もくじ
第1回よしもとばななさんとの出会い 2017-11-07-Tue
第2回主人公との共通点 2017-11-07-Tue
第3回めぐるめぐる大きな流れ 2017-11-07-Tue
第4回いちばんの好きな理由は 2017-11-07-Tue

93年、九州生まれの会社員。おいしいもの好きが高じて、大学では農業を専攻。農業の現場、微生物、スーパーや八百屋さん巡り、料理、器、、、おいしいものがめぐりめぐっている感じがすき。好きな作家は、吉本ばななさんと山田詠美さん。マイブームは、みょうがと酒盗。

わたしの好きなもの</br>よしもとばななさんの「王国」

わたしの好きなもの
よしもとばななさんの「王国」

担当・まるやま

第4回 いちばんの好きな理由は

ここまでいろいろ書きましたが、とにかく、あったかいもの
につつまれている本なのです。よしもとばななさんはこの本
のあとがきで、何が言いたかったんだろうと自分で言ってい
ます。でもわたしは、その余白のようなものが、入り込む隙
があっていいのかもしれないなあと思います。

教訓めいていなくて、メッセージ性が強すぎなくて、それな
のに読むごとにじわじわくる、そういう感じ。読むたびに毎
回感じることが違って、でも毎回頷けるところがある。だか
らたぶんずっとそばに置いておいて、いつでも戻れる場所で
あってくれるのだと思います。

主人公の雫石をはじめとして、育ての親のおばあちゃんや、
師匠であり友人でもある楓、雫石の永遠のライバル?の片岡
さん。みんな真っ直ぐで、愛情深くて、ちょっと不器用。で
も、こんなに魅力的な姿勢で生きられるのならわたしも、不
器用さを恐れずに、素直に、真っ直ぐにぶつかりたいと思わ
せてくれます。だから本を読みながら、あけっぴろげな気持
ちでわたしも、自分の考えを投げている。

そんな風に、読むと気の知れた友だちとお茶をするような感
覚になれるから、わたしは「王国」が好きです。

人によってすきな感じは違うから、あなたにとっても絶対に
良い本ですよ!とは全然思いません。でも、もしもわたしに
とっての「王国」のように、他の人にとって安心できる帰り
たい場所になる本や映画があれば、聞いてみたいなぁと思い
ます。

最後に、何よりも。この文章を書いて、気づいたことがあり
ました。物語を読んでいるのに、後には聞いてもらったよう
なすっきりとした気持ちが残る。だから、わたしは「王国」
が大好きです。

(おしまい)