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今年の11月30日で
スリラバは22周年だったんですよね。
おめでとうございます。
- つかもと
- ありがと。
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- これからのお店について聞かせてください。
- つかもと
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続けばいいよ。
続けばいい。
俺、継続は力なりって素晴らしい言葉だと思う。
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- 続けばいい。
- つかもと
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そう。
だから酉の市の熊手もずっとサイズを変えない。
俺、日本一の服屋じゃなくて、
街いちばんの服屋になりたいんだよね。
だからライバルがいない浅草を選んだし。
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浅草が地元だからじゃないんですね。
じゃあ、街いちばんの服屋を
元気な限り、ずっと続ける。
- つかもと
- いやいや、あとせいぜい8年かな。
- ——
- ええーーー!
- つかもと
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8年後は店が30周年で、俺は50才。
服屋が30年続くって素晴らしいことだよ。
それに、50にもなって「新作!」とか言い続けるの、
ちょっと恥ずかしいでしょ。
- ——
- そうですか?
- つかもと
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40才くらいになると、
だいたいの人が「この服」って落ち着くの。
今、うちに来てくれてる常連さんが
20代後半〜40代が多いから、
あと8年やれば常連さんも落ち着いてると思うし、
俺がつくる服を通して服のことがわかるようになるはず。
一度わかったら、もう大丈夫だよ。
- ——
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うーん・・・・寂しいなあ。
それじゃあ、つかもとさんの服の理想って、
どんなのですか?
- つかもと
-
服と一緒に年をとっていきたいな。
シワと白髪が増えたからこそ似合うものがあると思う。
そのひとつがずっと好きなYohji Yamamotoで、
シワと白髪がもっと増えたら
全身揃えて歩きたいと思ってる。
- ——
- なんでYohji Yamamotoを好きになったんですか?
- つかもと
-
うちの母親が若いころから好きで、
小学生の俺にも着せてたから。
いつの間にかだね。
母親は70になった今もバリバリ着ていて、
白髪が増えてババアになったから、また似合うんだ。
でも俺はまだまだ。
自分のつくった服着て、
あ〜落ち着くって言ってんの(笑)。
- ——
- 落ち着くのが一番じゃないですか。
- つかもと
-
日用品だからね。
あと、服を通じてできた常連さんとの関係は
続くといいなあと思ってるけど。
- ——
-
それは私たちもそう思います。
仮に8年後、服屋をやめたらどうするんですか?
- つかもと
- 喫茶店でもやるんじゃない?(笑)
- ——
- つまりは集えればいい。
- つかもと
-
そう。
同じ時間、同じ場所に、同じ人がいる、
服屋の基本が残せたらいい。
もしかしたらそこでも半年に一回とか、
懲りずに服つくってるかもしれないし。
でも正直言って、わかんないよ。
昨日食ったもん忘れる人間が
将来のことなんかわかんない。
- ふたり
- (笑)
- つかもと
-
昼食ってるときに
「夜はなに食べようかな」くらいなほうがいいよ。
- ——
- あんまり考えないですか。
- つかもと
-
考えない。
だって気分は変わるじゃん。
1年、2年、その間に
いろんな人に会って影響も受けるだろうし。
人間の単純で弱いところがさ、
何年後かの目標を立てたら、
それに向かって進んじゃうこと。
だから平々凡々とした人生になっちゃう。
だめだよ。
その間にもっといいチャンスや
良いことがあるかもしれないのに。
とりあえず自分で台本書いちゃったもんだから、
そこに向かってっちゃう。
それほどつまんないことはないんだよ。
- ——
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ああ・・・・
自分に暗示をかけちゃう。
- つかもと
-
そう。
だから体預けなさい。
- ふたり
- (笑)
- つかもと
-
服馬鹿に体を託せば、
ブランドじゃなくて似合うものをすすめるから。
こうやって着ると服ってこんなに広がるんだよ、
着てごらんって。
服選びに幅が出るような道をつくるから。
- ——
- 黒い服ばっかり買っちゃうとかも。
- つかもと
-
そこも服馬鹿は超えていく。
「いやあ、白いパンツは抵抗あるんです」
っていう人にも
履いてみなって似合う一本をすすめて、
着方もしっかり教えるよ。
それでお客さんが味をしめたら
ほかの店でも白いパンツ買える。
一気に世界がブワーッて広がるよ。
- ——
- なんかワクワクします。
- つかもと
-
でしょ。
服って、そういうもんだから。
そのために俺たち服屋がいる。
- ——
-
なんだって、自分でリミッターかけたら
つまらないですよね。
これからもお喋りしに来ます。
ありがとうございました。
- つかもと
- こちらこそ、今日はありがとね。
(おわります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました)