- 清水
- 永ちゃんにあって糸井さんにないものっていうと何だと思いますか。
- 糸井
- 永ちゃんにあってはねえ、うーん‥‥責任感じゃないかな。
- 清水
- へぇー。それこそ、社長としても。
- 糸井
- ぼくは、永ちゃんから学んでますよ(笑)。生まれつきっていうか、ボスザルとして生まれたサルと、そうでもないサルといるんだよ。
- 清水
- そうか。永ちゃん、そっちだったんだ(笑)。
- 糸井
- チンパンジーの戦争のドキュメンタリーで、ボス争いを見たことがあるんだよ。クーデター起こそうとして失敗したやつが追い払われて、隣の山からずーっと様子を見てて。
- 清水
- かわいそう!
- 糸井
- 何で決めるんだろうって思わない? そのボスっていうのを。
- 清水
- うんうんうん。
- 糸井
- そしたら、喧嘩じゃないんだよ。
- 清水
- 喧嘩じゃないの?喧嘩以外に何かあるの?
- 糸井
- 教えましょう。パフォーマンスなのよ。
- 清水
- ウソ(笑)。
- 糸井
-
まず、「俺は、ボス、いずれ挑戦しますからね」みたいな目で見るとこから始まって。で、ボスが「おまえ!」なんてやると、すごすご逃げたりするわけ、クーデター前は。
あるとき、仲間を連れて「いつまでもボスと呼んでると思ったら大間違いですよ」みたいにグッと来て、ボスがかかっていくと追っかけっこになるんだよ。で、例えば川のそばに行くと、石とか持って、川に向かってバッシャバシャ投げるんだ。
- 清水
- 関係ないのに。
- 糸井
- 何の関係もない(笑)。で、ボスのほうも、バシャバシャ投げるんだ(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- ひっくり返ったり、水しぶきあげたり、もう自分が嵐になるわけ。結局のところ、それで負けたほうが引き下がるの。つまり、殴られたパンチの強さとか関係ないんだよ。
- 清水
- やろうと思ったらこれだけできるよ、っていう。
- 糸井
- パフォーマンス(笑)。それを見てからますます、永ちゃんのステージとか見てると、これはもうできない。やっぱり永ちゃんのそのボスザル感は、すごいよね。
- 清水
- ユーミンさんが1回、どうして矢沢永吉さんは自分の毎日やるパフォーマンスに飽きないのか知りたいって言ってたけど、どうなさってると思います?
- 糸井
- 手を抜けないんだよ、多分。手を抜いたら矢沢じゃなくなるって。だから、矢沢は矢沢を全うするんですよ。
- 清水
- そうか。それはみんなのためでもあるし。
- 糸井
- うん。さっき「責任」って言ったのはそういうようなことで、それのちっちゃいやつはみんなが持ってるわけです。例えば清水さんの最初の武道館って、大勢が集まったよね。
- 清水
- あ、そうです、そうです。
- 糸井
- あのときに、「私がぐずぐずしてらんない」っていうのあったじゃないですか。なくはないですよね?
- 清水
- そうそうそう(笑)。
- 糸井
- やっぱり、ここを私がちゃんとしないといけないみたいなのは、ちょっとずつはみんな持ってるんですよね。
- 清水
- そういえばその武道館のリハーサルスタジオに行って、うちのスタッフがエレベーターに乗ったら、「何階?」って言ってくれたのが永ちゃんで、めっちゃビックリしたって言ってた(笑)。やっぱりいい人なんですね。
- 糸井
- そういう方なんです。矢沢永吉としてできてる、みんなが思ってるものを壊すのは自分であってはいけないって気持ちがあるっていうか。
- 清水
- そうか。
- 糸井
- ぼくは永ちゃんに対しては、ずっと絶対にぼくは下につこうっていう、もう決意のように持ってますね。
- 清水
- 下のほうが気持ちいいんでしょうね。
- 糸井
- すごい楽しいの、ボスザルを見るのが。そういうふうに思わせてくれる人って、そんなにいるものじゃないんでね。親しくすることもできるし、見上げることもできるし、っていうのはありがたいことだよね。
- 糸井
- だけどさ、俺、3年か4年前に、武道館の最初やったぐらいのときに、「ああ、清水さんもボスになったんだ」と思ったよ。
- 清水
- え、本当?
- 糸井
- うん。つまり、立候補しないのにボスになった人って一番いいなと思ったよ。
- 清水
- 武道館? うーん。
- 糸井
- 利害関係なく集まってるじゃない。
- 清水
- ああ、そう、そう。よくわかりますね(笑)。
- 糸井
- 別に清水プロダクションに入ったわけでもないのに集まって。「こうやったほうがいいかな」と言ったら、「そうじゃない?」って言うやつがいたとかさ。
- 清水
- うん、えらいもんでそうですね(笑)。
- 糸井
- その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
- 清水
- 目指したらね、きっと大変だと思う。運もよかった。
(つづきます)