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私がスリラバに通う理由のひとつに、
毎月ひと型ずつ発売される
オリジナルアイテムがあるんです。
デザインはベーシックな印象なんですけど、
生地や縫製のこだわりを聞いたり、
着こなし方を教わるのがおもしろくて。
そもそも、なんで月にひと型なんですか?
- つかもと
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ひとりで店をやってるっていうのもあるけど、
昔、俺がほかの服屋に通ってたときに、
全部ほしいけど買えないっていうことがあったんだよ。
秋冬の立ちあがりってなったら、
だいたいのブランドは
ジャケット5型、パンツ5型、靴5足とか、
一度に発表するでしょ。
ひとつに絞れない、でもほしい。
そのときに、俺が服屋をやることになったら、
月にひと型にしようって思ったの。
真っ当に働いたら、月に一度は給料もらえるじゃん。
一着なら服買えるじゃん。
- ふたり
- (笑)。
- つかもと
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だから、基本的にはシーズンが立ちあがったら、
ジャケット、トップス、ボトムス、靴って、
毎月揃えたら半期でひと通り揃うようにしてる。
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- ほかのアイテムは売らないんですか?
- つかもと
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それ以外では、ときどきヴィンテージを放出したり、
限定アイテムを少し売ってるだけ。
- ——
- オリジナルのデザインはつかもとさんが?
- つかもと
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デザインはほとんどしないね。
俺、服の基本は
ワーク・スポーツ・ミリタリーだと思っていて。
そのアーカイブを手に入れて、
この縫製や手法を今の技術でできないかな? って
専門の職人さんに相談しに行くの。
決めるのはそのシーズンのテーマぐらい。
- ——
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テーマがあるんですね。
ちなみに、今シーズンのテーマは?
- つかもと
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ニットかな。
今、ニットが楽しくて仕方がないの。
俺、20才からずっと
ファブリックものの服はやってきたから強いけど、
ニットは切って縫ってっていう
カット&ソーじゃないから奥が深い。
やばいくらい、金かかるの。
- ——
- 編むから。
- つかもと
-
編むから。
あと、ファブリックなら反物をつくって、
そこから何着分とれるかっていう発想だけど、
ニットはグラムで買わなきゃいけないの。
だから何着つくるってなったら、
グラムで計算して進めなきゃいけない。
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- グラムなんだ。
- つかもと
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そう。
これもうちょっと目をつめたほうがいいねっていうのも、
つくってみないとわかんないし。
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- 試作して。
- つかもと
-
もうちょっとってなったら、
もう一度編まなきゃいけない。
カシミア100%のサーマルって
ニイミちゃん、買ったっけ?
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いや、残念ながら買い逃しました。
でも実物は見ましたよ。
軽くてあったかそうだった。
- つかもと
-
カシミア100%のサーマルなんて絶対にないから、
職人さんがビビッたぐらい。
要はサーマルってハチの巣織りでしょ。
あれって引っ張りながら編み地をつくるの。
だからカシミア100%じゃ切れちゃう。
それを職人さんと試行錯誤しながら、実現できたんだよね。
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そういうアイデアって、
どうやって思いつくんですか?
- つかもと
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さんざん着てきたから、
俺だったらこうするって考える癖があったのよ。
- ——
- 考えていた。
- つかもと
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そう。
そもそもサーマルって肉厚のコットン製なの。
それをウールでやろうとしたら
今の市場ではポリ混に頼るしかないわけ。
なら、さらに弱いカシミアでやったら俺、
歴史に名前残るなーって。
じゃあ、職人さんに聞いてみようって、
職人さんの熟練の技を聞いて、
一生懸命、どうやったらできるんだろうって考えるわけ。
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弱い素材だけでかたちにするぶん、
時間も手間もかかったんじゃないですか?
- つかもと
- 編み地をつくるのに3年かかったよ。
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- 3年!
- つかもと
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それを「完売したよ」って伝えたら、
職人さんが泣いて喜んでた。
- ——
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へえー、それはお互いにうれしいですねえ。
職人さんと接するときに、
大切にしていることってありますか?
- つかもと
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俺はとにかく実現したいから、お金のことは言わない。
職人さんが言うには、
「今のものづくりは、
まずお金の話からされることがほとんどだ。
値段を下げるために
職人がいるみたいになってる」。
- ——
- 切ないですね・・・・。
- つかもと
-
職人さんたちも、なんのために俺たちはって思うよ。
だからじゃないけど、お金の話はしないね。
俺はこうしたいっていうアイデアがかたちにできるなら、
いくらになったっていい。
- ——
- かっこいい!
- ふたり
- (笑)
- つかもと
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お客さんは大変だけどね、
値段があがっちゃうから。
でもじゃあなんでその値段なのか、
職人さんの仕事ぶりも含め、
俺がまた一生懸命喋ればいいと思ってる。
(つづきます)