- 糸井
- よく頑張ってるよねぇ。
- 燃え殻
- あ~、ひさしぶりに褒められた(笑)。
- 糸井
- 頑張ってるよ。
いいことも悪いこともストレスなんだから。
新婚も、豪華マンションに引っ越してもストレス。
- 燃え殻
- ああ、最初は。
- 糸井
- 環境が変わったら体が変わったのと同じ。
あらゆる変化はストレスなんですよね。
- 燃え殻
- ここ2か月ぐらい、今までの人生にない変化しかしてなくて、
それに少しだけ慣れました。
- 糸井
- たいしたものだ。
- 燃え殻
- フェイスブックに「1年前はこれをしてました」って機能が
あるじゃないですか。
それで糸井さんと一緒に写った写真が出てきたんです。
- 糸井
- 初対面はあの日ですか、もしかして。
- 燃え殻
- その前に1回‥‥
- 糸井
- ご飯を食べたね。
僕がご飯をご馳走したい本能がうずいたときです。
- 燃え殻
- ありがたい本能だ(笑)。
僕、ロフトのとき(※2016年9月3日に渋谷ロフトで行われた
トークショー)が人前で話すことの人生初だったんです。
糸井重里がいて、そうそうたる変わった方々がいらっしゃって。
緊張した~。
1年前の写真を見たとき、この状況に少し慣れたかもしれないと思ったんですよ。
- 糸井
- 人前っていうのは、知らない人が自分の話を聞いてる
ってことか。なかなかないよね、そういえば。
- 燃え殻
- 糸井さんは気軽に誘いましたけどね、ロフトへ。
すごい人は気軽に誘うんだと思いました。
会田誠さんもそうだった。「飲みに行かないか」って。
- 糸井
- 僕は会田さんみたいな芸術家じゃないので、
「よかったら来ていただけませんか」と、断る権利を与えたはずですよ。
- 燃え殻
- そうでした。
- 糸井
- 僕は誘うときにいつも、けっこう本気で、断られるんじゃないか
と思ってます。
- 燃え殻
- それは自分がガッカリしたくないからですか。
- 糸井
- じゃなくて、自分もそうだから。
絶対行きたくないとか、今は勘弁してくださいとか、
いろんな理由があるから、断れるように誘ってほしいと
思っているので。
だから、「すぐ来いよ」みたいなことを言う関係って、
ないかもなぁ。娘に対してもそうだな。
- 燃え殻
- ちゃんと選択肢を。
- 糸井
- うん。ノーと言える空き地を作る。
- 燃え殻
- 僕も絶対そうするんですよ。
- 糸井
- 気が弱いせいもある。
でも、そのおかげで、僕はだいぶ長生きできると思うよ。
トータルに考えて、ものすごく健康でいられる気がする。
- 燃え殻
- ああ。
- 糸井
- 人を自由にできないっていう、なんとかのテーゼが(笑)。
- 燃え殻
- 残酷じゃないテーゼがある(笑)。
- 糸井
- そうそう(笑)。
燃え殻さんも「こいつは来るに決まってる」というようなことはないんですか。
- 燃え殻
- 本当にそれはない。
- 糸井
- ていうことは、無駄モテしますね。
- 燃え殻
- どうなんだろう(笑)。
僕、直前で嫌になっちゃうクセがあるんです。
小学校からの友だちと焼肉を食べに行く。
何度も行ったお店で味もわかってるし、嫌なことは起きない。
- 糸井
- うんうん。
- 燃え殻
- なのに、行きたくないってことがあった。
そのとき「ごめん、俺今日行きたくない」って言えたんです。
彼も「まあ、そういうこともあるわな」って。
友だちだなって思いました。
- 糸井
- それは友だちだな。あるよね、そういうこと。
ドタキャンってやつですよね、いわゆる。
- 燃え殻
- 社会でしちゃいけないって言われるじゃないですか。
- 糸井
- ずっとドタキャンする人が100、ぜんぜんしない人が
1だとして、自分は?
- 燃え殻
- ほとんどの場合はしないように我慢します。
だから、常にストレスが溜まってくる。
8ぐらいはドタキャンしたい。
- 糸井
- 僕は考えてみたら、ドタキャンしないために最初から
断ることが、どんどんできるようになった。
- 燃え殻
- どうやって断るんですか。
「今度ご飯食べましょう」って言われて断るともう、
そんなに食いたくないのかって話になるから、
「そうですね」ってまず言わなきゃいけないじゃないですか。
- 糸井
- 言わないときもある。「あ~」って。「ん~」とか。
- 燃え殻
- 「ん~」って吸い込む(笑)。
- 糸井
- 音だけ出す(笑)。
たとえば20年前に番組を一緒にやったプロデューサーに
「久しぶりですね。ご飯食べに行きましょうよ」って
言われたとしたら、もう完全に「あ~」だね。
行く理由ないもん(笑)。
「飲みに行きましょう」の場合は、「僕飲まないんです」。
- 燃え殻
- それは必殺技じゃないですか。
- 糸井
- あと、友だちだけど、今はものすごくドタバタしているから
ご飯はちょっと、というときは、「いいね」って言う。
行く気はあるけど、いつになるかわかんないっていうのは
OKに入れています。
断らないけど、そこに置きっぱなしにするのが「あ~」。
はっきり断るのは、「いや、おまえ大嫌いだよ」って
言わなきゃならないとき。
- 燃え殻
- 断ることもある?
- 糸井
- うん。5、6年にいっぺんはあるんじゃないですか。
「嫌だよ」って言う。
誘うときにはいつも、相手が「嫌だよ」を言う可能性を
考えておく。
誘われるときの返事は、「嫌だよ」から、「ん~」、
「おお、いいね! いつ?」っていうのまで。
- 燃え殻
- バリエーションがあるんだ。
僕、ひとつだから苦しいのかな。
「いいね」って絶対言っちゃうんですよ。
うちの会社の食事会があって、たぶん、若手も本当には
来てほしくないんです。
でも、誘ってなかったらまずいじゃないですか。
- 糸井
- ああ(笑)。
- 燃え殻
- たぶんお知らせのつもりで若手は誘ってくれるんですけど、
僕には「いいね」しかないので。
「あいつ、行くらしいぜ」みたいな話になっていると思う。
- 糸井
- 面白いですね、その加減。
- 燃え殻
- そうすると最終的にドタキャンになる。
今話しして思いましたけど、毎回僕、最初の入口は「うん」
って言っちゃうんです。
- 糸井
- それって「男を狂わせるガール」みたいだね。
- 燃え殻
- 女子ですか(笑)。
- 糸井
- 燃え殻さんのケースは、その場をなんとかしたいっていう、
キープリズム(笑)。
- 燃え殻
- セッションです(笑)。
でもそれで、どんどん追い込まれちゃう。
- 糸井
- 仕事もそうやって引き受けちゃうんだ。
- 燃え殻
- はい。
- 糸井
- 今日もそれで来たんだ。
- 燃え殻
- 違います(笑)。
- 糸井
- 「違います」の早さ、すごく好感がもてた(笑)。
- 糸井
- 谷中生姜のお店で、古賀さん(ライターの古賀史健さん)
とかなり飲んでましたね。あれは羨ましかった。
酒飲むやつらっていいなって思いました。
- 燃え殻
- あのときはお互い意地みたいになっちゃって。
「帰らないでくださいよ」って谷中生姜を注文してから、
かわりばんこにトイレへ行ってた。
- 糸井
- 証拠物件みたいな。
- 燃え殻
- また生姜が来るから、お互いずっと帰らない(笑)。
面白かったですよ。
古賀さんと僕、同い年でまったくタイプが違うんですけど、
何なんだろうな‥‥。
- 糸井
- 違うっていえば違うけど、共通するものがある。
- 燃え殻
- いろいろ違うんですけど、すごい気が合うんです。
ふと気軽にメールくれるんですよ。
「どうですか、お茶でも」みたいな。
古賀さんが忙しいのはわかってるから、
「じゃ、日程は決めずにどうですか」って。
それで「お茶でも」なんて言ってたら、お酒じゃなくて、
本当にこのあいだ喫茶店でお茶しました。
- 糸井
- ああ、いいなあ(笑)。
- 燃え殻
- 隣のお客さんがどんどん替わっていく中で、
どこにもたどり着かない普通の話をして。
「話し過ぎちゃったなぁ」なんて2人で言って帰った。
飲みに行って谷中生姜もいいんですけど、お茶できるって
いうのが。
- 糸井
- 大人になると、仕事にかこつけて会うことばっかりに
なるんですよ。何かの打ち合わせを兼ねて。
- 燃え殻
- それで会食とか。
- 糸井
- そうそう。だから、「仕事じゃないんだけど、ひま?」って
いうのは、僕の中からはほぼ消えたね。すごく残念。
- 燃え殻
- 僕もそれは久しく消えてたんですけど。
- 糸井
- みんな男はそうなっていく。
「女子会」って言葉があるのは「とくに用はないんです」
ってことでしょ。「男子会」はあまりないもんね。
- 燃え殻
- ないですね。男子が集まって。
- 糸井
- 「燃え殻さんたち、お食事しませんか」ってのは、
今思えば男子会だったね。
- 燃え殻
- そうですね。
- 糸井
- 立川でやったら、立川ダンシだね。
- 燃え殻
- 今の聞かなかったことにしていいですか(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。