年前ということは今は‥
- 牛島さん
- 26歳です。
- 私
-
(驚愕)
そんなにお若いんですね。
- 牛島さん
-
あはは、よく言われます(笑)
南平(みなみだいら)のほうにもお店があって、
最初はそっちのバイトからはじめました。
それで次は、南平店の店長をやって。
- 私
-
南平店の前をよく車で通るんですが、
いつも大盛況ですよね。
- 牛島さん
-
今はそうですね。
でも俺が店長になる前は、
ぜんぜんお客さんがいませんでした。
若かったから、お客さんから
「あんたが店長?」とか言われて全然信用されなくて。
辞めるときになって、
「店長さんだったの?」とか聞かれたりして(笑)
- 私
- (笑)
- 牛島さん
-
今でもたまに南平店に顔を出すことがあるんですが、
「なんであんた帰ってこないのよ!」とか、
お客さんに言われたりします。
- 私
-
お客さんにすごく気に入られていたのですね!
南平店ではお客さんを集めるために、
どんなことを?
- 牛島さん
-
お客さんが全然来なかったので、
土曜日の仕事がおわってから、
明け方の4時くらいまでチラシ配っていました。
2000枚くらい、毎週ひとりでずっと。
「やっべぇ、日昇ってきた!」みたいな(笑)
もう値段で売るしかないなと思って、
チラシには値段をわかりやすく書いて。
人集まらないから、仕方ないですよね。
- 私
-
ひとりで毎週2000枚ものチラシを
配ったのですね!
- 牛島さん
-
そういうことやって頑張っていたから、
いまも店が続いて、
行列ができたりするんだろうと思います。
それくらいかな、努力したのは。ははは(笑)
でも、いままで誰もやってこなかったことだからね。
- 私
-
お客さんを集めるために、
ほかにも工夫したことはありますか?
- 牛島さん
-
あとは、あれだな、レシピ。
旬の野菜をつかった料理のレシピを、壁一面に貼りました。
お客さんに野菜を使って料理してもらおうって、
ネットで調べてレシピを書いて(笑)
- 私
- へえ!
- 牛島さん
-
料理の写真が載った冊子をつくって。
八百屋の壁が、地元の中華料理店みたいに
たくさんの料理の写真でいっぱいになりました。
- 私
-
たしかに八百屋さんで今夜のおかずを決めるときに、
レシピが手元にあると助かります。
- 牛島さん
-
好きなレシピは持って帰れるようにして。
お客さんの奥さんたち、
けっこうそのレシピを取ってくれましたね。
俺が売り上げをつくるために絞り出した策は、
これくらいかなあ。
- 私
-
売り上げをつくるために、チラシを配ったり、
レシピを貼るアイデアを実行したり、
なかなか真似できません。
- 牛島さん
-
いやいや。
ただ「売りたい」って気持ちだけなんです。
いま、新しく青果を扱う企業もあります。
でもあまりうまく行かないことが多いのは、
「売りたい気持ち」が、
不足しているからだと思っています。
ただ棚に野菜が置いてあるだけ、
になってしまっているんです。
- 私
- ただ棚に、野菜が置いてあるだけ。
- 牛島さん
-
うん。
だから生半可な気持ちで八百屋をはじめるのは
やめたほうが良いと、個人的には思っています。
「売ろう」という気持ちも、野菜の知識もなかったら、
けっきょくは野菜をむだにしちゃうから。
よく野菜が売れるスーパーとか八百屋は、
やっぱり店員が「売ろう」という気があるんです。
売りたい気持ちがあるから、
売れるんだと思うんですよね。
(つづきます)