話をしよっか、燃え殻さん。
担当・中村 駿作
第2回 いったん保留にしようぜ。
- 糸井
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ぼくは、燃え殻さんが気づいてなくて、あなたはすごいですよってものが、はっきりあって。それは、あのとんでもない角度からいろいろ質問を受けてる人生相談なんです。
あそこで答えてる燃え殻さんは、質問してる人と、すっごく同じ場所に立って。一生懸命考えてて、エッセイでも何でもないんだけど、ものすごい発見もあって。ぜんぶ面白い。
- 燃え殻
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えぇ~、ありがたい。
- 糸井
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あれは、もし職業名であるならば、人生相談士っていうのに‥‥
- 燃え殻
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怪しい(笑)。
- 糸井
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本当に、一生懸命やってますよね。
- 燃え殻
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もう、一生懸命やるしかないです。
- 糸井
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そうですよね。
- 燃え殻
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ここ2ヶ月、たくさんのすごい人たちと会って思ったことがあって。
雑誌だったり、本だったり、テレビで見てた糸井さんとか会田誠さんとか、「わっすごいな、全然かなわねえ」って当たり前だけど思ってて。でも、会ったら、失礼なんですけど「あ、人間じゃん」って思ったんですよ。人間、何十パーセントかは、たぶん、みんな一緒やんって思えて。
- 糸井
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うん。うん。
- 燃え殻
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今、人生相談みたいなのを文春オンラインでやってるんですけど。質問が来たとき、人生のどこかで、まったく同じことはないけど、そういう気持ちに俺もなったことあるよっていうことばかりなんです。
性別が違かったとしても、年代が違かったとしても、生きてた場所だったり職業が違かったとしても、あぁ、俺は全然違うけど、小学校のときにそれに近い気持ちになったなぁ、って思うんです。
- 糸井
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あぁ。
- 燃え殻
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その人と握手したいというか。
直接そうじゃないかもしれないけど、こういうことであなたと同じような気持ちになった。で、この話なんだけど、もしかしてこうなんじゃないかな。もし、ぼくがあなたの立場だったらこう思う。違ったらごめんなさい。ってぐらいまで入れる感じです。
- 糸井
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そうですね。
あの‥‥、何よりもぼくがいいと思うのは、その燃え殻さんのいい意味での気の弱さがあるおかげで、相談してきた人に嫌な思いをしてほしくないっていうとこなんです。
- 燃え殻
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あぁ、それ思います。
- 糸井
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本当に回答するっていうのを、一番効率的だったり、一番真実に近いところで行うんだったら、その人を1回傷つけてでも、これは言ったほうがいいんじゃないかってことはあるわけで。
だけど、燃え殻さんは、その人が嫌な思いをしませんようにっていうのを前提にしているよね。
- 燃え殻
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そうなんです。悩み相談、あれガチでしてもらってるんですよ。拙くても、そのまま載せてくださいにしてるんです。
- 糸井
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うんうん。
- 燃え殻
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で、そうすると、なんか、レスキューじゃないですか。悩みがあって、さらにそれをネットにメールするって、熱量が半端ないというか、相当悩んでる。何か答えが欲しくて、それくらい真剣で。
- 糸井
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そうだよねぇ。
- 燃え殻
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でも、それぐらい傷ついたり、悩んだんだったら、もういいじゃないかってぼくは半分思ってて‥‥。
もうそこまで悩んだら、半分いいよ。それを投げ出さなかった時点ですごいなぁみたいな。
- 糸井
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だから、あれは人生相談に答えてるというよりは、
その人と隣り合わせで、なぐさめてるんですよね。
- 燃え殻
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あぁ~。うん。そう思ってますぼくは。
傷がかさぶたになって、それが取れて、きれいになりましたってすごく素晴らしいんですけど、そんなことばっかじゃなくて。
- 糸井
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うん。
- 燃え殻
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そのかさぶたでもいいし、
血を止めながらでも生きていかなきゃいけないじゃないですか。
- 糸井
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そうそう。
- 燃え殻
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だから、悩みで言えば、「いったん保留にしようぜ」って言ってる人生相談ってなんでなかったんだろうって。
- 糸井
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いやぁ。あれが、やってますよ。
- 燃え殻
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ぼく、いったん保留にしたんですよ。で、保留にして生きてこれたというのがたくさんあった。
手帳を見ると解決してないことばっかなんですよ。悩みが全部解消して線が引けて、「はい、これだけ俺、成長した」なんてことじゃなくて。自分はすごい成長してるっていう優越感のもとに手帳なんか見てるわけじゃなくて。うわー、俺、昔のほうがちゃんと考えてるとか。
- 糸井
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あるある。
- 燃え殻
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でも、それを見るのもすごくよくて。保留にしたことによって、将来の自分が解決してくれたり、将来の自分も、「もう一回置いとこうか」って思ったりしながら生きていくとぼくは思うんですよね。
全部がきれいに片付いているほうが、そのほうがいいけど、でも‥‥
- 糸井
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グシャグシャしたことでも、語ってるうちに泣いちゃって大声出したりして。最終的に、テーマ忘れて泣き止むかどうかになりますよね(笑)。
- 燃え殻
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わかります。
- 糸井
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子どもとかでも、取りっこしてたとか引っ掻いたとかって話で、ウワーッて泣くと、ウッウッと止まって終わるじゃないですか。あの、泣いてるだけって状態に手を差し伸べてる感じで。
‥‥あんた、もう一生の仕事にしなさいっ、それを。
- 会場
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(笑)
- 燃え殻
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答え要らないときって多いと思うんですよ、ぼく、人生で。
- 糸井
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ご飯食べるとかさ。
- 燃え殻
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そう。お腹いっぱいになると、けっこう解決したりしません?
- 糸井
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あと、歩く。
- 燃え殻
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あぁ、歩くもあるかもしれない。
- 糸井
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ねぇ。
- 燃え殻
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書くのもそうなんです。
いいことも悪いことも思ったり、あとテレビとか見てても誰かが言ったこととかあるじゃないですか。そういうのも書いちゃう。で、それが何かつながるとか、もうそんないやらしいことは考えないで書いてて。
- 糸井
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へぇ。
- 燃え殻
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あとで見ると、それが第三者として、「あ、これってもしかして、うちのアシスタントに言ってあげれる」みたいな、「全然関係ないけど言えるな」と思って。
- 糸井
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うんうん。
- 燃え殻
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今自分に使えるかどうかじゃなくて。どうなるかわからないけどってものがどのくらいあるかで、人と対したときに何か言葉が出てきたりすると思うんですね。
- 糸井
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それね、今、ぼくらが読者会やってる『うらおもて人生緑』という色川武大さんの本の中に、「言い訳に使えるなと思った種はどんどん仕込んでいきなさい」ってあって。
- 燃え殻
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はい。
- 糸井
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だから、それでしのげるだけで、一番大事なヒヨヒヨとした粘膜の内側まで傷が行かないんだよ。そういうのは技術なんだけど、子どもたちに教えてあげたい感じはしますねぇ。
- 燃え殻
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わかります。うん。
(つづきます)