もくじ
第1回青春時代はハガキ職人 2018-02-05-Mon
第2回共感させる芸 2018-02-05-Mon
第3回永ちゃんの責任感 2018-02-05-Mon
第4回解像度とモノマネ 2018-02-05-Mon
第5回この先の話 2018-02-05-Mon

大学4年生で春から社会人。ライターをするのは初めてです。好きなものはお米。

清水さんと話す、モノマネについて</br>清水ミチコ×糸井重里 対談

清水さんと話す、モノマネについて
清水ミチコ×糸井重里 対談

第3回 永ちゃんの責任感

糸井
俺は今年また永ちゃんをもっとものすごく好きになったんだけど、暮れに急に電話があって。
なんかひょいと何かのときにね、思い出してかけてくるの。
お互いに自分にないものを持ってる人って扱いをしてるらしいんだよ、向こうも。
清水
うん。
糸井
その電話のきっかけが、昔うちで作った、『Say Hello!』っていう犬が生まれた話を書いた本で、
「ずっとあった本をいま見たんだけど、糸井、面白いことしてるねえ」って。
清水
すごいうれしいですね。
糸井
「いいよ。そういうところがいいよ」って。
もうさ、14、5年前の本を今見て、電話したくなったって(笑)。
清水
へぇー、少年っぽいですね。
糸井
それが素直に出てきて、「思えばおまえのやってることは、そういうことが多くて、俺にはそういう優しさとかってのが、ないのね」って。
で、「それは違うよ。同じもののこっちから見てるかあっちから見てるかだけで、俺は永ちゃんにそういうのをいっぱい感じるよ」って言うと、「そうかな。うれしいよ、それは」って言って。
清水
へぇー、ずいぶん‥‥
糸井
いいでしょ?
清水
うん。
糸井
だから、どう言えばいいんだろう、ボスの役割をしてるボスと、それから、ときにはしもべの役割をしたり、ただの劣等生の役割をしたり、全部してるんです。
それを全部大体俺は見てるんで、あの世界ではもうトップ中のトップで別格みたいになっちゃったけど、全然同じだなと思って。
また今年、じーっと見てようかなと。
清水
何で知り合ったんですか、最初。
糸井
最初は、『成りあがり』って本を作るために知り合った。
清水
へぇー。で、どんどん好きになってったんだ。
永ちゃんにあって糸井さんにないものっていうと何だと思いますか。
糸井
うーん‥‥責任感じゃないかな。
生まれつきっていうか、ボスザルとして生まれたサルと、そうでもないサルといるんだよ。チンパンジーの戦争のドキュメンタリーっていうのがあるんだけど、ボスザルはどうやって決めるんだろうって思わない?
清水
うんうん。
糸井
そしたら、喧嘩じゃないんだよ。
パフォーマンスなの。
清水
ウソ(笑)。
糸井
まず、「俺は、ボス、いずれ挑戦しますからね」みたいな目で見たりするとこから始まってて。ボスザルは、最近の態度は目に余るって、「おまえ!」なんてやると、サルがすごすごと逃げる、みたいなのを繰り返すわけ。
糸井
あるとき、仲間を連れてきて、「いつまでもボスって呼んでると思ったら大間違いですよ」みたいにグッと来くると、ボスが、「おい、目に物見せてやる!」ってバーンとかかっていく。
すると、1回ふにゃふにゃっとなるんだけど、追っかけっこになるんだよ。
で、例えば川のそばに行くと、石とか持って、川に向かってバッシャバシャ投げるんだ。
清水
ボスに投げるわけでもなく(笑)。
糸井
うん(笑)。
で、ボスのほうも、石を投げたり、木があるとつかまって、ざわざわって。
ざわわ!ざわわ!って、やるのよ。
清水
「ざわわ」やめてください(笑)。
糸井
(笑)。
ひっくり返ったり、水しぶきあげたり、自分が嵐になって。
結局のところ、それで、負けたほうがすごすごと引き下がるの。
つまり、殴られたパンチの強さとか関係ないんだよ。
清水
強さじゃなくて、やろうと思ったらこれだけできるよっていう、パフォーマンス(笑)。
糸井
それを見てからますます永ちゃんのステージとか見てると、これは、もうできない。芸能の世界にだっていろんな大人数の人がひれ伏すような人たちはいるよね。でも、やっぱり永ちゃんのそのボスザル感は、すごいよね。
清水
ユーミンさんが1回、何かのインタビューで、皮肉じゃなくて、どうして矢沢永吉さんは自分の毎日のようにやるパフォーマンスに飽きてないのか知りたいって話があって。
どうなさってると思います?いつもどこ行っても満員でワー!となってるじゃないですか。で、どんなバンドも、それにちょっと飽きる。
糸井
「それは矢沢が真面目だから」。
清水
(笑)
糸井
「矢沢、手は抜かない」。
清水
モノマネやめてもらっていいですか(笑)。
糸井
多分そういうことだと思うよ。
手を抜けないんだよ、多分。手を抜いたら矢沢じゃなくなる。だから、矢沢は矢沢を全うするんですよ。
清水
そうか。それはみんなのためでもあるし。
糸井
さっき「責任感」って言ったのはそういうようなことで、それのちっちゃいやつはみんなが持ってるわけです。例えば清水さんの最初の武道館って、大勢が集まって。
あのときに、「私がぐずぐずしてらんない」っていうのは、なくはないですよね?
清水
そうそうそう。
糸井
やっぱり、何だろうな、ここを私がちゃんとしないといけないみたいなのは、やっぱりちょっとずつはみんな持ってるんですよね。
清水
そういえばこの間の武道館のリハーサルスタジオに行って、うちのスタッフがエレベーターに乗ったら、「何階?」って言ってくれたのが永ちゃんで、めっちゃビックリしたって言ってた(笑)。やっぱりいい人なんですね。
3階だけど言えない、みたいな、押させられない(笑)。
でも、そういう方なんですね。
糸井
そういう方なんです。だから、みんなが思ってる矢沢永吉像を壊すのは自分であってはいけないって気持ちがあるっていうか。
みんなが思ってる矢沢永吉像と自分というのは、ある意味ではやっぱり離れてると思うよ。
清水
そうでしょうね。
糸井
清水ミチコはどうなんですか(笑)。
清水
私、そのままかもしれない(笑)。
できるだけそのままでいようとも思うしね。
第4回 解像度とモノマネ