- 糸井
- ミスター手土産、いらっしゃいました。
- 田中
-
今日は、2年連続でモンドセレクション金賞を受賞した、
大阪キャラメルプリンケーキを。
- 糸井
-
いつもありがとうございます。
僕の中では、
「手土産研究家の田中さん」だと認識しています。
- 田中
-
いやいや(笑)。
僕には、手土産をもらってうれしかった経験が、
すごく大きくて。
自分が持っていくものは、だいたいつまんないんですけど。
でも「つまんないものです」って手土産を渡すのは、
すごいいいコミュニケーションだと思っています。
- 糸井
- うん、うん。
- 田中
-
昔、田村正和さんに、喜んでもらえるだろうと思って、
田村さんがテレビドラマの中で乗っていた車のミニカーを、
「つまんないものですけど」って言って渡したんですね。
そうしたら田村さんがそれを見て、
「本当につまらないね」って(笑)。あの口調で。
- 糸井
- へえ(笑)。
- 田中
-
そんなこと言いながら、
ミニカーをかばんにしまったんですよ、
楽屋に置いていかないで。
だから、すごく、いいなぁと思って。
- 糸井
-
今だから言える秘密が、僕らの間に1つあって。
あれ、言っていいですかね。お花見問題。
- 田中
- はい。大問題ですね。
- 糸井
-
田中さんは、電通関西支社の、
梁山泊みたいな部署にいらして。
- 田中
-
東京のカッコいい広告に対して、
とにかくカウンターパンチを食らわせようと、
どんどんおかしな人が集まったような部署で。
京都や大阪の関西のノリで、
本当、梁山泊みたいな集団になってしまって。
その部署の親玉である堀井博次さんと、
糸井さんがもともと繋がっていて。
その久しぶりの再会が、あのお花見だったんですよね。
- 糸井
-
お花見の席に、大集団で、
圧の強い人たちがいるわけで(笑)。
- 糸井
-
田中さんと僕は、初対面で、
京都駅で待ち合わせをしたんですが。
その時も田中さんは、複数の紙袋を下げていて。
- 田中
- (笑)
- 糸井
-
1つの紙袋は、大きなつづらみたいに、軽くて大きい。
「糸井さんにお渡しするものなんですが、
つまらないものですが、荷物になるので、
これはそのまま僕が帰りまで持っています」
って田中さんはおっしゃる。
渡さないっていうのにも、
知恵を使っているわけです。
もう1つ、重いものを持っているんです。
それは、一升瓶なんですね。
「うちの部署の人間は、お酒がとても好きなので、
これは糸井さんからの差し入れということで
勝手にご用意させていただきました。
お渡しする時だけ持っていただけませんか」
って。
- 田中
-
そのお酒は一応、大阪のデパートで買って、
開けるとのしに大きい筆文字で、
「糸井」って書いてあって。
- 糸井
-
その念の入り方があんまりなんで、
もう笑うしかなくて。
- 田中
- この小賢しさっていうね(笑)。
- 田中
-
僕たちは、その花見に、少し遅れて行ったんですよね。
糸井さんは特別ゲストだから、
みんながすでに飲んでいるところへお連れしたんです。
僕は前もって糸井さんに、
「この一升瓶は糸井さんからってことで」って
言ってあって。
だから糸井さんは「あの…これ、僕が」って、
すごく小さい声でおっしゃる(笑)。
- 糸井
-
僕は芝居ができない人間なんで、
言われた通りに「これ…」って渡したら。
案の定、湧くんですよ。
- 田中
-
みんな「ワーッ!」って。
酔っ払いだから、その包みの紙をグシャグシャって取ると、
「糸井」って書いてあって。
それでお酒が出てくるから、
もっと「ウワァーッ!!!」って(笑)。
- 糸井
-
すごいんだよ。
ガソリンを、焚火に投入したみたいで。
大阪から来たひとが、東京の集いであれやったら、
「あぁ」でお終いですよね、きっとね。
- 田中
-
もらった瞬間に開けて、
「酒あるぞ!」って全員一斉に注いで、
一気に飲んでいましたね。
ひょっとしたら、糸井コールが起きそうな勢いで。
- 糸井
-
で、そのメンバーは馬鹿じゃないんです。
そこがいやらしいところで(笑)
馬鹿じゃないっていうのと、
馬鹿が同一平面に2つ置いてあるんですよね。
- 田中
-
あれから僕は、
「田中、お前はうちに20何年いて、
何もせぇへんやつかと思ったけど、
糸井さんを連れて来たな」って(笑)。
- 糸井
- (笑)