- K
-
犬1匹だけじゃ、状況はなにも変わらないけど、
それでも保護しようって。
まずは自分たちができることをしようって。
- ──
- まあ、たしかに、そうだったかも‥‥。
- K
-
まずはできることから、
でいいんじゃない?
- ──
- たしかに、あのときはね。
- K
- でしょ?
- ──
-
でも、それは命を救うっていう
話でもあったから。
環境問題とはちょっと違う気もするけど。
- K
-
そう? 意思表明をするってことでは、
同じだと思うけど。
- ──
-
いま、Kって肉を食べることには
否定的なの?
- K
- 自分が?
- ──
- そう、自分が。
- K
-
いまは、まったく食べようとは思わないけど、
食べたくなったら、また食べると思う。
これまでもそんな感じだったし。
- ──
-
聞いてて思ったのは、
肉の話って育ってきた環境もあるけど、
男女によっても多少違うのかなって。
差別的なことじゃなくて。
- K
- 好きか、嫌いかってことに?
- ──
-
俺、兄と2人兄弟でしょ、
そういう家庭だと、小さいときから
「とんかつひと切れで、ごはん何杯食べれるか」
とか、そういうこと考えるのね。
- K
-
え、とんかつ?
あ、うん。よくわかんないけど‥‥。
- ──
-
だから、食卓に肉があると
気持ちが昂るっていうか。
- K
- へぇ。
- ──
-
親に「今日のごはんは?」って聞いて
「野菜炒め」ってなったら、
ちょっとガッカリするけど、
「今日はとんかつだよ」っていわれたら、
「ごはん、いっぱい炊いてね!」ってなるのね。
女子の家って、そういうのがなさそうだなって。
- K
-
えっと‥‥うん。
いまのはない。他の子はわかんないけど。
- ──
-
そういう思いの深さみたいなのがあるから、
肉のない日が続くだけで、
けっこうイラッとしたりするのよ。
「チェッ、また今日も肉じゃない」みたいな。
- K
- ふーん。そうなんだ。
- ──
-
だって、男子学生とかが
「焼き肉食べ放題」って聞いて
「うおぉー!」とはなるけど、
「焼き魚食べ放題」って聞いても
「うおぉー! 」とはならないもん。
- K
- それはなんとなくわかる。
- ──
- すごくステレオタイプな発想だけど。
- K
-
でもさ、お肉料理、出してるからね、
まったく出てないわけじゃないから。
それでも不満なの?
- ──
- でも、Kは食べないでしょ、肉。
- K
-
食べるかもしれないし、
食べないかもしれないし。
それは別に大した話じゃないと思うけど。
- ──
-
でも、俺としては、
このままKがベジタリアンになったらどうしよう、
という心配もあったりする。
- K
-
なれるものならなりたいけど、
たぶん無理だと思う。
いままで何回も肉断ちしてるけど、
結局は食べてるからね。
- ──
-
あと、もうひとつ。もし子供が
「ママ、なんで好き嫌いしてるの?」
ってなったらどうする?
「ママがお肉食べないなら、
ぼくもニンジン食べない」とかさ。
- K
-
そうなったら、そのたびに子供と話し合いだよね。
なんでママはお肉を控えているかとか、
これはどういう野菜なのかとか、
根気よく伝えるしかない気がする。
- ──
- でも、まだ3歳だからね。
- K
-
でも、だからこそってのもあるよ。
うちの実家って、
食に関してはけっこう無頓着なのね。
だから、たまに親に
「もっと健康なものを食べないと」っていっても、
あんまり相手にしてくれないところがあって。
- ──
- これまでの食習慣もあるからね。
- K
-
でも、それってこれまで
「体にいい食事とは?」とかについて、
そこまで深く考えてこなかったからだと思うのね。
そういう意味では小さい頃から、
そういうことを考えるのって、
けっこう大事な気がする。
- ──
-
うちらもだけど、
家庭の影響は大きいかもね。
- K
-
そうそう。
私だってアメリカでの生活がなかったら、
肉断ちしてなかったかもだし。
- ──
- ああ、そうかぁ。
- K
-
これだけ世界中にモノがあって、
しかも、まわりは広告だらけでしょ。
ちょっとしつこいぐらい考えないと、
なかなか自己防衛はできないよね。
- ──
-
あと、最後にもうひとつ。
この前のケンカのとき、
なんであんなに怒ったのかなって、
キレたポイントが知りたいというか。
- K
-
だって、本当はお肉にも触りたくもないのに、
それでも、みんなのためを思ってハンバーグつくったんだよ。
それで、ちょっとお刺身食べただけ怒られて。
もういったい、なんなんだと、
そりゃ、キレるでしょ。
- ──
-
だって、家族みんなでテーブル囲んでるのに、
それぞれ違うもの食べてるって、
なんか寂しいじゃん。
みんなでワイワイ感想を言いながら食べたいのに。
- K
-
そりゃ、あからさまに違ったらね。
というか、大げさすぎだと思うけどね。
- ──
-
こっちとしては、それをちょっとでも許したら、
もっとエスカレートしそうな気がして‥‥。
- K
-
というか、
その感情の原因、あれだと思う。
- ──
- あれ?
- K
-
子供のとき、
けっこう大変な病気だったでしょ?
- ──
-
俺のこと?
うん、まあ、そうだね。
- K
-
食事制限がけっこう厳しくて、
家族の中で自分だけ違うもの食べてたって話、
ときどき会話で出てくるじゃん。
- ──
- ああ、病気のときね。
- K
- そのときのトラウマがあるとか。
- ──
- トラウマ?
- K
-
だって普通、ここまでこだわらないもん、
「家族みんなで同じものが食べたい」なんて。
だって、私がお肉を食べないだけで、
みんなの食生活は変わってないわけだし。
普通の人なら「あ、そう」で終わる話だもん。
- ──
- まあ、たしかに‥‥。
- K
-
「家族みんなで同じものを食べるべし!」
っていう、そのこだわり、
昔のそういう経験が関係してたりして。
- ──
- うーん、どうなんだろ‥‥。
(つづきます。次は最終回です!)