もくじ
第1回違う価値観との向き合い方。 2017-05-16-Tue
第2回反対意見の、本音と建前。 2017-05-16-Tue
第3回体に悪いものには、お金を使いたくない。 2017-05-16-Tue
第4回家族は同じものを食べるべきか。 2017-05-16-Tue
第5回知ることは、怖くない。 2017-05-16-Tue

毎日、3歳になる息子から「おはよう、へびつかい~」
「ごはんだよ、へびつかい~」といわれてます。
ぼくがへびつかいシルバーで、彼がてんびんゴールド。
おかげさまで、パパのときよりも、息子と心が通じ合ってます。

なぜ彼女は「肉」を</br>食べようとしないのか?

なぜ彼女は「肉」を
食べようとしないのか?

第3回 体に悪いものには、お金を使いたくない。

──
今日はわざわざ時間、ありがとね。
K(妻)
ほぼ日の課題だっけ? ホント、私のおかげだね。

──
ええ、まあ(苦笑)。で、この前、
Kと「肉断ち」のことでケンカになったでしょ。
あれについて、ちゃんと話し合いたいなって。
うん、いいよ。
──
いま、Kがどんなことを考えていて、
どういう理由から「肉断ち」をしようとしているのか。
そういうことを正直に話してほしいなと。
K
‥‥というと?
──
えっと、まず、
なんで急に「肉断ち」をはじめようと思ったの?
やっぱ、あのドキュメンタリーをみたから?
K
それだけじゃないけど。というか、みた?
──
みたみた。
でも、「なんでいまさら?」とは思ったけど。
なんていうか、私、これまでにも4回くらい、
肉を食べない時期ってのがあって。
──
え、そうだったの!?
K
いちばん最初は、家族でアメリカに住んでたとき。
ニュージャージー州の田舎だったから、
お魚とかあんまりないから、
ホントに毎日、牛肉ばっかり。
それで、ぷっつりとお肉が食べれなくなって。
──
それっていくつのとき?
K
小4から中1ぐらいまで。
小6のときに日本に帰ってきたけど、
給食のお肉が食べれなくて、
いっつも教室に居残りさせられてた。
──
ああ、昔の学校ってそうだよね。
K
でも、日本のごはんってやっぱりおいしいでしょ。
だから、お肉も少しずつ食べられるようになって、
という感じ。

──
そうなんだぁ。
アメリカでそんなに肉が嫌いになったの?
K
だって毎日だもん。
豚肉とかもさ、日本なら薄切り肉とかあるけど、
アメリカだとコリアンタウンとかに行かないと、
ああいうスライス肉ってないから。
──
でも、せっかく食べれるようになったのに、
そのあとなんで日本でも「肉断ち」を?
K
大学生のときは、急にお肌がすごく荒れだして、
それでいろいろ理由を考えたら「あ、お肉かも」って。
それで1年ぐらい肉断ちしてた気がする。
でも、気づいたらまた食べてたけど。
──
へぇ、そうなんだ。
K
だから、私にとって肉断ちって、
そんなに特別なことじゃないっていうか。
──
じゃ、今回の理由は? やっぱ映画をみて?
K
それだけじゃないけど。
──
というと?
K
なんていうか、私、いま専業主婦でしょ。
──
うん。
K
要するにいま、
自分でお金を稼いでないわけじゃん。
──
まあ、いまはね。子供のこともあるし。
K
で、お金を稼いでないと、
これまでよりも「消費」に
すごく敏感になるっていうか。
──
消費に?
K
最近、シャンプーとか洗剤とか、
前と違うやつに替えたでしょ?
──
ああ、無添加のやつね。
変な薬品が入ってないっていう。
あのシャンプー、肌にはいいんだろうけど、
髪はすんごいキシキシになるよね。
K
そうだね(笑)。
──
それは別にいいんだけど。でも、
なんであんなにキシキシになるシャンプーにしたのか、
それもすごく不思議だった。
K
なんていうか、
自分の家族や自分の体に良くないもの、
それにお金を使いたくないなって。
──
ああ。
K
薬局とかに行くとさ、
シャンプーとかって、いっぱいあるじゃん。
だから毎回、買い物のときにメモしてたのね。
これはいくらで、使い勝手はどうとか。
──
意外と真面目(笑)。
K
というか、何かを買うときに、
自分が納得できる選択基準が欲しかったっていうか。
──
メモしてたのは、洗剤とかシャンプーとか?
K
いやいや、全部。調味料や日用品も。
だって、これから定期的に買うわけだからさ、
自分の中に選択基準がないと、
買い物のたびに迷うことになると思って。

──
たしかに。毎回、悩むのって面倒だもんね。
K
面倒だし、自分が納得いかないものに
お金を使いたくない。
──
まあ、そうだよね。
K
そういう流れの中で、食べものに関しても
「体に悪いものは買いたくない」って思うようになって。
ごはんって毎日のことでしょ。
悪いものを使ってると、
ちょっとずつ家族が不健康になる気がして。
──
それは一理あるかも。
K
でも、体にいいものにすれば
家族も健康になるわけだし。
そうやって考えると、
もっと食べものに気をつかおうって。
──
その考えはすごくわかる。
わかるけど、それでなぜ肉断ちに?
K
私はそんなにお肉を食べるほうじゃないから、
肉断ちにまったく抵抗がなくて。
本当は野菜だけでもいいんだけど、
家族にそれを強要するのは、
ちょっと違うかなって。
だから、肉を少なめにして野菜を多めにしてるだけ。
肉を出さないとか、肉がダメとか、
ひと言もいってないから。
──
それはそうなんだけど、
俺としてはみんなで同じものが食べたいっていうか。
だって、この前ケンカしたときも、
ひとりだけ違うもの食べてたでしょ。
そういうのって、
家族なのに、なんかやだなぁって。
K
基本は同じ料理を食べてるよ。
肉と野菜で炒めものをつくって、
私は野菜のところだけを食べる、みたいな。
でも、あの日はハンバーグだったから、
そうなると私、食べるものがなくて、
それで私の分のお刺身を、
ちょっと買っただけっていうか。
──
まあ、言いたいことはわかるんだけど‥‥。
K
あと、肉断ちをはじめた理由が
もうひとつあって。
──
なに?
K
ドキュメンタリーの最後のほうにあったけど、
「ひとりひとりの行動や消費が世界を変える」っていう話。
あれに関していえば、「その通りだなぁ」って。
──
ああ、あった。食肉の大量生産の話とか、
環境問題とかの話でしょ。ということは、
Kは肉断ちをすることで、世界はもっと良くなると?
K
そうそう。ひとりひとりの意識が変われば、
世界は良くなると思う。
──
否定はしないけど、でも、
それって理想論っていうか‥‥。
K
だって、マイケルの曲にあるじゃん。
『Man in the Mirror(マン・イン・ザ・ミラー)』。
私、あの歌がすごく好き。
──
え、マイケル? ジャクソン?
えっと‥‥どんな曲だっけ?
K
えっと、ちょっと待ってよ。
(Youtubeでマイケルの曲を検索、2人で視聴する)
サビ♪
I’m starting with the man in the mirror
(鏡の中のその男と一緒に始めよう )
I’m asking him to change his ways
(どうしたら変えられるか、彼に聞いてみよう)
And no message could have been any clearer
(これほど単純明快なメッセージはない)
If you wanna make the world a better place
(もし、世界を少しでも良くしたいと願うなら)
Take a look at yourself and then make a change
(まずは自分自身を見つめ、そして変えていくだけさ)
──
(曲を聴き終えて)ああ、いい曲だね。
「世界を変えたかったら、自分から変わろう」って、
そういうメッセージなわけだ。
K
さっきの消費の話に戻るけど、
買い物って選挙といっしょっていうか、
私は、お金もうけだけの会社には投票しないし、
応援しようとは思わない。
消費っていう、そういう些細なことからでも、
世界は変えられるっていうか。
別にそんな立派な話とかじゃなくて。

──
でも、もともとそれほど肉を消費してないうちらが、
肉を食べなくなったところで、
それって意味があるのかな?
K
そんなの知らないよ。でも、
自分が変わらないと世界は変わらないっていうのは、
やっぱり真実のような気はするけど。
──
大量消費の話とか環境問題のことって、
人間のシステムの話でしょ。
理想と現実は、やっぱあるっていうか。
K
何ができるのって言われたら、
何もできないかもしれないよ。でも
「じゃあ、その中で唯一できることは?」
っていう話だから。
そのあとのことは、ちょっとよくわからないけど。
っていうか、それこそ、うちらが犬を保護したのも、
そういうことだったわけだし。
──
ああ、たしかに‥‥。

(つづきます)

第4回 家族は同じものを食べるべきか。