- 清水
- 私、糸井さんに聞きたいこといっぱいあるの。
- 糸井
- え、そう？
- 清水
- いつも仕事で流れていっちゃうからね。
- 糸井
- ぼくもね、清水さんについては言ったり聞いたりしてみたかったのよ。「昔の清水さんはどうだったの？」みたいなこと、あんまりしゃべってないんだよ。
- 糸井
- 昔はどうだったんですか。大学もちゃんと勉強して、卒業して？
- 清水
- うん、家政科で。でも、うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教師免許を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だからそれを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
- へっちゃらってことはないですけど。
でも、料理は好きだし、面白かった。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのにやってることは、ずーっと（笑）。
- 清水
- とにかくうちの両親は、森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって。
- 糸井
- （笑）
- 清水
- 「まあまあ、もう今年でやめますから」って何十年も（笑）。
- 糸井
- もう、森山良子さんを見てるとき、清水ミチコを思い浮かべるようになってるね。
- 清水
- 私の家系のひいおじいちゃんがエイザブロウって名前なんだけど、「嘘つきエイザ」って呼ばれて（笑）。
- 糸井
- うん。
- 清水
- 普通は自分の名誉のためとかお金のために嘘をついたりするけど、そうじゃなくて、本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
昔のお坊さんってすごい位の高い人なんだけど、
ある日そのお坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか言って。
真顔で言うもんだから、飛んで行くでしょう？
それで、それを見て１人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」つって（笑）。
- 糸井
- 単純な嘘だね（笑）。
- 清水
- それを何回も繰り返して１人で笑ってたって人が私の祖先なの。
- 糸井
- ちゃんといい子だったんですか。
ひいおじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「私」は。
- 清水
- うん。私は、いい子でもなく悪い子でもなく、パッとしないような子だったけど。
やっぱり糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とかそういうものを高校のときに読んだり、深夜ラジオを聞いたりとかして、だんだんそういうお笑いの世界みたいなのを‥‥
- 糸井
- パッとしていったわけ？
- 清水
- 自分の中ではね。
ほかの人がみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、ラジオで投稿読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
- だけど、ラジオで選ばれたり「ビックリハウス」載ったりするのって、実はけっこう難しいことで。
それができちゃったわけでしょう？
- 清水
- そんなことばっかり考えてたからね。
青春時代ずっと（笑）。
- 糸井
- いわばハガキ職人ですよね。
- 清水
- ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢ありましたよね。
- 糸井
- そうだよね。
俺はね、そういうお笑いが絡むようなものはできなくて。
なんかポエムを読んでチョコレートをくれるみたいな番組があったんだよ。それで、誰かが当選したって聞いて、俺もやってみようと思ってやったら、もらったことがあって。
もし「ビックリハウス」みたいなことだったら、無理だったと思う。お笑いじゃない人だったから、俺。二枚目の線だった。
- 清水
- 自分で言った（笑）。
そして、社員が笑っている（笑）。
- 糸井
- 昔は二だったんだ。
おかしいなあ、戻ろうかな（笑）。
- 清水
- （笑）
- 糸井
- ハガキ職人は今でも考えればできるの？
- 清水
- 今はもう、無理かもしれないですね、そういえば。
そういう試されるときがないし、もう思いついたらライブのネタにするようになっちゃったから。
- 糸井
- 昔、松本人志さんがセンター試験みたいな形式の面白いことのテストを作ったことがあったんですよね。
ぼくもやったんだけど、ちっとも面白くないの、自分が。
中でも、もうくっきり覚えてるんだけど、
「一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか」っていう問題があって。
つまり4Hから4Bまであるんだけど、それを超える濃い鉛筆は何ですかって。
- 清水
- いい質問ですね。
- 糸井
- で‥‥
- 清水
- 何て書いた？
- 糸井
- 提出するわけでもないんだけど、
できないよ俺、できないよ、みたいになって。
あとで模範解答見たら、「鬼B」。
- 清水
- 悔しい（笑）。
- 糸井
- 悔しいだろ？
- 清水
- なんか悔しい。
でも、できる人できない人できっと個性があるんでしょうね。
- 糸井
- できないんだよ、俺。
- 清水
- 普通できないんじゃない？やっぱり。
- 糸井
- でも、写真で一言、みたいな大喜利番組とか、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。
- 清水
- すごいよね。
- 糸井
- あれどうですか、清水さん。もしゲストで呼ばれたら。
- 清水
- いや、全然無理です。できない。
- 糸井
- え、できないですか。
じゃあ清水さんのあの面白がらせるのは、何あれ。
- 清水
- 私は耳で聞いたことを自分なりに、こういうふうに感じましたっていうことをやると、
本当とは違っててもおかしいんだろうね、きっと。