モノマネができちゃう理由
担当・カワノリナコ

第3回 立候補しないのに、ボスになった
- 糸井
-
文章でも書いたんだけど、エレキを買って練習してるときに、
音楽も勉強もできないやつが、タンタカタンタンって
弾き始めちゃったのを見て、何だったんだ俺はって(笑)。
- 清水
-
俺、負けてんだっていう(笑)。
- 糸井
-
負けてるどころか、登れない山の上で逆立ちしてるよと思った。
基礎からやらなきゃとか、遠くに感じていた夢を、
今日の明日叶えちゃってる人を見ちゃったのは、
今の自分に影響与えてますね。
- 清水
-
習うものじゃないものは、芸能ってあるかもしれない。
なぜかできるって人、多いですもんね。
- 糸井
-
その基礎が必要だっていうのと、
やりゃいいんだよっていうのと、自分ではどう思ってる?
弾き語りモノマネはできないよね、今日の明日じゃ。
- 清水
-
それはやっぱり私が10代の頃にすごい感銘受けたから。
悔しかったんでしょうね、きっと。
「私が矢野顕子になるはずだったのに」みたいな(笑)。
- 糸井
-
その心って大事かもね。何ていうの、不遜な(笑)。
- 清水
-
何という自信なんですかね(笑)。
でも、今でも練習してて、もうちょっと頑張ったら
なれるんじゃないかと思ってる自分もいるの。
- 糸井
-
矢野顕子にあって清水ミチコにないものは何なの?
- 清水
-
全然レベルが違う。
矢野さんは一筆書きでササッと書いてるんだけど、
私はそれを綿密にコピーして頭に入れて、
さも今弾きましたみたいなふりをしてるだけで。
- 糸井
-
思えばそれもさっきの
瀬戸内寂聴さんをやるときと同じともいえるね。
「あなたのやってることはこう見えてますよ」っていう。
そこに尊敬が入ってる場合と、そうでもない場合がある(笑)。
- 清水
-
おいし過ぎる場合がね(笑)
「必ずウケる、この人」っていうの、何なんだろう。
桃井さんのこと、普通にやっててもすごいウケるのよね。
男の人がやる矢沢永吉さんも。不思議ね、あれ。

- 糸井
-
それは、幼稚園に行く子どものいるお母さんが
子どものハンカチに、クマとかウサギとか目印に描くじゃない。
あのパンダだね。パンダはものすごくパンダじゃない(笑)。
永ちゃんって、超パンダなんだと思う。桃井かおりも(笑)。
永ちゃんの面白さって、とんでもないよ、やっぱり。
- 清水
-
永ちゃんにあって糸井さんにないものって、何だと思いますか。
- 糸井
-
うーん‥‥
量的にものすごく多いんだけど、責任感じゃないかな。
- 清水
-
へぇー。それこそ、社長としても。
- 糸井
-
永ちゃんから学んでますよ。
どのくらい本気になれるかとか、遮二無二走れるかとか。
でも、そこだけでいうと、そういう人はいっぱいいるからなあ。
‥‥‥‥
ボスザルとして生まれたサルと、そうでないサルといるんだよ。
- 清水
-
そっちだったんだ(笑)。
- 糸井
-
チンパンジーのドキュメンタリーで、ボス争いがあるんだよ。
何で決めるんだろうって思わない? ボスを。
喧嘩じゃないんだよ。パフォーマンスなのよ。
つまり、殴られたパンチの強さとか関係ないんだよ。
- 清水
-
へー。
- 糸井
-
それを見てからますます、ステージ見てると、
やっぱり永ちゃんのボスザル感は、すごいよね。
「責任」っていうのはそういうことで、
それのちっちゃいやつはみんなが持ってるわけです。
- 清水
-
そうか。
- 糸井
-
だけどさ、俺、3、4年前の武道館の最初ぐらいのときに、
ああ、清水さんもボスになったんだと思ったよ。

- 清水
-
え、本当?
- 糸井
-
立候補しないのにボスになった人って一番いいなと思ったよ。
利害関係なく集まってんじゃん。
清水プロダクションに入ったわけでもなくて。
その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
- 清水
-
目指したらね、きっと大変だと思う。
運もよかった。
- 糸井
-
で、世話をしてきた覚えもないじゃないですか、人の。
- 清水
-
うん。あんまりだな(笑)。
若い頃は、永六輔さんみたいに、新人のライブを見に行って、
背中を押してあげるおばさんになれたらいいなと思ったけど、
自分の今日で一杯一杯なのよね。
そういう人は大したものなんだなと思った、この年になったら。
- 糸井
-
つまり、してない。
- 清水
-
してなーい。これからもしなーい(笑)。
- 糸井
-
(笑)。でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
それから、あんまり、ツッパってないよね(笑)。
清水ミチコがゲストで、結局二言ぐらいしかしゃべんなくても、
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど、全然(笑)。
そのときには、まあ、ピアノも弾くしみたいな(笑)。
だから、全部アリっていうのは、ちょっといいですよね。
- 清水
-
初めて客観的に自分を見たような気がした。