- 糸井
- 大昔にさ、ぼくが筋トレに通ってて、
清水さんに何かの映画の試写会みたいなときに
「ちょっと来ない?」程度のことを言ったんだけど‥‥
- 清水
- ああ、あれ、どうなったの?
- 糸井
- いや、俺はやってないよ。
- 清水
- もうやめた?
- 糸井
- やめてるというよりは、会員としてはまだいるよ。
いつ行ってもいいんだよ。
サボってるんだよ、ずっと(笑)。
- 清水
- あ、そう(笑)。
- 糸井
- で、そのときに、おもしろかったから
どんどん前のめりにやっていって、その話をして、
「ほら、ほら」って言って胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」って。
- 清水
- ひどいねえ、言いそう(笑)。
- 糸井
- で、その一言が、
「なんて当たってるんだろう!」って(笑)。
- 清水
- (笑)
私、その頃ね、ちょうど内山(信二)君に、
「これ食べたら太るかな」つったら、
「清水さんが太って困る人、どこにいるんですか」
って言われて。
しまった、自分だけがこう美に関して‥‥(笑)
- 乗組員
- 同じことを言われた(笑)。
- 清水
- 同じこと言われた(笑)。
その前後だったかもしれない。
- 糸井
- ああ。そのへんって、いい、いいね。
俺はね、それは感動したんですよ、実は。
- 乗組員
- そう。何度も言ってますよね、それは。
- 糸井
- どうしてみんな気づいてないんだ、そのことにって(笑)。
- 清水
- (笑)
- 乗組員
- あれを親しい人にもちゃんと言えるというか、
ある種のプロデュースでもあるなと思って。
- 糸井
- うん、そうだよね。
- 清水
- 本当?(笑)
- 糸井
- その後、だって自分でトレーニングしてるもんね。
- 清水
- そう、ジムでね。
- 糸井
- それ何か理由があって始めたんですか。
「誰もそんなこと望んでない」のに(笑)。
- 清水
- (笑)
私はでも、単なる体力維持。
- 糸井
- 持ちをよくするため。
- 清水
- 持ちをよくするため。
あと、意外とストレス発散になるってことがよくわかった。
- 糸井
- それは効果があるんですか、やっぱり。
- 清水
- うん、そう思った。
だって帰り道の人はみんな、
スッキリしたーって顔してます、やっぱ。
- 糸井
- ああ。
清水さんとか、この先どうするみたいなこと考えるの?
- 清水
- この先どうするは考えないけど、
占いの人のとこ行ったときがあって(笑)。
- 糸井
- 自分で考えたくないんだ(笑)。
- 清水
- 人に頼った(笑)。
そしたら、なんか車椅子に乗って演芸やってるみたいで。
- 糸井
- ああ。
でも、それを拍手で迎える人がいる限りは、
それはOKですよね。
- 清水
- そうかもね、出るかもね。
- 糸井
- だから、関係なんだと思うよ。
自分としては嫌だって言っても、
そんなに喜んでくれるんだったら、
車椅子の両側に龍をつけてね。
- 清水
- 凄みが、すごみが(笑)。
- 糸井
- 雷様みたく、雷鳴と共に登場。
- 清水
- 笑えないです(笑)。
- 糸井
- (笑)
「さあ、笑え!」、ドワワワァー!
- 清水
- 「ここだー」(笑)。
ドラが鳴るっていう、すごい(笑)。
- 糸井
- そう、そういうのもありだし。
あ、じゃ、考えたくないのはあるんだね。
- 清水
- うん、そうですね。
でも、私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
- ああ。
それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
- 清水
- うん、そうね。
- 糸井
- いや、思ったのよ。
俺、孫ができたじゃん。
で、見てるともうね、うらやましいの、やっぱり。
- 清水
- あ、楽観性?
- 糸井
- そう。
- 清水
- 子どもって、とくにそうなんですよね。
- 糸井
- あなたは母親やってたから知ってると思うけど、
ひとりでは生きていけないのに、一切心配しないで、
フャーッとか言ってるっていう(笑)。
- 清水
- (笑)
そうね。それで、自分でさも大きくなりましたって
顔するからね、みんな。
- 糸井
- うん。
だから、それないとやっぱり生き物ってダメでさ。
- 清水
- そうね。
- 糸井
- だから、ものすごく考える子どもがいたりしてね、
「ぼくがこの小学校に入ったとするじゃない?」とか。
- 清水
- 心配性(笑)。
- 糸井
- 「将来、今のところ勤めたいのは」とか言ったら、
不幸になるぞって思わない?(笑)
- 清水
- うん。
今どきの子、えらい頭いいからね、
ちょっと心配なとこあるよね。
- 糸井
- それよりは、なんとかなるような顔してニッコニコしてたら
「おまえ、結局、俺の話聞いてないだろ」つったら、
「ごめん」みたいな(笑)。
- 清水
- (笑)
そうね、南さんみたいなね。
- 糸井
- そう。
それのほうがやっぱり生きるよね。
- 清水
- うん。
うまくいく人は大体そういう人多いからね。
- 糸井
- まあ、清水さんのサクセスストーリーを
順番に語っていくような企画には
ならなかったけれども(笑)。
- 清水
- やり直して、これ(笑)。
- 糸井
- (笑)
あ、別にいい話で終わらせるっていう
テーマではないんだけど、
清水さんも、いい気にならないモードを
保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
- 清水
- いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
- 糸井
- ああ‥‥ああ。役割としてさ、
多少偉ぶってくれないと困るんですよねって場面に
呼ばれることはないですか。
- 清水
- あ、審査員とかね? うんうん。
- 糸井
- それとか、新人が集まってる場所とか。
- 清水
- ああ、そうですね、うん、あるある。
- 糸井
- そのときは、役目として何かこう、しますよね、当然ね。
- 清水
- うん、そうですね。
やっぱりちょっと偉そうなほうが、
その場合いいんですよね、おさまりが。
- 糸井
- おさまり、おさまり。
で、それを経験していくと、
そういう人にどんどんなっていっちゃうじゃないですか、
けっこう大勢の方々が(笑)。
- 清水
- そう。
これ本当、キャリアあると、
こんな面倒くさいことあるかねっていう
思いになりますよね。
糸井さんもそう、やっぱり?
- 糸井
- うん。
だって俺、大体どこ行っても今、年上になってるしさ。
- 清水
- ああ、そうかそうか。
- 糸井
- で、自分はそのいい気に‥‥多分なってないと思うんです。
なってないのは、なんないようにしようとしてるから
だと思ったんですよ。
で、清水さんとかもなってないのは、なんでかなって。
なんない理由っていうものの一つはさ、
やっぱり、失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
- ああ、そうかもね、うん。
- 糸井
- そうなっちゃったら
これできない、あれできないが、あるよね。
守るものの大きさとかもあるから、
やんなきゃいけないこともあるのかもしれないけど。
誰でもいい気にはなれるじゃない?
- 清水
- うんうんうん。
- 糸井
- それを何回も機会があったろうに、
逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
- ああ、そうね。
でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
- 糸井
- ああ、なるほど。
こういうとこなんだよ、この人のおもしろさは。
なってたんだ。
(写真を出すふりをして)
「証拠写真はここにあります」。
- 清水
- しまったー、自白した(笑)。
- 糸井
- 「あ、なってる!」(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- でも、奪われるもののほうが多いよっていうのは、
ちょっとなんかね、気づくね。
- 清水
- うん。
- 糸井
- 大損ですよね。
- 清水
- そうね、うん。
あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
- 糸井
- ああ、そうかそうか。
あ、「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
- 清水
- そうそう。それもあると思う。
- 糸井
- そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうの、
実はプロデュースの原点だね。
- 清水
- あ、そうかね、うん。
- 糸井
- モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
- 清水
- やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
- 「やめてよ、軽薄」までで(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- いや、おもしろかった。
- 清水
- おもしろかった。あっという間。
- 糸井
- こういう会話は、こんな機会がないと
やっぱりありえないんだよなあ。
(おわります)