- 清水
-
そういえばこのあいだ武道館、
森山良子さんと一緒にやったんですけど、
リハーサルスタジオに行って
うちのスタッフがエレベーターに乗ったら、
「何階?」って言ってくれたのが永ちゃんで、
めっちゃビックリしたって言ってた(笑)。
3階だけど言えないみたいな、押させられない(笑)。
やっぱりいい人なんですね。
そういう方なんですね。
- 糸井
-
そういう方なんです。
みんなが思ってる矢沢永吉を壊すのは
自分であってはいけないって気持ちがあるっていうか。
- 清水
- そうか。
- 糸井
-
分裂してるんですよ、ある意味ではね。
みんなが思ってる矢沢永吉像と
個人の自分というのは、やっぱり離れてると思うよ。
だから、ぼくは永ちゃんに対して、
ずっと下につこうっていうの、決意のように持ってますね。
- 清水
- 下のほうが気持ちいいんでしょうね。
- 糸井
-
もうすごい楽しいの、そのボスザルを見るのが。
そういうふうに思わせてくれる人って、
やっぱりそんなにいるもんじゃないんでね。
- 清水
-
普通にしゃべることはできます?
お電話でも対面しても。
- 糸井
- それは普通。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- 清水さんだってアッコちゃんと普通にやれるじゃないですか。
- 清水
-
いや、そうでもないです。
嫌われたくないっていうのが強過ぎて、
よく噛む、本当に(笑)。
- 糸井
- 本当に?(笑)
- 清水
-
普段もっと面白いんですけどねえって思いながら、
こう自分を叩いてみるんだけど、何も出てこない(笑)。

- 糸井
- どうして声が似るのっていうのは聞かれたことある?
- 清水
- ああ、ない。どうしてだろう(笑)。
- 糸井
-
おかしいよね。声が似るってさ。
つまり、しゃべりの癖が似るはできるよ。
でも、声の質まで。
だってユーミンと矢野顕子、似てないじゃん。
- 清水
- うん、似てないですね。全然違う(笑)。
- 糸井
- どうして私が挟まると(笑)。
- 清水
-
やっぱりすごく好きだと‥‥
自分ではわかんないな。どうしてなんだろう。
- 糸井
- どうしてなんだろうね。
- 清水
-
モノマネって、私とか松村さんとか、
自分を表現したいっていうのがない人が得意かもね(笑)。
「私の歌を聞いて」って気持ちには全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちにはすごくなる。
- 糸井
- それってなんだろうって、改めて自分で考えたことはない?
- 清水
-
私がモノマネしてる人って
だいたいみんな10代のときに影響された人。
- 糸井
-
例えば絵描きさんで、
水の中に氷が浮かんでるスケッチを、
描ける人いるじゃないですか。
それは見えてるから描けるわけですよね。
- 清水
- うん。
- 糸井
-
でも、ぼくらには浮かんでる氷が見えないんですよ。
解像度が低い。
- 清水
- 確かにそう。
- 糸井
-
それはさ、iPhoneのカメラが同じだなと思ってて。
レンズはこんな小さいんです。普通のカメラって、
レンズの大きさが大事だっていうんだけど、
iPhoneは小さくて、頭がいいんです。

- 清水
- 解像するんだもんね。
- 糸井
-
うん。で、こんなよく映るわけよ。
つまり、10代のとき夢中になった人はできるってことは、
そのときは受け止める側の脳細胞がバッチバッチに‥‥
- 清水
-
そうそうそう。感受性がすごい。
歌で泣いたりとか、一緒に喜んだりとかしてたのが、
もうやっぱりこの年になると、出ないんですよね。
- 糸井
- 脳がついてってない(笑)。
- 清水
- 多分、うん、解像できない。

- 糸井
- 年とってからでも好きになった人っていうの、ある?
- 清水
-
瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか(笑)。
面白がりましょうよっていう気持ちはやっぱりあるから。
- 糸井
-
あのへんは、普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
だから、商売にするにはちょっと。
ユーミンと山根会長を比べると、完成度が(笑)。
- 清水
- 全然違う(笑)。
- 糸井
- でも、ちょっと混ぜるっていうぐらいでいいから(笑)
- 清水
- もう余生はそうやって暮らす(笑)。
- 糸井
-
でも、ベースになるユーミンは
今でも聞きたい人がいるわけだから。
それで武道館なんだから。
- 清水
-
私の好きな桃井さんとか、
矢野さんとかユーミンさんの世代が
まずキャラクターが強いっていうのもありますよね。
みんな知ってるし。
- 糸井
-
「またユーミンやって!」って言いながら
お客さんは来るわけだもんね、要するにね。
- 清水
-
そうですね。
私の心を込めた歌はいいから、ユーミンやってって(笑)。
- 糸井
-
心を込めた歌のほうに、行き過ぎないで留まってます(笑)。
歌ってやっぱりリスクが高くてさ、人を二にするよね。
清水ミチコはちゃんと距離を保てる。
- 清水
- ああ。

- 糸井
-
大昔にさ、ぼくが筋トレを
どんどん前のめりにやってる時があって。
そのときに「ほら、ほら」って言って胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」って。
- 清水
- ひどいねえ、言いそう(笑)。
- 糸井
- そのひと言が、なんて当たってるんだろうって(笑)。
- 清水
-
私はジムでトレーニングしてるけどね。
糸井さん、なんでやめたのかなと思ってた。
- 糸井
- 俺はやっぱり、社長業になったからだよ。
- 清水
-
私、今日、最終的に聞きたいと思ってたのは、
糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。
- 糸井
- ん? 死にたくない?
<まだまだつづきます>
