- 糸井
- 大学の勉強したの? 卒業できるぐらい。
- 清水
- うん。家政科だから、うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
- へっちゃらってことはないですけど。でも、料理は好きだし、面白かった。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、親に心配かけるようなことはしてない。でも、私の家系のひいおじいちゃんがエイザブロウって名前なんだけど、「嘘つきエイザ」って呼ばれてて(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
-
普通は自分の名誉やお金のために嘘をつくけど、本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
お坊さんに「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか言って。飛んで行く姿を見て、1人ですっごい笑ってんだって(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘だね(笑)。
- 清水
- そう。それを何回も繰り返して1人で笑ってたって人が私の祖先なの(笑)。
- 糸井
- おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、清水さんはちゃんといい子だったんですか。
- 清水
-
私は、いい子でもなく悪い子でもなく、パッとしないような子だったけど。
糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とかを高校のときに読んだり、『オールナイトニッポン』聞いたりして、だんだんお笑いの世界を‥‥
- 糸井
- パッとしていったわけ?
- 清水
- 自分の中ではね。ほかの人はみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、ラジオで投稿読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
- だけど、ラジオで選ばれたり、「ビックリハウス」載ったりするのって、実はけっこう難しいことだよね。
- 清水
- そうかな。
- 糸井
- うん。今、やれよと言われて、載る自信、俺ないよ。
- 清水
- 本当ですか。
- 糸井
- うん。それができちゃったわけでしょう?
- 清水
- そんなことばっかり考えてたからね、青春時代ずっと(笑)。
- 糸井
- ぼくはね、お笑いが絡むようなものはできなくて。清水さんは、考えればできるの?
- 清水
- 今はもう無理かもしれないですね。試されるときがないから。もう思いついたらライブのネタにしてるっていうかね。
- 糸井
- 松本人志さんが、共通一次みたいな形式の面白いことのテストを作ったことがあったんですよね。ぼくもやったんだけど、ちっとも面白くないの、自分が。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- できないんだよ、俺(笑)。
- 清水
- 普通できないんじゃない? やっぱり(笑)。
- 糸井
- 『IPPON』みたいな番組があるじゃないですか。あれどうですか、清水さん。もしゲストで呼ばれたら。
- 清水
- いや、全然無理、全然無理です。
- 糸井
- じゃ、清水さんのあの面白がらせるのは、何あれ。
- 清水
- 私は、耳で聞いたことを自分なりに「こういうふうに感じました」って提出すると、たとえそれが違っててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
- 清水さんに会うにあたって、何か一つぐらい自分で、「これを思ったんだよね」ってことを言いたくて。発見したのが、「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだね」ってことだったの。
- 清水
- あ、本当? 当たってます(笑)。
- 糸井
- ねえ。で、なぜそういうことを考えたかというと、批評してないんだよ、全然。
- 清水
- あ、うれしい。
- 糸井
- つまり、いいだの悪いだの何も言ってなくて。真似する対象の人が、「私にはこう感じられちゃってますよ」っていう(笑)。
- 清水
- (笑)。そうかも、さすが。
- 糸井
- ねえ。通信販売をする瀬戸内寂聴さんとかあるじゃないですか。
- 清水
- はい(笑)。
- 糸井
- あのとおりしてないんだけど、「私にはそう見えてますよ」っていうだけでしょう?いいとか悪いとか一つも言ってないんですよ(笑)。
- 清水
- (笑)。うん。あんまりいい悪い関係ないかもね。
- 糸井
- 本人は悪気があるとかないとか全然言うつもりはないんですけど、こう見えてるんですよね(笑)。そうするとお客が、「そう見えてる、そう見えてる」って(笑)。
- 清水
- 「あるある」って(笑)。共感の人が多いでしょうね、お客様。
- 糸井
- 共感、共感ですよね。ツッコみ過ぎないし、立ち直れないようなことしないじゃないですか(笑)。
- 清水
- そうかも(笑)。
- 糸井
- モノマネだから、そういうふうに表現できるわけで、文章で書いてもつまんないよね。
- 清水
- うん、そうだと思います。
- 糸井
- でも、文章は文章で面白いんですよ。ぼく、清水さんの文章を「みんな、このくらい書けるようになりなさい」って言った覚えありますよ。
- 清水
- 本当?
- 糸井
- うん。言っては悪いですけど、文章の修業をしたつもりは全然ないわけだから。「修業したつもりのない人がこんな文章を書けるっていうことに、もっとおののいてください」って社内で言ったことありますよ。
- 清水
- わあ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
- 清水さんは、文章は何だと思ってんの?
- 清水
- ブログなんかはやっぱり、1日寝る前にこうだったってことを書くとスッキリして寝られるので、トイレみたいな感じですかね。排泄(笑)。
- 糸井
- ほう。でも、何も思わないで生きてたら、書く段になって書けないじゃないですか。だから、思ってる分量は多いよね。
- 清水
- うん、きっと多いと思う。なんでかっていうと、高校のときにもう自分の面白ノートというのを作っていて。それに真面目なエッセイ欄があって、「今回も書きましたけど、どう? 読む?」って回してたんですよね。それでその人が笑ってると、もうすごい幸せみたいな。
- 糸井
- ああ。話聞いてると、生い立ちというか成り立ちが、さくらももこさんに似てるんですよね。
- 清水
- ああ、そう。
- 糸井
- 思ってることを別に人に言うわけじゃないけど、あいつがこうしたな、こうしたな、おかしいことしてるなあって見てて(笑)。
- 清水
- あとで、ちまちまと(笑)。
- 糸井
- 頭とんがらせたりなんかしながら描いて。
- 清水
- で、本人幸せっていうね。
- 糸井
- 今の清水さんの話も、周りの人が面白がるみたいなのが原点。
- 清水
- そうですね、うん。
(つづきます)