- 糸井
- 弾き語りモノマネはさ、今日の明日じゃできないよね。
- 清水
-
ああ、そうかもね。
それはやっぱり私が10代の頃、
悔しかったんでしょうね、きっと。
「私が矢野顕子になるはずだったのに」みたいな(笑)。
- 糸井
- その心って大事かもね。その、何ていうの、不遜な(笑)。
- 清水
- 何という自信なんですかね(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
-
でも、今も、今でも、練習してて、
もうちょっと頑張ったら
なれるんじゃないかと思ってる自分がいるの。
- 糸井
- ああ。
- 清水
-
基本ができてないだけで、もう少しやればとか、
そういう変な希望みたいのがあるんですよね。
- 糸井
-
同じ道で、振り向いたら後ろに清水がいた、
ぐらいのとこにいるわけだ。
- 清水
-
矢野さん?
いない、いない、全然。
- 糸井
-
でも、遠くに見えるっていうぐらいには
いるんじゃない?(笑)
- 清水
- いないと思う、多分。
- 糸井
-
だって、ピアノ2台くっつけて、
ふたりでやってたじゃないですか。
- 清水
-
あれも、
矢野さんは一筆書きでササッと書いてるんだけど、
私はそれをコピーしてコピーして、
綿密に頭の中入れて、さも今弾きました、
みたいなふりをしてるだけ。
それはやっぱりすぐわかりますよ。全然違う。
- 糸井
-
思えば瀬戸内寂聴さんをやるときと同じともいえるね。
「あなたのやってることはこう見えてますよ」
っていうことだよね。
で、そこには尊敬が入ってる場合と、
そうでもない場合がある(笑)。
- 清水
-
おいし過ぎる場合がね(笑)
「必ずウケる、この人」っていうの、何なんだろう。
別に桃井さんのこと強調してないんだけど、
普通にやっててもすごいウケるのよね。
あと男の人がやる矢沢永吉さん。
憧れがどんなに強くても、
そうじゃない人でも、なんかおかしい。
- 糸井
-
それは、お母さんがさ、
幼稚園に行く子供のハンカチに、
クマとかウサギとかを目印に描くじゃない。
あの、パンダだね。
- 清水
- 何それ(笑)。
- 糸井
-
ネコとクマって描いても
あんまり違いがわかんないじゃない。
でも、パンダは、超パンダじゃない(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
-
で、永ちゃんって、超パンダなんだと思う。
桃井かおりも(笑)。
- 清水
- 桃井さんも超パンダなんだ(笑)。人が集まるしね。
- 糸井
-
だってさ、どう言ったらいいんだ。
永ちゃんの面白さって、とんでもないよ、やっぱり。
- 清水
-
面白さって二つあるけど、どっち?
笑うほうと深みのほうと。
- 糸井
- 結局それね、一つのものだよ。
- 清水
- あ、そう?

- 糸井
-
うん。つまりね、永ちゃんは二じゃないんだよ、大もとは。
ひょうきんな子だったらしいんだ。
で、二の線もレパートリーに入ってるんだよ。
だから、できるんです。
- 清水
- そうか。
- 糸井
-
いや、今年またね、永ちゃんのこと、
もっとものすごく好きになったんだけど。
暮れに急に電話があって。
昔うちで作った『Say Hello!』っていう
犬が生まれた本があって。
それを今見たら
「糸井、面白いことしてるねえ」って。
- 清水
- (笑)。すごいうれしいですね。
- 糸井
-
「いいよ。そういうところがいいよ」って。
14、5年前の本を今見て、電話したくなったって(笑)。

- 清水
- へぇー、少年っぽいですね。
- 糸井
-
だから、ボスの役も、ときにはしもべや、劣等生でも、
全部の役をしてるんです。
- 清水
-
その永ちゃんにあって、
糸井さんにないものって何だと思いますか。
- 糸井
-
永ちゃんにあってはねえ、うーん‥‥
あ、ボスザルとして生まれたサルと、
そうでもないサルといるんだよ。
チンパンジーがボス争いをするドキュメンタリーを見てさ。
そのボスって、何で決めるんだろうって思わない?
- 清水
- 喧嘩じゃないの?
- 糸井
-
喧嘩じゃないんだよー。
教えましょう。パフォーマンスなのよ。
- 清水
- ウソ(笑)。
- 糸井
-
まず「ボス、俺はいずれ挑戦しますからね」
みたいな目で見たりするところから始まって。
「おまえの最近のその目つきは目に余る!」
みたいなことやると、
すごすごっと逃げたりを繰り返しするわけ。

で、あるとき「ちょっと俺の仲間もいるんすよね」
みたいに連れてきて、
「いつまでもボスと呼んでると思ったら大間違いですよ」
「なあ、ネエちゃん」みたいにグッとこうやると。
で、ボスが「おい、目に物見せてやる!」って
バーンとかかっていくと、1回ふにゃふにゃっとなって、
でも、追いっかけっこになるんだよ。
そして、例えば川のそばに行くと、
石を川に向かって、バッシャバシャ投げるんだ。
で、ボスのほうも、
ガーッ、バシャバシャって投げるんだ(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
-
ひっくり返ったり、水しぶきあげたり、
自分が嵐になるわけ。
それで、負けたほうがすごすごと引き下がるの。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
殴られたパンチの強さとか関係ないんだよ。
パフォーマンス(笑)。
永ちゃんのステージとか見てるとね、
これは、もうできない。
やっぱり永ちゃんのボスザル感はすごい。

<つづきます!>
