もくじ
第1回栗が嫌いだった私 2017-11-07-Tue
第2回栗を好きになった日 2017-11-07-Tue
第3回栗が大好きになった私 2017-11-07-Tue
第4回栗を好きになって思い出したこと 2017-11-07-Tue

実家がスポーツ屋なのでスポーツメーカーで働いていましたが、20代最後の年に本当にやりたいことってなんだろう?と考えて、雑貨も置いている本屋に転職しました。
そして本を売ることの面白さに目覚め、今も本屋で働いています。
5年前からは自分でも、お店のない本屋を始めました。
本と、音楽と、焼きそば、栗が好物です。あと、イカも好きです。

私の好きなもの「栗」

私の好きなもの「栗」

担当・店主

第4回 栗を好きになって思い出したこと

2017年も栗シーズンに突入し、
つい最近、好きのバーションアップも果たしました。

「これまでで一番、高価な栗」を食べたのです。
「2500円の栗パフェ」を、電車を3本乗り継いで食べにいったのです。

パフェに2500円払う。
29歳から今年の初めまで、好きなことを仕事にしているから仕方ないと、
アルバイトの掛け持ち生活をしていた私には、
とても考えられない行動でした。

栗好きになったことで、私の人生が変わったのは紛れもない事実です。

そして、変わったというのは、一体どういうことなのか?を、
さらにさらに深く考えようとした時、
そうか!とわかったことがありました。

それは、
「好きなものが増える」=「新しい世界の扉が開く」
ということです。
当たり前と言われれば、そうなのですが、
でもそれが時として、人生を変えるくらいの力を持つこともある、
素晴らしいことだということです。

思い返してみれば、
好きじゃなかったのに出会って人生が変わったと思えるものは、
栗以外にもありました。

ヒップホップ・グループ「RHYMESTER(ライムスター)」で知った、
ジャパニーズヒップホップの、巧妙だけじゃなく遊び心もあるかっこよさ。

「ヱヴァンゲリヲン」で知った、
アニメ作品の物語の深さ、職人技とも言える技術の高さ、
それらで外国人をも魅了する、日本アニメの素晴らしさ。

そしてそれは、私の生業を成り立たせる「本」と出会った経験も、
もちろん含まれています。

今の職業である「書店員」として生きていこう!と決めたのも、
本と出会うことで、「新しい好き」を得ることができると
気がついたからですし、
書店員になってからも、新しい好きには度々出会っています。

元々好きだったバンドが歌っている曲の詩を、
山之口獏という詩人が書いたということを知り、
今まで読んだことのなかった詩集を読むようになったり。

「崎陽軒のシウマイ弁当はこの順番で食べるのが一番美味しい」
という内容のエッセイを読んで興味が湧き、
今まで食べたことがなかったシウマイ弁当を
その本に書かれている通りに食べてみたら、
その美味しさにあまりにも感動して、
その後、月一で食べたくなるくらいになったり。

その、本が新しい世界に連れていってくれて、
「新しい好き」を生み出してくれるということ。

その時に得られる「喜び」と「興奮」を、
多くの人に伝えたいという気持ち。

そんな「偶然と奇跡」を起こすため、
あらゆる本を送り届けられる自分になりたいという目標。

私は、栗が好きになった経緯を振り返ったことで、
自分が働く目的も思い出しました。
そして、自分がどれだけ仕事が好きなのかということも。

これからも「新しい好き」に出会い続けられるような自分でありたい。
それを、たくさんの人たちと分かち合える機会を作りたい。
今、そう思います。


最後に話を栗に戻しますが…

先にお話した、
今、栗が大好きな私が、20年前の、栗が嫌いだった私に会ったら、
なんて声をかけるのでしょう?
という問いへの答えは、

「栗、美味しいよ?食べてみたら?」でしょうか。

いや、きっとそうではないと思います。

35年間、体の中に大切に保管してきた、栗が好きという気持ちの爆発を、
今、楽しんでいるところだから、

「栗、もうちょっと待っててね。」とか、そのくらいだと思います。

次に好きになりたいものは、
何度チャレンジしても好きになれない、
けれど好きになりたくてしょうがない「抹茶」です。

栗との相性もバッチリに違いないから、好きが目覚める瞬間が来るのを、
今か今かと待ち望んでいます。

(おわり)