モノマネができちゃう理由
担当・カワノリナコ

第2回 モノマネは、「私はこう感じてます」
- 糸井
-
じゃあ、清水さんが面白がらせるのは、何だろう。
- 清水
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私は、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
こういうふうに感じましたっていうことを出すと、
違っててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
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明日、清水さんに会うんだなって、一つぐらい、
「これを思ったんだよね」って言いたいなぁと発見したのが、
「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだね」
ってことだったの。
- 清水
-
あ、当たってます(笑)。
- 糸井
-
で、お風呂に入りながらなぜそう思ったかというと、
批評してないんだよ、全然。
通信販売をする瀬戸内寂聴とかあるじゃないですか。
あのとおりにしてないんだけど、
私にはそう見えてますよっていうだけでしょう?

- 清水
-
「あるある」って(笑)。
共感の人が多いでしょうね、お客様。

- 糸井
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どうして声が似るのっていうのは聴かれたことある?
- 清水
-
ない。
どうしてだろう(笑)。
- 糸井
-
おかしいよね。声が似るってさ。
- 清水
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しかもそれで生計立ててるってね(笑)。
- 糸井
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つまり、しゃべりの癖が似る、はできるよ。
要するに似せて、ここがこうなんだを再現してるわけでしょ?
耳コピしてるわけでしょ?
- 清水
-
そうそうそう。
- 糸井
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それはできるんだけど、声の質まで。
だってユーミンと矢野顕子、似てないじゃん。
どうして私が挟まると(笑)。
- 清水
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やっぱりすごく好きだと‥‥。
自分ではわかんないな。
- 糸井
-
どうしてなんだろうね。
- 清水
-
でも、「私の歌を聞いて」って気持ちに全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちにはすごいなる。
「その人の代わりやるから、こっち聞いて。面白がって」
っていうのは強いと思う、人より。
- 糸井
-
だって、井上陽水さんもやったよね。
無理だろ、普通に考えたら(笑)。

- 清水
-
今考えたらそうだね(笑)。
- 糸井
-
清志郎さんをなんとかしちゃったもんね。
清志郎さんの初期と今とでは、圧倒的に今のほうが似てるよね。
何それって、改めて自分では考えたことはない?
- 清水
-
でも、私も、10代のときに影響された人だね。
30代、40代超えてからは、
歌手ではもうほとんどないかもしれない。
- 糸井
-
ということは、今例えば流行ってる、
仮に西野カナさんのマネしなさいって言われたら、
西野カナさんのことがそんなによく聞こえないんだね。
- 清水
-
よくわかりますね。
- 糸井
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水の中に氷が浮かんでますっていうスケッチとか絵を描く人は、
見えてるから描けるわけですよね。
ぼくらにはその氷が浮かんでるものが見えてないんですよ。
解像度が低い。だから、描きようがない。
- 清水
-
本当、確かにそう。
- 糸井
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その世代の清水ミチコがいたら、
安室奈美恵さんのコピーもできてるんだろうね、きっと。
それはさ、iPhoneのカメラが同じだなと思ってて。
いい写真が写るって、レンズが大事だっていうけど、
iPhoneは、レンズは大きくないのに
頭がいいから解像できる。
- 清水
-
解像するんだもんね。
- 糸井
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おそらく同じなんだろうなと思いながら、
今日、清水ミチコさんに会って初めて、あ、できないんだって。
- 清水
-
聞こえ悪いな(笑)。
- 糸井
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つまり、10代のとき夢中になった人はできるってことは、
そのときは受け止める側の細胞が、脳細胞がバッチバッチに‥‥
- 清水
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感受性がもう。
歌で泣いたりとか、一緒に喜んだりとかしてたのが、
やっぱりこの年になると出ないんですよね、そういう歌手って。
- 糸井
-
脳がついてってない(笑)。
そういうことで言うと、
年とってから好きになった人はいる?
- 清水
-
瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか(笑)。
面白がりましょうよっていう気持ちはやっぱりあるから。
- 糸井
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あのへんは、普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
- 清水
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もう余生はそうやって暮らす(笑)。
- 糸井
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でも、ユーミンは今でも聞きたい人がいるわけだから、
案外、浮世に流れなかったんですよね。
モノマネの人ってけっこう難しくてさ、
大ヒットが出ると、その人と共に消えたりするじゃないですか。
でも、あなたは、なんやかんや編集し直すっていうか(笑)。
ユーミンでも、ここに置けば違って見えるとか(笑)。
- 清水
-
そうそうそう(笑)。ごまかし、ごまかし。
- 糸井
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それで武道館ができちゃうんだから。
- 清水
-
私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんの世代が
まず強いっていうのもありますよね、キャラクターが。
みんな知ってるし。
- 糸井
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そうか、お客も濃いんだね。好き度がね。
「またユーミンやって!」って来るわけだもんね。
- 清水
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私の心を込めた歌はいいから、ユーミンやってって(笑)。