もくじ
第1回服屋は服馬鹿じゃないと 2017-12-05-Tue
第2回毎月ひと型のオリジナル 2017-12-05-Tue
第3回言葉の裏にあるものは 2017-12-05-Tue
第4回服馬鹿は世界を広げる 2017-12-05-Tue

兵庫県の北で育ち、浅草生活10年目。書くお仕事を経て、メーカーの販促をやっています。和菓子に目がありません。

服馬鹿が教えてくれること。</br>-The Three Robbers つかもとたかしさん-

服馬鹿が教えてくれること。
-The Three Robbers つかもとたかしさん-

担当・ニイミユカ

第4回 服馬鹿は世界を広げる

——
今年の11月30日で
スリラバは22周年だったんですよね。
おめでとうございます。
つかもと
ありがと。
——
これからのお店について聞かせてください。
つかもと
続けばいいよ。
続けばいい。
俺、継続は力なりって素晴らしい言葉だと思う。
——
続けばいい。

つかもと
そう。
だから酉の市の熊手もずっとサイズを変えない。
俺、日本一の服屋じゃなくて、
街いちばんの服屋になりたいんだよね。
だからライバルがいない浅草を選んだし。
——
浅草が地元だからじゃないんですね。
じゃあ、街いちばんの服屋を
元気な限り、ずっと続ける。
つかもと
いやいや、あとせいぜい8年かな。
——
ええーーー! 
つかもと
8年後は店が30周年で、俺は50才。
服屋が30年続くって素晴らしいことだよ。
それに、50にもなって「新作!」とか言い続けるの、
ちょっと恥ずかしいでしょ。
——
そうですか?

つかもと
40才くらいになると、
だいたいの人が「この服」って落ち着くの。
今、うちに来てくれてる常連さんが
20代後半〜40代が多いから、
あと8年やれば常連さんも落ち着いてると思うし、
俺がつくる服を通して服のことがわかるようになるはず。
一度わかったら、もう大丈夫だよ。
——
うーん・・・・寂しいなあ。
 
それじゃあ、つかもとさんの服の理想って、
どんなのですか?
つかもと
服と一緒に年をとっていきたいな。
シワと白髪が増えたからこそ似合うものがあると思う。
そのひとつがずっと好きなYohji Yamamotoで、
シワと白髪がもっと増えたら
全身揃えて歩きたいと思ってる。

——
なんでYohji Yamamotoを好きになったんですか?
つかもと
うちの母親が若いころから好きで、
小学生の俺にも着せてたから。
いつの間にかだね。
母親は70になった今もバリバリ着ていて、
白髪が増えてババアになったから、また似合うんだ。
でも俺はまだまだ。
自分のつくった服着て、
あ〜落ち着くって言ってんの(笑)。
——
落ち着くのが一番じゃないですか。
つかもと
日用品だからね。
 
あと、服を通じてできた常連さんとの関係は
続くといいなあと思ってるけど。
——
それは私たちもそう思います。
仮に8年後、服屋をやめたらどうするんですか?
つかもと
喫茶店でもやるんじゃない?(笑)
——
つまりは集えればいい。
つかもと
そう。
同じ時間、同じ場所に、同じ人がいる、
服屋の基本が残せたらいい。
もしかしたらそこでも半年に一回とか、
懲りずに服つくってるかもしれないし。
 
でも正直言って、わかんないよ。
昨日食ったもん忘れる人間が
将来のことなんかわかんない。
ふたり
(笑)
つかもと
昼食ってるときに
「夜はなに食べようかな」くらいなほうがいいよ。

——
あんまり考えないですか。
つかもと
考えない。
だって気分は変わるじゃん。
1年、2年、その間に
いろんな人に会って影響も受けるだろうし。
 
人間の単純で弱いところがさ、
何年後かの目標を立てたら、
それに向かって進んじゃうこと。
だから平々凡々とした人生になっちゃう。
だめだよ。
その間にもっといいチャンスや
良いことがあるかもしれないのに。
とりあえず自分で台本書いちゃったもんだから、
そこに向かってっちゃう。
それほどつまんないことはないんだよ。
——
ああ・・・・
自分に暗示をかけちゃう。
つかもと
そう。
だから体預けなさい。
ふたり
(笑)

つかもと
服馬鹿に体を託せば、
ブランドじゃなくて似合うものをすすめるから。
こうやって着ると服ってこんなに広がるんだよ、
着てごらんって。
服選びに幅が出るような道をつくるから。
——
黒い服ばっかり買っちゃうとかも。
つかもと
そこも服馬鹿は超えていく。
「いやあ、白いパンツは抵抗あるんです」
っていう人にも
履いてみなって似合う一本をすすめて、
着方もしっかり教えるよ。
それでお客さんが味をしめたら
ほかの店でも白いパンツ買える。
一気に世界がブワーッて広がるよ。
——
なんかワクワクします。
つかもと
でしょ。
服って、そういうもんだから。
そのために俺たち服屋がいる。
——
なんだって、自分でリミッターかけたら
つまらないですよね。
これからもお喋りしに来ます。
ありがとうございました。
つかもと
こちらこそ、今日はありがとね。

(おわります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました)